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伊藤智彦監督の前作「HELLO WORLD」では劇伴(BGM)や主題歌を提供したOKAMOTO’S。彼らは「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」にエンディング・テーマ「Welcome My Friend」を書き下ろした。2作をともに手掛けた、伊藤監督とOKAMOTO’Sは最近見た映画について語り合う。それぞれがおススメする作品とは?
――OKAMOTO'Sのみなさんは、いまオンエア中の「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」をどのように楽しんでいらっしゃいますか。
ショウ 武井(克弘・捜査一課長)がどうなるのかが気になりますよね(笑)。僕は脚本を読んだうえで「Welcome My Friend」を書いたから地味にストーリーを知っているんですよ。でも、ガジェットの使い方とかは絵になって初めてわかることが多いんです。第1話で勝鬨橋が上がるシーンも脚本で読んでいたときに知っていたけれど、絵になったのを見てわかったところもあって。絵になることで、どうなるのかを楽しみにしているところがあります。
伊藤 第1話の橋が上がったとしても、(橋の先端は)そんなに高くはならないよなと思っていたんです。でも、アニメでは高かったですね(笑)。
ハマ 橋の先端にあった車が、橋が上がることで、あんな高いところまで持ち上げられるなんて。
ショウ 高かった(笑)。
伊藤 あれがアニメ時空です。
ハマ 一番気になっているのは神戸家の過去に何が起きていたのかってことですよね。神戸大助と加藤春の過去に何があって。それでふたりはどうなるのか。
伊藤 そうですね。もちろん、そのふたりの過去を描きたくてシリーズをずっと続けてきたわけですけど、ちょっと不安もあって。後半のシリアスな話数になると、振り落とされちゃう視聴者もいるんじゃないかと思うんです。前半の軽いほうが良かった、という人もいるんじゃないかなと。
ショウ そうか。じゃあ「この記事を読んでいるあなたは絶対に振り落とされないでくださいね」ってことですね。
伊藤 前半の雰囲気を織り交ぜながら、後半の展開をつくっているんですが、ここ数年は「物語の起伏をつけることが視聴者にはストレスとして受け入れられているんじゃないか」って感じがあるんです。
一同 ああ~。
ショウ 難しいですねえ。
伊藤 映画だったら1時間半経てば物語が終わるんでしょうけど、TVシリーズだと1話ごとに切り分けないといけませんからね。きっとこれは放送が終わったときに答えがでるんだろうなと思っています。
ハマ その話を聞くと、より楽しみになってきました。
ショウ 今日、ここにいないコウキがいつも「本当におもしろいねえ」って言っているんです。
ハマ 「見た第3話? 本当におもしろいよね」ってずっと言ってます。
――みなさん映像にかかわるお仕事をされていますが、いまおススメの作品があれば教えてください。
伊藤 このご時世なので映画館になかなか行けていないのですが……。
ハマ 僕も映画館が再開してからは、行けていないですね。
伊藤 かろうじて「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」(グレタ・ガーウィグ監督)を見ました。
ハマ そうですか! 伊藤監督は「HELLO WORLD」のころから、こうやって話の中にお好きな映画を盛り込んでくださるんです。
ショウ それでハモったというか。そういう会話をすることで、僕らと伊藤監督の共通言語ができたような気がしますね。
伊藤 あと、現在だったら「破戒の日」(豊田利晃監督)という映画が良いと思います。
ハマ ああ、豊田監督。クラウドファンディングで出資者を募っていた作品ですね。観ます!
伊藤 いまは「TENET テネット」(クリストファー・ノーラン 監督)を早く観たい。
ハマ 監督、「殺人者の記憶法」(ウォン・シンユン監督)は観ましたか、3年くらい前の韓国映画ですけど。
伊藤 ああ、おじいちゃんが主役の映画ですよね。
ハマ 最近観たんですけど、すごくおもしろかったです。
伊藤 観ます!
ハマ アルツハイマーになった元連続殺人犯のおじいちゃんが主人公で。そのひとり娘にできた彼氏が警官なんですけど、一回会ったときに、こいつも俺と同じ連続殺人犯だと気づくんです。自分がボケはじめているので、自分が犯した犯罪と、他人が犯した殺人の記憶がごちゃごちゃになっていく。でも、完全にボケてしまう前に、娘だけでも助けようと思うという話なんです。つまり、ふたりとも連続殺人鬼という(笑)。すごくおもしろかったですね。
伊藤 アルツハイマーものといえば、ナチスドイツの兵士に家族を奪われたおじいちゃんが、友人からもらった手紙を頼りに、記憶を失う前に兵士へ復讐をしようとするという映画がありましたね。たしか「手紙は憶えている」(アトム・エゴヤン監督)。これも3~4年前ごろの作品で。当時、それに触発されて「おじいちゃんもの」の企画を考えたことがあります。
一同 へえ~!
ショウ やってほしいな。アニメでおじいちゃんものって良いですよね。
伊藤 なかなかハードルが高いですけどね。
ハマ 「よつばと」ぐらいのテンションで「おじいちゃんもの」をやってみるとか(笑)。
ショウ 「DARK」は観ましたか? Netflixでシーズン3までやっているんですけど。
伊藤 Netflixは入っていないんですよ。いま家でネットワークの回線が引けていなくて。
ショウ タイムスリップものなんですけど、普通のタイムパラドックスものは「一度過去に行って、現実に干渉してしまって、それを直そうとする話」が多いと思うんですけど、「DARK」は15人くらいが一斉にタイムパラドックスを起こしまくる。1話ごとに「これもタイムパラドックスだったのか」と驚き続ける、斬新な作品です。小さいドイツの田舎町の家族の3~4世代にわたる話なんですけどね。
伊藤 すごい情報量ですね。覚えていられるかな。
ショウ 風呂敷を広げまくったあとに、3クール目で完結するので。精密に組み上げるのが得意なんだろうな、ドイツ人の気質かなと思いましたね。
伊藤 ドイツの作品なんですね。
ショウ そうなんですよ。最初、ドイツ人の名前が難しくて、顔と名前を一致させるまでに時間がかかります。
伊藤 見ます! Netflixに入れれば……ネットワークの工事を4ヵ月待っているんですよ。
ハマ えっ、家にネットワーク回線を引いていないんですか。
伊藤 うちに仕事を持ち込みたくなかったので、ネットワークをしたくなかったんです。
ハマ じゃあ、仕事は全部スタジオで?
ショウ なるほど、それって大事なことかもしれませんね。僕らは音楽に日常的に触れているし、曲を書くのも半分趣味みたいなところがあって、その延長線上でOKAMOTO'Sをやってますけど。
ハマ アニメは比較的、多くの人とやり取りしなきゃいけないですもんね。
伊藤 そうですね。どうしても一作品に100人以上の人が関わっていますからね。
ハマ じゃあ、いよいよネットワークを引くことになるかもしれないですね。
伊藤 ネットワークが引けたら、Netflixを見ます(笑)。
OKAMOTO'S 僕らも「富豪刑事BUL」を見ます(笑)。
出会いや「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」本編について、創作物のやり取りについては現在発売中の「ニュータイプ10月号」にて掲載! こちらもチェック!
【文・構成=志田英邦】