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あてもなく、気ままに諸国を旅する少女・イレイナ。行く先々でさまざまな文化や慣習に触れ、幾多の人と出会いを果たしますが、旅人である彼女は決して一か所に留まることはなく、再び旅の途へと戻っていきます。これはまだ若き魔女の、出会いと別れの物語――。
10月2日(金)よりTOKYO MXほかで放送が始まった「魔女の旅々(魔女旅) 」は、原作・白石定規さん、イラスト・あずーるさんによる同名の連作短編式ファンタジーノベルを原作としたTVアニメです。WebNewtypeではそんな本作の魅力を掘り下げるべく、スタッフやキャスト陣へのリレーインタビューをお届けしていきます。連載第4回は、アニメーション制作を手がけるC2C所属のプロデューサー・早坂一将さんにお話をうかがいました。
――まずは、作品に初めて触れたときに感じた魅力をお聞かせください。
早坂 "旅モノ"ならではの魅力といいますか、読んでいるうちに自然と、イレイナといっしょに非日常にいざなわれているところが魅力に感じました。あと、イレイナ自身の性格も好きです。行く先々で、口八丁手八丁で旅費をかき集めたりするところとか、イイ性格をしている子ですよね(笑)。
――"食えない"ところがイレイナの魅力のひとつですよね。スタッフィングの狙いと手応えはいかがですか。
早坂 監督の窪岡俊之さんとキャラクターデザインの小田武士さんは、弊社が手がけたTVアニメ「はるかなレシーブ」でタッグを組まれていたお二人なので、安心してお願いしました。
窪岡監督は「魔女が箒で空を飛べる以上、この世界の都市の門はある程度形骸化しているのではないか」とロジカルに設定を詰めていく一方で、どのように魔法を魅力的に見せればよいかなどアニメならではの表現にも苦心してくださる方で、そのバランスを取るのがとてもうまい方だと感じています。お願いしてよかったと手応えを感じています。
――コンセプトデザインを担当しておられる内尾和正さんは、アニメではあまりお見かけしない方であると思いますが、どのような経緯でオファーされたのでしょうか。
早坂 「魔女旅」はイレイナの一人称による旅日記ということもあり、世界設定は読者の想像にゆだねる部分が大きい作品ですので、本当に想像力が豊かな方にコンセプトデザインをお願いしなければ、ありきたりな世界になってしまうのではないかと思いました。
そんな思いで調べものをするうちに、たまたま目に止まった瞬間に一気に惹きこまれたのが、内尾さんの描くファンタジーアートだったんです。普段は広告業界でお仕事をされておられるとのことで、慣習などの違いから二つ返事とはいかなかったのですが、僕としては「魔女旅の世界を描けるのはこの方しかいない!」という思いがあって。猛アタックのすえに、お引き受けいただけました(笑)。
――内尾さんによるコンセプトアートを見ての感想はいかがでしたか。
早坂 もう、驚愕のひと言でした。アニメは集団作業ということもあり、絵作りは「どこをどのように省略してうまく見せるか」という指針が重要になることが多いですが、内尾さんはまったく正反対の方で、とことんまで描き込まれるんですよね。
コンセプトアートをこちらから発注したときは、窪岡監督とすり合わせたうえで「このくらいの描き込みで大丈夫です」というイメージをお渡ししたのですが、それを遥かに上回るクオリティのものをいただけて、スタッフ一同の士気が大きく上がりました。こちらも内尾さんの心意気にお応えできるものを作らなければならないなと。
――内尾さんの描く美麗な世界で生きるイレイナたちのさまざまな姿が描かれた版権ビジュアルが毎月公開されるのがすごく印象的で、1ファンとしてはいつも楽しみでもありました。
早坂 早い段階でこちらのイメージをみなさんにお届けすることで、その反応としてみなさんがアニメに期待することや、楽しみにしていることを知ることができました。そのお声は、作品を肉付けしていくうえでの指針やヒントになっています。温かい反応をいただけたみなさんには、感謝の念しかありません。
――フィルムが形になっていくうえで、とりわけ力を入れたところはどこになりますか?
