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2018年1月9日より放送がスタートするTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。
第1回は、本作のプロデューサーを務めるKADOKAWA・田村淳一郎さんが前後編にわたって登場。後編では、オーディションの裏話や制作の裏側についてたっぷり語っていただきました。
――前編では主人公・尚文についてうかがいましたが、ヒロインのラフタリアについてはいかがでしょうか?
田村 ラフタリアはある出来事によって住んでいた村が壊滅し、その後、奴隷商に売られてしまうという、ずっとつらい目に遭ってきた女の子です。誰も信じられない、人間が怖いという彼女が、尚文と出会い、どうトラウマを克服していくのか。それが彼女のストーリーの見せ場になっています。本作はキャラクターの精神性を重要視しているので、彼女が物理的に強くなっていくだけではなく、精神面でも強くなっていくところに注目していただきたいですね。
――そしてもうひとりのヒロイン・フィーロについてはいかがでしょうか?
田村 フィーロはオーディションのときに、どういう演技の方向性に振ればいいのか悩んだキャラクターです。これは日高(里菜)さんの声で方向性が決まったといってもいいくらいですね。日高さんの声のかわいらしさ、天真爛漫さの表現が素晴らしく、スタッフ一同「この方向性だね」と満場一致で決まりました。愛らしいフィーロになりましたし、物語上でもほっこりできるキャラクターなので、かなり人気の出るキャラクターになるのではないでしょうか。
――尚文役の石川界人さんとラフタリア役の瀬戸麻沙美さんの演技についてはいかがでしたか?
田村 石川さんのすごいところは、マッチョな男としての強さではなく、心に秘めた強さ、息ひとつとっても強いとわかる雰囲気を表現できるところですね。歯を食いしばりながら自分よりも強い者に立ち向かっていく気高い精神性と、深く考えながら行動しているという知性を感じさせてくれます。ラフタリアは見た目が変化するキャラクターなので、お芝居でも声のニュアンスを変えていただくことになるんですが、瀬戸さんのニュアンスの付け方が絶妙で。ただただ、すごいのひと言でした。
――北米で配信される吹き替え版もすでに確認されているのでしょうか?
田村 確認させていただきました。日本のキャストにものすごく寄せていただいているなという印象ですね。日本のキャストの演技を聞いて、近いところで表現してくださっているので、海外のファンの方も吹き替えそのものを楽しめると思います。
――またスタッフについては、監督の阿保孝雄さん、シリーズ構成の小柳啓伍さん、キャラクターデザインの諏訪真弘さんと、キネマシトラス制作の『メイドインアビス』に関わりのある方が名を連ねています。
田村 キネマシトラスさんにアニメ化の相談をしたときに、監督は阿保さん、シリーズ構成は小柳さん、キャラクターデザインは諏訪さんにお願いしたいというお話をいただきました。小柳さんはキネマシトラスさんと関わりの深い方ですし、阿保さんはアニメーターとしても有名な方で僕もお名前は存じ上げていました。諏訪さんは以前、僕が担当していた『棺姫のチャイカ』の総作画監督を新井(伸浩)さんと共同でやられていた方です。すごい方であることはわかっていましたので、この布陣だったらいいものができると確信しました。
――作品の方向性を決める上で、阿保監督や小柳さんとはどういったお話をされたんですか?
田村 阿保さんも小柳さんも地に足のついた作品にしたいとおっしゃっていました。前回の話と重複しますが、ドラマをちゃんと見せる、どの国の方が見ても共感できる内容にしたいということですね。そのテーマが早い段階にスタッフの間で共有されていました。
――制作スタッフとのすり合わせに時間がかかったことなどはありましたか?
田村 早い段階にテーマが決まり、そのテーマに基づいて制作しているので、特別時間がかかったことはなかったですね。実は、尚文の振る舞いが原作小説よりも少し大人っぽくなっているんですが、それも自然とそうなったんです。大人が見ても楽しめる作品にしたい、原作の良さをより発展させたいというコンセプトがスタッフ間で共有されていたので、尚文の振る舞いもそこから決まっていきました。
――田村さんのほうから強く要望したことなどは?
田村 海外ドラマに負けないようなドラマティックな展開を日本のアニメでも表現したいというお話しはさせていただきましたね。あとはキャラクターの統一性があるかどうかを確認して、相談することがあったくらいです。たとえば、先ほどお話した尚文の大人っぽさ。尚文はもともと浮ついた感じの大学生ですが、転落して誰も信じられなくなり、復讐心に燃える彼が見方によっては軟派にも見えるような振る舞いをするのか。そういう部分は逐一確認させていただきました。
――尚文のブレなさは彼の魅力のひとつですが、その辺がより強調されていると。
田村 本当に彼は心が折れない人間ですし、目的のためなら手段を選ばない。その信念の強さが感じられる内容にしたいという思いはずっとあります。
――原作サイドから何か要望はありましたか?
田村 原作とアニメで設定の整合性が取れているかどうかは、アネコユサギ先生にきっちり見ていただいていますが、表現の部分に関しては基本的にはお任せいただいています。こちらの裁量に委ねてくださる部分が大きかったので、とてもスムーズでしたし、ありがたい限りでしたね。最初にお会いしたときから、「アニメはアニメでやっていただいて大丈夫です。間違いがあったときだけは指摘させていただきます」とおっしゃっていて、心強かったです。
――実際に映像が出来上がって、アネコユサギ先生の反応はいかがでしたか?
田村 とてもいい評価をいただいています。設定上の細かな間違いなどはあったのですが、制作が早かったことも幸いして、すべてしっかり直しています。時間がないと大変なことになる場合もあるので、早くつくっておいてよかったなと(笑)。
――設定に関して、表現を工夫したところなどはありますか?
田村 ステータス画面やスキルツリーについては、いろいろ研究しましたね。レベルアップの概念があり、ステータスを確認できる魔法がある世界なので、いろんなネットゲームのインターフェイスやレベルアップの仕方を確認しました。一番簡単なのは、声によるナビゲーションで解説することなんですが、それを入れるとどうしてもテンポが悪くなってしまうんです。なので、なるべく画面で説明しましょうということになりました。
――では最後に、放送を楽しみにしているファンの方へひと言お願いします。
田村 現時点で、クオリティの高い、とてもいい映像があがってきていますので、その点に関しては期待していただいて大丈夫です。この作品は異世界もので、異世界のワクワク感がふんだんに描かれていますが、同時に最初からとてもつらい展開が待ち受けています。ですが、それでも絶対に挫けないというキャラクターの強さがちゃんと描かれていますし、希望やカタルシスを感じられる物語になっているので、ぜひ最後まで一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
【取材・文:岩倉大輔】