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WIT STUDIOと打首獄門同好会の衝撃コラボによって生まれたアニメーターの応援歌「サクガサク」MV。アニメと音楽、ジャンルを超えた熱いクリエイター魂の共鳴には、大変な苦労が……!?
――「サクガサク」のアニメMVは発表直後から大反響でしたが、もともとは作る予定はなかったそうですね。
大澤会長(以下、会長) そうです。あくまで「応援歌を作って出す」という依頼を受けただけでした。そのときから、心の中では「この曲にはアニメのMVがついたらいいんだろうな~」と感じてはいたんですけど、絶対に予算が見合わない。ならば俺からそれを言うわけにはいかないということで、まず曲を書いたわけです。
浅野 で、曲を作っていただいてから、何か発表の場を作らねばならない、いや、作るべきだろう……と話が進んでいき、それがどうやら「リリースのタイミングでMVと一緒に発表しよう」みたいな形でまとまったらしい、と。そうなったらもう、「アニメーターを応援する曲のMV……それはもう、アニメで作るしかないだろう!」となるのは、自然な流れでした(笑)。
――なるほど(笑)。そこから具体的なMVの内容はどのような話し合いで決めていったのですか?
浅野 まず完成した曲をいただいて、それを聴きながらいろいろと考えて、イメージ画を描いていったんですね。でもそれは大澤さんに見せてないですよね? 画を見せたのは、絵コンテが初めてじゃありませんでしたっけ?
会長 たしかそうですね。その前の話し合いは、関係者でLINEグループを作って、そこでやっていました。MVを作ることが決まってからも、当初はアニメと実写をパート分けするはずだったんですよね。で、とりあえず大筋の流れは浅野さんから、口頭説明をしていただいて。
浅野 実写パートも含めた仮の絵コンテを元に説明して、みなさんから意見をいただく流れでしたね。
会長 そのころから、「アニメのいろんな要素をてんこ盛りにする」ことは決まっていて、そのために「アニメにはどんな定番ジャンルがあるのか?」という話をしていったのを覚えています。ロボットものだ、バトルものだ……と、結構いろんなジャンルが出ましたよね? 表で一覧するとすごい量になるぐらいの。
浅野 でしたね。その中からMVになったのは、実は本当にわずかで。
――あれだけ詰め込まれているのに! たとえばどんなジャンルが入らなかったんですか?
浅野 アゴの尖ったキャラが出てくるギャンブルものとか……(笑)。
会長 料理もののアイデアもありましたよね。料理を食べると体が光って、ドカーン!! ……みたいなの(笑)。そういったものの中から、いろいろ考えて、浅野さんがどのジャンルをどう盛り込むかを検討してくれた。そこから本番の絵コンテの作業に入っていただいて、今年の1月か2月でしたっけ? 最初の絵コンテをいただいたのは。
浅野 年明けだったのは覚えています。
会長 で、そこからさらに紆余曲折を経て……中でも一番大きかったのは、「これ、実写パートがいらないんじゃないか」説の登場(笑)。
――それはいろいろな意味で影響の大きい発見ですね(笑)。
会長 絵コンテを描いている段階で、完成した「サクガサク」のMVの1番が終わるまでの部分を、先に見られたんですよ。で、当初のプランでは2番から実写が来るという話だったんですが、実写パートの撮影に関わる予定だった関係者が一斉に「そこで台無しになるんじゃないか……?」と。「どういう実写だったらこのテンションを受け継げるんだろう?」という話になってしまったんです。そこであらためて事務所の人間とも話しまして、アニメの続きを実写で撮るなら、こういう撮影をして、こういう風な演出で……とアイデアを練っていったら、それはすごい手間もお金もかかるよね、と。それだったら、同じお金をアニメーターさんにお渡しして、残りもアニメで作ってもらった方がいいだろう、と。そうやって方針を固めて、 LINE グループであらためて打ち合わせをしたら、実写の監督をお願いしようと思っていた方も、映像の専門家としての意見で「これは全部アニメで作った方がいい」と。その方がそういうなら、もう、それはそうなんだろうとこちらも迷わず決められました。
浅野 そういう流れだったんですね。
会長 ただ、この1番と同じテンションで2番にも高いクオリティのアニメを作るとしたら、一体どれくらいの大変なことになるのかというのは、ちょっと心配でした。
浅野 たしかに、1番だけでもアニメのいろんなジャンルを詰め込んだんですよ。候補の中から厳選して、テンポも合わせて、詰め込んだ。そこから2番を作るのは、ものすごい精神力を使う作業ではありました。まさに絞り出すというか。
会長 こちらとしても、気を使わなきゃと思って、「もっとこういう、楽そうな表現にしてごまかしたらどうですか?」とアニメの素人なりに意見を出してみたりもしたんですけど、完成形を見たら「あれ? インチキしてない!」と(笑)。「ここは止めの画でいけるんじゃないですか?」といったところも、変わらず全部動いてる。完成したものを見たときは、「本当に申し訳ない」という気持ちと、「やっぱり全部アニメにしたのは、スゴい正解!」という、ふたつの気持ちがこみ上げました。いやぁ、でも本当に、大変だったでしょう?
浅野 全部アニメで作ることになってからも、スケジュールは最初の予定のままでしたからね。自分よりもプロデューサー陣がヒヤヒヤしていたと思います(笑)。追加の絵コンテもアップしてから、あらためて全体のスケジュールを切り直して……。
会長 このプロジェクトは本当に、音楽側のクリエイターもアニメ側のクリエイターも、「クリエイター魂」みたいなものだけでやることを決めてしまったプロジェクトなので、たぶんうちのプロデューサーも同じだったはず。スケジュールやお金を管理している人たちは、両サイドですごく苦労してくれたはずです。好き勝手をいう人たちでしか、作っていなかったから(笑)。
対談ははずみにはずんで、ここには掲載しきれないくらいのボリュームになりました。10月10日発売のニュータイプでは、さらなる対談を掲載します。どうぞお楽しみに!
【文・構成/前田久】