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8月28日(金)21時より、YouTubeのKADOKAWA Anime Channelで「TVアニメ『天晴爛漫!』presents スタッフリモートトークショー」が配信されました。番組では、監督・シリーズ構成・ストーリー原案の橋本昌和さん、キャラクター原案とともにコミカライズも手がけるアントンシクさん、P.A.WORKSのプロデューサーの辻充仁さんが登壇し、「天晴爛漫!」の制作秘話が数多く披露されました。本稿ではそのレポートをお届けします。番組の性質上、この記事にも放送済みの話数に関するネタバレが一部含まれますのでご了承ください。
スタッフトークは、制作の経緯についての話題からスタート。当初は、KADOKAWAの加藤プロデューサーと辻プロデューサーで「オリジナル作品をやろう」というところから企画が動き始めたそうです。そこに橋本監督が参加して、具体的に企画が練られはじめましたが、なんと当初の企画は"ゴルフモノ"だったとのことです。当初のコンセプトは「スポーツモノ」で「アメリカ大陸横断モノ」。スポーツを題材としたアニメで、あまり先例がないものは……という発想から、ゴルフに白羽の矢が立ったそうです。
その後ゴルフの打ちっぱなしを体験したりしながら企画は進んでいきましたが、ここで橋本監督が「アメリカ大陸を横断するならレースモノもいいのではないか」と、もう一つの企画を同時進行。スタッフにヒアリングしたところ、レースモノの方が圧倒的によい反応だったとのことで、そこで企画が一気に切り替わりました。
また、時代設定が現代ではなく19世紀末になっていることに関しては、橋本監督が「現代より"何が起きるか分からない冒険"を演出しやすくなる。時代が少し前の方が(ストーリー展開に)スリリングさを出せると思った」と語りました。
続いての話題はキャラクターについて。キャラクターデザインをオファーする人を選定するため、会議室が埋まりそうになるほどの漫画雑誌や画集などを集め、それを片っ端から見ていったそうです。老若男女のキャラクターが幅広く登場する作品になるため、あらゆる年代をしっかり描き分けられる人……ということで、3人が満場一致で挙げたのがアントンシクさんだったとのことです。
ここでアントンシクさんによる、メインキャラクターのラフイラストが公開されました。主人公・空乃天晴の隈取りは、「天才肌で突飛な性格」という設定テキストを見てインスピレーションを受けたアントンシクさんが、さらに国際色を出すため歌舞伎にヒントを得て取り入れたとのことです。
ホトトの初期ラフイラストも特徴的で、当初は等身がかなり低かったことが明らかになりました。これに関して橋本監督は「ホトトの頭身を上げてくださいとお願いしてもなかなか上がりませんでした」と笑顔を見せました。
その2人よりも、さらに印象的なのが一色小雨の初期デザイン。当初は「ツーブロックでちょんまげ」という特徴的な髪型をしており、さらに、顔もシュッとしたしょうゆ顔でした。決定稿とは印象が大きく異なるスマートさです。アントンシクさんは当時を振り返り「一見すると"シャープな印象の切れ者"だけど、中身はヘナッとしている」というギャップを狙ったものだったと振り返りました。
また、小雨はオープニングテーマやアバンタイトルが終わったあとの提供時にボヤく"小雨爛漫"も印象的なキャラクターです。この演出の発案者は橋本監督で、「番組が終わるときの提供でスタッフが遊ぶのはよく見られたので、それなら本編前の提供で遊べないかな? と思ったのがきっかけです。テレビ局に確認したらそこでキャラクターにしゃべらせても構わないという回答をいただけましたので、"小雨爛漫"が始まりました」とコミカルな演出が生まれた経緯を語りました。ちなみに、この部分の原稿のみ、キャストの山下誠一郎さんの手に渡るのはアフレコ当日であるとのことで、山下さんはいつもさまざまな演技の引き出しを開けながら"小雨爛漫"に挑んでいるそうです。
続いての話題は、メカニックデザイン・竹内志保さんによる個性的すぎるデザインのレーシングカーに。橋本監督は「いわゆるクラシックカーの文脈には沿わなくていいので、見たことがないようなデザインでまとめてほしいとお願いした」と竹内さんへのディレクションを明かし、その狙いについて「(実際の歴史でも)初めてクルマを見た人たちは、きっと「なんだこれは」と思ったはず。今を生きる視聴者のみなさんがそれと同じように「なんだこれは」と思ってもらえるデザインにして、当時の人たちと同じワクワク感を抱いてもらいたかった」と語りました。
推しのレーシングカーを聞かれると、橋本監督は「天晴号」と回答。デザインの際も「(運転席に)レバーをたくさん付けて、見ているだけでいかにも動かしてみたくなる感じに」とディレクションをしたそうです。
辻プロデューサーが挙げたのは、チェイス・ザ・バッドとギル・T・シガーが駆る「バッド号」。「映画『マッドマックス』のようなカーアクションをやりたいと思っていたので、そこに出ていてもおかしくないようなデザインで、とお願いしました(笑)」。
そしてアントンシクさんの答えはアル・リオンが運転する「AL9」でした。「人を刺し殺さんばかりのツノが好きです。BNWのクルマにおけるツノは、きっとBMWでいうエンブレムのようなものなのだろうと勝手に思っています(笑)」と笑顔で語りました。
そして最後の話題は「放送済みの話数で好きなシーン」。橋本監督は「特定のシーンというより、アフレコで自分が思い描いていたものと違うニュアンスの(かつ、それもアリだと思わせてくれる)セリフが好きです」と回答。その一つが、アルが第3話で天晴に言った「いや、倉庫はもともと私のものだ」というセリフだそうです。
辻プロデューサーが挙げたのは、"天晴が変わろうとしている"シーン全般。小雨に「お前はこういうときには役に立たないな」と言われて以来、釣りや火起こしを手伝うようになるなど、天晴が少しずつ変わろうとしている一連の流れがお気に入りとのことです。
アントンシクさんのお気に入りは「衝突している者たちが心情を吐露するシーン」とのこと。第1話での天晴と小雨の漂流シーンや、第2話で2人が出会ったジン・シャーレンが夜のレースピットでレーサーへの思いを語るシーンなどが印象的とのことです。そして、そうしたシーンをより印象的にできないかという思いから、アニメでは夜の描写がメインだった漂流シーンは、コミカライズでは夕日が差す夕方での描写となったそうです。
ここでTOKYO MXでの「天晴爛漫!」地上波最速放送(毎週金曜22時)が始まる時間になり、3人がノンストップで語り続けたトークショーもお開きの時間になりました。辻プロデューサーと橋本監督によれば、アニメはこれからクライマックスに向けて天晴と小雨を中心としたドラマがさらに加速していき、物語は最後までノンストップで駆け抜けていくとのことです。
TVアニメ「天晴爛漫!」は、AT-X、TOKYO MX、北日本放送ほかで毎週金曜21時以降に好評放送中です。きたる9月4日(金)にはアントンシクさんによる公式コミカライズ第1巻が発売され、9月25日(金)には、Blu-ray/DVDシリーズの第1巻がリリースされます。第1巻の特典のひとつにはオリジナルサウンドトラック収録のメイキング映像があり、その試聴動画がYouTubeで公開されています。