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オリジナルショートアニメ『あなたから聴く物語』の監督・ぽぷりかインタビュー(後編)「映像作品で自分の考えたものを誰かに届けたい」

オリジナルショートアニメ『あなたから聴く物語』が好評配信中
オリジナルショートアニメ『あなたから聴く物語』が好評配信中(C) EISYS / ZOWA / CatchyStuck / あなたから聴く物語 Project


2月18日から動画サービス「ZOWA」で配信が始まり、話題となっているASMR動画のオリジナルショートアニメ『あなたから聴く物語』。本作の脚本・映像監督を務めたHurray!代表のぽぷりかさんインタビューの後編では、本編の最後に向けての気持ちや、今後の作品作りについて語っていただきました。

『あなたから聴く物語』の監督を務めるのはぽぷりかさん
『あなたから聴く物語』の監督を務めるのはぽぷりかさん


――「クスっとした笑い」が大変面白い本作ですが、全体を通したテーマは考えられたのでしょうか?

ぽぷりか:8話までは特に大仰なことはなく、最終話だけ、僕が思っていることを映しています。とは言っても御大層なことではなく、こういう人になりたいな、という自分の考えです。自分の人生、「つまんないな」と思っていたとしても、それを聴いた相手には面白い話かもしれないじゃないですか。それがきっかけで自分の人生を面白く振り返って、これからの考えを変えられるかもしれない。最終話はそういう気持ちで書いています。

――今回は会話を聴くことがメインなので純粋なASMR動画とは違いますが、制作してみてこのジャンルの可能性をどう感じましたか?

ぽぷりか:今後新しいものを作るにしても、映像のリッチさだけで勝負することは避けたいと思っています。

Hurray!は現在3人チームなので、リッチさでは大人数でマンパワーのあるチームに勝つのは難しい。勝負するならそういう部分ではない面白さで、その意味では“声”は強いです。声(会話)はそれだけで内容を伝えられるし、面白さも分かりやすい。今回の様に声の面白さを軸に、映像でそれを補助する設計は上手くハマるパターンが多くあると思いました。

――Hurray!が結成されたのは2016年。セリフ入りの作品は今回が初ということですが、Hurray!公式サイトの作品例はたしかにMVが多いですね。

ぽぷりか:代表作だとヨルシカさんの『だから僕は音楽を辞めた』『雨とカプチーノ』や、夏代孝明さんの『ニア』。『ニア』は「プロジェクトセカイ」という初音ミク系のスマホゲームにも収録されているので、曲は知っているという方は多いと思います。MVが多いのにはワケがあって、1つは3人で作れる規模の問題。もう1つが、美術大学時代にある僕の映像作りの原点です。1年のとき、映像制作に興味を持って作ってみたわけですが、いきなり実写ものやCGは難しく、絵は描けるからそれをアニメーションにしたファンメイドのMVを制作していました。その積み重ねが今であり、仕事の幅は今回のように少しずつ広げていければいいなと思っています。

Hurray!は注目の映像制作チーム
Hurray!は注目の映像制作チーム


――Hurray!のほかの2人、おはじきさん、まごつきさんはどういう方なのでしょう?

ぽぷりか:2人は美大時代、映像制作を手伝ってくれた仲間です。Hurray!は僕自身がやりたいことをするために立ち上げたチームですが、けっこう紆余曲折があったんですよね。大学卒業後はOGの会社でプロの制作、マネジメントを学ばさせていただいたのですが、そのときに痛感したのがお金のことでした。3人で会社を起こすとして、年間のランニングに2000万円はかかることを知り、これは無理だと(苦笑)。美大時代、大勢を集めて作ったときの苦い経験もあります。調整が必要なのは分かっていても、ひたすら頭を下げる毎日で、好きなものを楽しく作りたかったはずが、まったく楽しくなかったんです。そういう集団制作が性に合わない性格なんだと思います。それであればと、おはじき、まごつきを誘って立ち上げたのがHurray!です。2人は別に仕事を持ちながら協力してくれて、今はHurray!一本でやってみたいという言葉をもらっています。フリーランスの集まりなので、僕らに興味を持ってくださった方がいたらぜひコンタクト取っていただきたいですね。

Hurray!のおはじきさん
Hurray!のおはじきさん


Hurray!のまごつきさん
Hurray!のまごつきさん


――今後の制作について、ゆくゆくTVアニメのような仕事をしたいという気持ちはありますか?

ぽぷりか:映像作品で自分の考えたものを誰かに届けたいという気持ちが強く、それができるのであればアニメでも撮影でも構わないですが、じゃあ、TVシリーズの制作を目指すかというと、それはやりたいことから外れていて、今はそういう気持ちはありません。それに、もしTVアニメで監督のお話をいただいたとしても、僕とHurray!が生きない、生かせないことが多いと思います。毎クールの数ある作品の中に埋もれるもったいないものになるだろうなと思っていて、それであれば今の時代だからこそできる作品を考えたいです。

――具体的なイメージはありますか?

ぽぷりか:やっぱり今回のようなSNSを利用した作品ですね。ツイッターで流れてくる漫画を読んでいるとき、この形すごくいいなと思うんですよ。昔は毎週雑誌を買って読んでましたが、そういう時の「読むぞ!」という感覚とは違う。ツイートを眺めていたら、「あ、この話、続きが出たんだ」ってなる緩い感じ。現実にいる人と、漫画のキャラが同列にいる感覚というか、どこかの誰かの今を緩く見ているようなもので、そういう感覚で今みんなが共有しやすい、観てもらいやすい形で作品を作り、送り出していきたいと思います。

『あなたから聴く物語』は「ZOWA」をはじめとした動画共有サイト、SNS上で全10話が公開されています。

オリジナルショートアニメ『あなたから聴く物語』が好評配信中
オリジナルショートアニメ『あなたから聴く物語』が好評配信中(C) EISYS / ZOWA / CatchyStuck / あなたから聴く物語 Project


【取材・文:鈴木康道】

■あなたから聴く物語
ジャンル:ASMRを盛り込んだオムニバスショートアニメーション
声の出演:雨崎まい
制作:映像制作チーム・Hurray!
企画・音響制作:ZOWA(株式会社エイシス)

リンク:「あなたから聴く物語」公式サイト
    「ZOWA」公式サイト
    「YouTube」公式サイト
    「ニコニコ動画」公式サイト

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