早坂 食事シーンの描写ですね。これは僕の個人的なこだわりになりますが、食事のシーンや料理の描写は、その作品の世界の日常を描くうえで欠かせないものだと思っています。見てくださったみなさんの、おいしそう、食べてみたいという感情を最大限に引き立てる。それでこそ、作品の世界を身近に感じてもらえるのではと。
――食事といえば、イレイナのお父さんがとてもよく食べる人ですね。イレイナ役の本渡楓さんも、とても印象に残っているとお話しておられました。「イレイナ自身も食事しながら人に応対することがあるので、どこか似ている」と。
早坂 お父さんは気が付いたらああなっていたのですが……(笑)。でも確かに、本渡さんのおっしゃる通り親子らしさを感じますね! また、作品世界を身近に感じていただくためのものとして、作中の文字もしっかり作りこんでいます。
――文字や食事という、日々の生活と切り離せない部分がしっかりと作り込まれているのですね。
早坂 キャラクターが持っている本や、何気なく置かれているコップなど、小物にもこだわっています。細部をしっかり作り込むことで画面がより引き締まりますし、スタッフたちの間にも、より一層気は抜けないぞという意識が芽生えて士気が高まります。大変ではあるのですが、やる意義は大いにあると思っています。
――メインキャストの4名はドラマCDからの続投となっていますが、早坂さんが感じキャスト陣の演技の魅力を教えてください。
早坂 本渡楓さんは、イレイナが持つ毒のある部分のお芝居が本当に絶妙ですね。これがイレイナという女の子なのだと自然に感じさせてくれる、説得力のあるお芝居をしてくださっています。
サヤは、視聴者のみなさんに親近感を抱いていただくかが大切なキャラだと思っていますが、黒沢ともよさんのお芝居はそういう意味でも本当にピッタリです。学校で、クラスにいそうな感じがしてきますよね(笑)。
フランは、第1話の初登場時はミステリアスな雰囲気も持っていましたが、話の流れが分かってからあらためて見直すと、セリフの一つひとつにその時フランが何を思っていたのかまでを感じ取れるようで、これは花澤香菜さんでなければできないお芝居だったと思います。
シーラは4人の中では登場が遅めですが、"元ヤン感"をいかに出すかにつきますね(笑)。作中時点でのシーラは魔法統括協会の一員として仕事に関して真摯で、弟子のサヤのこともとてもよく見ている頼もしい女性です。日笠陽子さんには、そういう深みのあるキャラをしっかり演じていただけました。
――本作はイレイナの旅物語が描かれていますが、ご自身が旅をするなら行きたいところはありますか?
早坂 カッパドキアに行って朝から熱気球に乗って雄大な景色を堪能して、そのあとホットコーヒーを飲みながらのんびりしたひと時を過ごしたいです! 昔、テレビの旅番組でカッパドキアの風景を見て、一気に虜になってしまいました(笑)。
――イレイナにとっての「ニケの冒険譚」のように、幼い頃に憧れた本などはありましたか?
早坂 幼い頃は外で遊びまわってばかりでしたね……。誕生日プレゼントに野球のグローブをお願いしたら、当日の朝の枕元には、なぜか野口英世の自伝が枕元にあったことがある意味印象に残っています(笑)。
アニメは、定番ですが「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」が大好きで、毎週夢中で見ていました。ただ、中学・高校に上がるとパタリとアニメも見なくなりまして。僕はアニメのプロデューサーとしては、変わりダネな方なのではと思うことがあります。
――C2Cの公式サイトのプロフィールで自衛隊に6年おられたと拝見しました。これもなかなかないことと思いますが、どのような経緯で入隊されたのでしょうか?
早坂 高校3年の時に仲がよかった友人が公務員志望で、「公務員になれば土日が休みだぞ」と言うんですよ。それを聞いて確かにそうだと思って、高3年の夏で進路希望を急遽、一般企業志望から公務員志望に変えたんです。そうしたら、その時点でまだ募集があるのが自衛隊しか残っていなくて……(笑)。でも、入隊してよかったと思っていますよ。この仕事をしていても、身体面で辛さを感じたことはほとんどありませんので。
――元自衛隊員の方がおっしゃると、重みがありますね……。それでは最後に、アニメ第3話以降の見どころを教えてください。
早坂 これからもイレイナにはさまざまな出会いと別れが待っており、その過程では人が持つ綺麗ではない部分も描かれていきます。そこがこの作品の大きな魅力のひとつだと思っていますので、そんなところも楽しみながら見ていただけたら嬉しいです!
次回の「魔女の旅々」リレーインタビューは、オープニングテーマ「リテラチュア」を歌う声優アーティストの上田麗奈さんにお話をうかがいます!