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「盾の勇者の成り上がり」田村淳一郎プロデューサーインタビュー【前編】「大事なのはいい話をちゃんとしたクオリティでアニメ化すること」

2018年1月9日より放送がスタートするTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。

第1回は、本作のプロデューサーを務めるKADOKAWA・田村淳一郎さんが前後編にわたって登場。前編では、アニメ化の経緯や作品コンセプト、海外展開などについて語っていただきました。

――映像化のきっかけについて教えていただけますでしょうか。

田村 企画が動き出したのは4年前ぐらいだったと思います。当時から原作小説の人気は日本国内だけでなく海外でも高くて、アメリカのAmazonでは「ソードアート・オンライン」と並んで売り上げランキングの上位にずっと入っていたんです。物語として国内はもちろん世界的にも受け入れられる「盾の勇者の成り上がり」なら、いろんな国に向けて展開できるのではないかということで、この作品を映像化しようとなったのが企画のスタートでした。

――その時点で制作会社も決まっていたんですか?

田村 そうです。キネマシトラスさんにお願いしようと思ったのは、比較的新しい会社ではあるけれど高いクオリティが出せるというところと、キネマシトラスさんにも日本だけではなく海外でも刺さるものを作りたいという考えがあったからです。本作のシナリオ作業をやっている間に「メイドインアビス」というヒット作が生まれましたが、狙いは一緒だったのかもしれないですね。

――本作は、すでに2クールの放送であることが発表されています。

田村 原作1冊の分量も多く、シリーズとしても長く続いているので、1クールで終わらせようとすると中途半端なところで終わってしまうおそれがあったんです。だったら、これは2クールでやるしかないと。それは最初の段階で決まっていました。それから、本作をアニメ化する上で大切なのは、いかにストレートにアニメ化するかだと思ったんです。原作は小説としてのクオリティが高く、コミカライズも素晴らしい出来です。結局、大事なのはもともとのいい話をちゃんとしたクオリティでアニメ化することだと。そのためにも最低2クールが前提でした。

――田村さんご自身は本作のどのようなところに魅力を感じていますか?

田村 逆境を跳ね返していく尚文のキャラクター性と彼に降りかかってくる出来事が、ワクワクする人間ドラマを生み出しているところですね。ただ主人公が強いだけではない、人間ドラマを感じさせる物語だと思いました。日本、海外に限らず幅広い層に受け入れられているのも、それが大きいんでしょうね。登場するキャラクターも魅力的ですが、何よりドラマ性が強い。若い人だけではなく、大人でも楽しめる作品だと思います。

――本作は仲間の裏切りや主人公の転落など、ストレスフルなシーンもたくさんあります。現在のアニメ制作のひとつの方向性として、「あまり視聴者にストレスをかけない」という作品づくりもあるかと思いますが、この辺はどのようにコントロールされているのでしょうか?

田村 それが尚文のキャラクター性やドラマにも繋がっていくので、描かないということはありません。ですが、見せ方は工夫するようにしています。たとえば、第1話を1時間スペシャルにした理由がまさにそれですね。30分で終わってしまうと、ただ尚文がひどい目に遭うだけで終わってしまうおそれがありました。けっしてそれだけではないことをわかってもらうために、1時間という尺でそれ以外の要素も見せていこうとなったんです。

――尚文については、どのような印象を持っていますか?

田村 ストレスを力に変えられる強さを持った主人公ですね。PV第1弾でもありましたが、最初は異世界転生して浮かれまくっているんですが、そこから転落してしまう。でも、ちゃんと立ち直ろうとするんです。しかも勢いだけではなく、いろいろ状況を見渡しながら。

それは彼が高校生ではなく、大学生なのもポイントなんでしょうね。完全な大人とは言い切れないけれど、子どものようにあっちへ行ったりこっちへ行ったりふわふわしているわけではない。実際、裏切りにあり、そこから状況を打破するって、ある程度成熟していないとできないと思うんです。そういう意味でも、大学生という設定が物語とうまく噛み合っているなと感じました。

――尚文は、アニメでどのように描かれていくのでしょうか?

