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2013年よりTVアニメの放送がスタートした「進撃の巨人」。その圧倒的な世界観と鮮烈なビジュアルは多くの視聴者の反響を呼び、社会現象と呼べるほどの大ヒット作品になりました。そして2020年、人類と巨人の壮絶な戦いは新たなるステージへ――。シリーズ最新作「進撃の巨人 The Final Season」の放送開始を前に、ポニーキャニオン・木下哲哉さん、講談社・立石謙介さん、MBS・前田俊博さんのプロデューサー3名が「進撃の巨人」の“これまで”と“これから”を語ります。
――アニメ「進撃の巨人」もついにファイナルシーズンまでたどり着きました。ここまで振り返っての感慨など、お聞かせください。
前田 企画段階から含めると、もう10年くらい前でしょうか。
木下 ちょうど2010年の今ごろに顔合わせをしたかというくらいだったと思います。まだ暑かったのを覚えているので。
前田 そう考えると長いお付き合いになりましたね。放送局の立場であるMBSとしては「進撃の巨人」を製作するにあたって、かなり重大な決断をしなくてはならなかったことが2つあって、ひとつは「進撃の巨人」を製作する!と前がかりになったものの、はたして本当に放送できるのか?という覚悟が必要だったのと、もうひとつは「Season 3」からNHKさんに放送が移るとなったときですね。始まった当初は東京がTOKYO MX、関西がMBSで、その他全国のローカルエリアを拾っていくという放送スタイルだったのですが、作品のさらなる拡がりの為にseason3から初回放送の権利をNHKさんに販売するという、たぶんどの民放局も今までやったことのないことをMBSとして決断することになって、非常に感慨深い出来事かなと思っています。
立石 当初から原作の人気があったので、我々としてはある程度ヒットするとは思っていましたけど、業界全体的にもここまで来るとは誰も思っていなかったとは思うので、それがこんなにも大きなタイトルになってきたということに対して、素直に喜びがあります。あとは、ここまで「進撃の巨人」をやってきて、もう一生こういう作品には巡り合えないかもしれないという怖さもありますね。
――今年の7月には「Season 1」~「Season 3」を1本にまとめた劇場版「進撃の巨人 ~クロニクル~」が期間限定で公開されました。「Season 1」と「Season 2」に関しては以前にもそれぞれ総集編がありましたが、そのうえで新しい総集編をつくられた意図や狙いについて、お聞かせください。
木下 先日、(TV番組「アメトーーク!」の企画として放送された)「進撃の巨人芸人」を見たときも感じましたが、まだ「進撃の巨人」を見たことがない方、途中でやめられた方がたくさんいらっしゃるので、ファイナルに向けてまた新たに「進撃の巨人」を体験できる場として制作させていただきました。
立石 木下さんも言われた通り、まさに「進撃の巨人」の製作陣はどんなに大きなコンテンツになっても、「まだ見たことのない人がいるんじゃないか?」ということを永久に追い続けているチームなんですね。その気持ちだけは10年間変わらず、常に新しい人に見てもらおうということを心がけてきているので、総集編をしつこくやっているという感じになってしまって(笑)。ただやっぱり、特に「Season 1」~「Season 2」の間は4年も空いていたということもあって「昔、見ていたな」という人を呼び戻したいし、当時は小学生とか幼稚園児だった人でも足掛け8年もたてば見てみようと思ってくれるかもだし、そういう人たちを拾うためには「Season 3」の総集編だけじゃダメだよねと。それが今回の企画意図だと思いますし、常に新しい方に入っていただけるようにという努力はしています。
木下 何しろ、「Season 3」まで4クール以上ありますもんね。
前田 これが長く続いているシリーズものの宿命かなと。全59話を最初から全部見なきゃいけないとなると、相当大変だと思うので。「進撃の巨人」の放送を開始した2013年に小学生だった子が今、大学生になって、改めて「進撃の巨人」を見ようというときに総集編があると入りやすいかなというのもありますね。
――「The Final Season」では、制作がこれまでのWIT STUDIOからMAPPAに変更となりましたが、どのような事情があったのでしょうか?
立石 「Season 3」の制作中にWIT STUDIOさんからご相談があり、「The Final Season」については制作会社変更することなりました。理由としては、「Season 3」の最後で主人公が海を見て、そこで物語に区切りが付いたタイミングであったこと。加えて、クリエイターとしてのさらなるステップアップに向けて、「進撃の巨人」は今回までとしたいということでした。僕らもWIT STUDIOと何度も話し合いをしたうえで理解しましたが、次に大変になってくるのは新しい制作会社探しで。僕と木下さんと前田さんで手分けして探しましたけど、ほとんどの会社がNGだったんです。やっぱり、このフィルムを引き継ぐことの大変さは皆さんわかっていて、とても引き受けられませんという話が何十社も続いてしまって……。
前田 もちろん、意欲を示してくださったけど、スケジュール的にどうしても難しいという理由でお断りされたこともありましたが。
立石 その中で1社だけ「ちょっと考えてみます」というお返事をいただいたのがMAPPAさんで、WIT STUDIOさんにも話をしてみたところ「MAPPAさんなら安心です」ということでしたし、プロデューサー陣も同様の意見で、制作を移行することになりました。
木下 MAPPAさんは「『進撃の巨人』はファンのために作品として、ちゃんと最後まで終わらせるべきだ」と、我が事のように言っていただいたのも印象的でしたね。
――新たなスタッフの方々とは、どんなお話をされましたか?
前田 もちろんソーシャルディスタンスを保ちながらではあるので、スタッフ間での密な打ち合わせもやりにくい状況にはありますが、PVをご覧になっていただければMAPPAさんの気概の表われはわかりますし、すべてはここに集約されているのではないかと思います。フィルムに全部答えが出ていますということを、ひしひしと感じますね。
立石 前田さんのおっしゃった通り、「MAPPAが出すべき『進撃の巨人』はこの形です」ということを映像で示してくれたと思います。
木下 楽曲も、あのPVありきで、映像に沿ってつくりました。
立石 いろいろと大変だとは思いますが、MAPPAさんは最大限に力を入れてくれているんだなということを、あの映像を見て感じました。
――では、今お話しできる範囲で「The Final Season」の見どころを教えてください。
前田 「The Final Season」はキービジュアルが「Season 1」と構図が真逆になっています。まったく「進撃の巨人」を見ていない人が見たとしたら、どういう感想をもつんだろう?ということを個人的には楽しみにしています。既存のファンの方にも、ぜひ楽しみにしていただきたいなと思っています。
立石 たぶん原作をお読みになられた方も、アニメで新しい発見があるだろうし、また原作を読み直したくなるようなつくりにはなっていると思うので、ぜひこの物語の結末をみんなで見届けられたらいいなというふうには思いますね。
木下 当初の原作のテーマであろう「被害者が加害者になる」という逆転のコンセプトが見事に表現されるシリーズだと思います。原作は怒涛の展開ですし、丁寧にアニメ化をすることで、毎週楽しみにしていただけるシリーズになればと思っています。3年以上かけて準備してきましたので、お楽しみに!!
【取材・文:仲上佳克】