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現在、好評放送中のTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。
第14回は、3度目の登場となる田村淳一郎プロデューサーにお話をうかがいました。前編では、四聖勇者と教皇の戦いを中心に、2クール目全体を振り返っていただきました。
――2クール目前半から振り返っていただこうと思いますが、2クール目はどんなコンセプトで物語を組み立てていったのでしょうか?
田村 尚文が各地を行商し人助けをしてきたことで、ようやく誤解が晴れるのかなというところで、その努力を覆すようなさらなる悪に出会い、逃避行が始まるというのが2クール目序盤の大まかな流れです。その中で「波とはなんなのか」「三勇教とはなんなのか」を尚文が知っていき、視聴者の方にもこの世界の秘密を徐々に明かしていけたらと考えていました。
尚文の逃避行がずっと続くので、見ている側にもストレスがあったのではないかと少し心配だったのですが、尚文と一緒にハラハラしながら楽しんでいるという感想をいただくことも多く、そこは一安心でしたね。
――少しずつ物語の裏側が明かされていくのがワクワクしました。
田村 改めて第1話から見返していただくと、実は物語の裏側に関する伏線がちりばめられていることがわかると思います。たとえば、第1話は冒頭から三勇教徒があらゆる場所に紛れ込んでいるんです。突然、盾の悪魔と追い詰められたわけではなく、元から狙われていたことがわかるので、最初から見直して細かい伏線をじっくり確認していただきたいですね。まとめて見ていただくと頭に入りやすいと思います。ぜひ発売中のBlu-ray Boxで確認してみてください(笑)。
――常に尚文の視点で物語が進行するので、尚文と同じ気持ちで驚いたり、怒ったり、喜んだりできるのがこの作品の特徴ですよね。
田村 そうですね。尚文の視点を大事にして、なるべく神の視点を使わないようにしています。この作品はいわゆる「異世界召喚作品」に分類されますが、私はオーソドックスなファンタジーだととらえているので、あまりメタ的な視点は入れたくなかったんです。視聴者の方が尚文と一緒に様々な謎を体験できるよう、尚文にカメラを寄り添わせることを大切にしています。
――2クール目も佳境を迎え、尚文と三勇者がついに共闘することになりましたが、その前の第19話では尚文が本気で元康たちを説教していました。
田村 教皇も言っていましたが、本来なら勇者同士が言い争っている状況ではないんです。最初から連携していれば、あそこまで教皇に追い詰められることもありませんでした。それでも、今まで抱えてきたことをあえて言わなければ、尚文はその先に進めなかったと思うんです。
錬と樹は碌なことをしないし、元康に至っては殺意剥き出しで突っかかってくる。危機が迫っているからと、「じゃあ、みんなで一緒に戦おうぜ!」と思えるのか。視聴者の方からすれば、戦闘中に何をやっているんだとストレスに感じた方もいらっしゃったかもしれません。ですが、尚文としてはあそこまで言わないと気持ちが整理できず、共闘なんてできなかったと思います。だから、鋭い言葉で過失を責めるという形になりました。
――第20話は、尚文と元康がコンビネーションを見せるという、まさかの展開に驚きました。
田村 まさに勇者本来のあるべき姿ですよね。第19話で元康がいきなり「力を合わせる」と言い出したときは、「何を言っているんだ、お前は!」と思った方が多いと思います(笑)。そのときは尚文も同じように呆れていたと思いますが、気持ちに一区切りついたことで、自らコンビネーションを提案するまでになりました。これまでの鬱憤を爆発させるような戦い方は、見ていてとても気持ちがよかったです。
――第20話のバトルはとても熱いものがありました。
田村 そうですね。もともとバトルの多い作品ですが、第20話は今までで一番派手なアクション回だったのではないかと思います。キネマシトラスさんも時間をかけて制作してくださって、そのぶん素晴らしいアクションが見られました。
――共闘に際して、尚文が協力してくれと頭を下げたところも印象的でした。
田村 尚文だけは協力しなければ絶対にまずいと理解していました。だから、自分からちゃんと頼んでチームプレイをしようとしたんです。商人として才覚があると言われている尚文らしい切り替えだなと思います。ある意味、ビジネスパーソン的な振る舞いができるのが彼の強みなんでしょうね。
――それにしても、あれほどまで教皇がしぶといとは思いませんでした。
田村 教皇はラスボス的なポジションでもあります。圧倒的な強さを描いてほしかったので、その強さが一見してわかるよう、スキルは派手に表現していただきました。見た目は普通のおじいさんでそれほど強くなさそうなのですが、何を食らっても平気、むしろ追い詰められるほど新たな攻撃で勇者たちを苦しめてくる。今回のバトルは、ゲームのボスを倒すような、ドキドキ感を盛り込めたかなと思います。何回も見ていただきたい話数ですね。
――また、この話数では尚文がラースシールドを解放し、ブラッドサクリファイスという新たなスキルを使用しました。新たな盾を解放するにあたり、尚文の心象世界も描かれましたが、この一連の流れでこだわったことはどんなことでしょうか。
田村 ラフタリアやフィーロという大切な仲間ができて、三勇者とも一時的に共闘することになりましたが、それでも忘れられない恨みが心の奥底に残っているということですね。その怒りや憎しみを表に出さなくなっても、心の深いところを刺激されるとそれがあっという間に表に出てきてしまうんです。
ラースシールドの力は、恨みを忘れられない尚文の人間的な弱さが力になるという二律背反の力です。ゆえに暴走しかけてしまい、最終的には自身の体が蝕まれてしまった。この呪いの力、つまり自分自身の弱さはこれからも背負い、向き合っていかなければなりません。
――暴走しかけた尚文をラフタリア、フィーロ、メルティが繋ぎ止めるシーンは、胸にグッとくるものがありました。
田村 パーティ全体の成長がここに繋がっていました。尚文は腐竜に憎しみを煽られ、我を忘れるぐらい怒りを燃やすのですが、助け合ってきた仲間がみんなで繋ぎ止めてくれる。呪いの炎によるやけども三人で分け合い、尚文を正気に戻すんです。絆を深めてきたからこそのシーンですね。2クール目のオープニングで、敵の攻撃を四人が受け止めるというシーンがありますが、四人で助け合うというのは2クール目で描きたかった大事なポイントでした。
――では、今後の見どころについても聞かせていただけますでしょうか。
田村 尚文が抱えてきた憎しみや怒りにどう決着をつけるかが大きなテーマになってきます。尚文は負の感情を背負いながらも、仲間と一緒に絆を育みともに成長してきました。その結果、どういった行動を取るのか。背中で語ることの多かった尚文が、今度はどんな背中を見せてくれるのか楽しみにしていてください。
――第21話ではマインとオルトクレイを弾劾する裁判も描かれるとのことですが。
田村 これまで好き放題やってきたマインとオルトクレイが裁判にかけられます。きっと見たかった方が多いと思いますし、今までの溜飲が下がるという意味でも、第21話は見逃さないでいただきたいですね。
【取材・文:岩倉大輔】