田村 原作小説に描かれている部分を大切にしながら、どの国の方が見ても理解できるようなキャラクターにしたいと考えていました。尚文って、エキセントリックなキャラクターではないんです。特別、派手な力を持っているわけでも、ほかの勇者より強いわけでもない。むしろ、彼の魅力って物理的な強さよりも、逆境でも心が折れない精神的な強さにあると思うんです。それが原作小説が受け入れられた部分だと思いますし、アニメでも丁寧に描いています。

――尚文は「やるときはとことんやる」という遠慮のなさも魅力だと思いますが、その部分も期待できそうですか?

田村 もちろんです。敵を追い詰めるときは、まったく遠慮なしです(笑)。悪いヤツには全力で立ち向かって、優しさは口に出さない。「背中で語る男」のようなカッコよさがあります。重い展開もありますが、どこかスカッとできるような、見ていて楽しかったと思えるポイントもたくさんあるので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。

――そして、最初のお話にもありましたが、本作はかなり海外を意識して制作されていますよね。放送直前の現在の反響などはいかがでしょうか?

田村 Youtubeで公開しているPV第1弾と第2弾のコメントを見ていただくとわかりますが、日本だけでなく海外の方の反応も多いんですよ。四聖勇者のキャスト陣の石川界人さん、松岡禎丞さん、高橋信さん、山谷祥生さんが登場した生放送特番も、生放送時に海外のファンにもたくさん視聴してくださいました。現在も公開していますが、海外の方の応援コメントから、期待値の高さがひしひしと伝わってきます。ぜひ今からでも見てコメントしていただきたいですね。

――海外の方が考える本作の魅力については、どうとらえていますか?

田村 “異世界転生作品”には、すぐ強くなったり、すぐちやほやされたりする作品がありますが、本作はその逆をいく展開なんです。尚文が追い詰められ、国中から迫害されるという、ダークファンタジーのような雰囲気があるので、それが人気の要因のひとつなのかなと考えています。

――日本と同様に“異世界転生作品”の需要は高いのでしょうか。

田村 とても人気がありますね。アメリカでもそうですし、中国でもそうです。異世界の描き方は作品によってさまざまですが、舞台がどの国なのか限定されないのが共通点としてあるので、そこが入りやすいのではないかと分析しています。

――本作は日本と海外で同時に配信され、しかも吹き替え版も同時配信だとうかがいました。

田村 吹き替えについても最初から同時配信を考えていました。ただ、現状では英語版のみで、その他の言語については未定です。同時配信は難しいですが、ほかの言語の吹き替えも検討しています。

――吹き替えの同時配信は状況として増えてきているのでしょうか?

田村 有名なところだと『スペース☆ダンディ』があり、現在も増えてきているとは思いますが、まだまだ少ない状況ですね。とにかく制作が大変なんですよ。普通よりもずっと早く映像を納品しないといけないわけですから。時間の問題が大きいんです。今回は最初から吹き替え版の同時配信を想定して早めに制作していたので、実現できましたが。

――となると、現在の制作状況もスムーズに進んでいると。

田村 そうですね。ほかの作品よりもだいぶ早くつくっていますし、映像的にもキネマシトラスさんのこだわりがふんだんに入っていますので、皆さんの期待に沿えるフィルムになっていると思います。PVを見ていただければわかりますが、あれはけっしてオープニング用の映像を使っているのではなく、本編の映像なんです。作画レベルも高水準を維持できているのではないかなと思います。

【取材・文:岩倉大輔】



【PV第1弾】


【PV第2弾】

■TVアニメ「盾の勇者の成り上がり」
第1話特別先行配信:ひかりTV 12月27日(木) 23:30~
      ニコニコ生放送 12月28日(金) 25:00~ 
      AbemaTV 12月29日(土) 23:30~
放送:AT-X 1月9日より毎週水曜22:00~(リピート放送有り)
   TOKYO MX 1月9日より毎週水曜25:05~
   テレビ愛知 1月9日より毎週水曜26:35~(※初回放送は27:05~)
   KBS京都 1月9日より毎週水曜25:05~
   サンテレビ 1月9日より毎週水曜25:30~
   TVQ九州放送 1月9日より毎週水曜26:35~(※初回放送は27:05~)
   BS-11  1月9日より毎週水曜25:30~
配信:ひかりTVにて1月9日より毎週水曜23:30~ 独占先行配信 その他随時配信予定


リンク:アニメ「盾の勇者の成り上がり」公式サイト
    公式Twitter・@shieldheroanime
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