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梅津泰臣が手掛けた「それでも町は廻っている」のオープニング映像の大ファンだという「幸腹グラフィティ」原作者の川井マコト。この度、ついに念願かなって、その2人の対談が実現した。いろいろと聞きたいことがあったという川井だったが、気がつけば梅津がインタビュアーとなって、川井に根掘り葉掘り。絵を描く者同士ならではの会話が繰り広げられた。
川井:オープニングをつくってくださってありがとうございます。アニメーターさんが描く、キャラクターが立体的になる感じが好きで。今回も、カメラワークがある中で、くるくるとまわるリョウがすばらしかったです。
梅津:自分の描いたキャラクターが立体的になったり、動いたりするとうれしいものですか?
川井:うれしいです。私は、ぺったんこな絵を描いちゃうところがあって。どうしても、仕上がりがぺらぺらな印象になっちゃうんです。だから、画面にちょっとでも奥行きが感じられると興奮してしまうというか。それもあってオープニングはすごくうれしかったです。
梅津:僕は、原作の「幸腹グラフィティ」を読んだ時に「絵がすごく上手いな」と思ったんですよ。
川井:いえいえいえいえ!
梅津:ディティールが細かいし、立体感もありましたけどね。
川井:私は奥行きを出すのが得意ではないと思っていて。今はかなり手数を重ねて描いてなんとかしている感じがあるんです。アニメーターさんのような整理された線で奥行きを出されているのを見ると、すごいなあと。
梅津:みんな絵描きさんって自分の絵になんらかの不満を常に持っているものじゃないですか。
川井:ああ、わかります。
梅津:どこかに自分の絵に不満を宿命のように抱えてながら、生きていくものだと思いますよ。その不満が解消されないからこそ、ずっと続けていけるというところがあるんじゃないかな。「これで完成」という絵になっちゃうと、目標を失ってしまって「これでいいや」となると思うんです。
川井:たしかに、そうですね。目標がなくなると絵へのこだわりも停滞しちゃうので。すごく難しいです。
梅津:絵ってどんどん変わるでしょう。描いているうちにどんどん変わっていく。川井さんの絵も変わっていくんだろうなと思いました。
川井:そうですね。絵って変わるものですよね。絵の変化にあわせて作風も変わりますか?
梅津:作風はどうだろうね。
川井:すてきな作風の方には変わらないでほしいなって思うんですけど。
梅津:実写の監督さんだと作品ごとに変わっていく人がいっぱいいますよね。川井さんの場合は、きっと30代になるころに一度大きく変わるんじゃないですか。
川井:そうですか?今でも気を抜くとすぐに絵が変わってしまいそうになるんです。時代の流行りに合わせて変えるところと変えないところの意識って大事だなって思ってはいるんですけど。
梅津:時代を意識して、絵を変えることがあるんですか?
川井:そうですね。もともと私が描いていた絵と、今の絵は全然違うんです。4コマ漫画を描かせてもらうことになって変えた部分もあります。
梅津:それは編集さんのアドバイスで変えたの?
川井:いえ、今描いているジャンルでは、こっちのほうが幅広く見てもらえるだろうなと思って……。自分で変えた感じです。
梅津:それでちゃんと評価されているんだからいいですね。アニメの場合は、いろいろなタイプのキャラクターデザイナーがいるんです。今の流行りの旬の絵を描く人や、昔からのテイストを守っている人……いろいろなタイプがいて。その一方で、アニメのキャラクターデザイナーを職業としているような人だと、作品ごとにいろいろな絵を出さないといけないこともある。自分のオリジナル要素を入れつつ、流行にあわせてお客さんにアピールしていかないといけないんですよね。変えない人も、変える人も、どちらもお客さんの支持を得られればいいんですよ。そういえば、アフレコはご覧になっているんですか?
川井:アフレコは毎回お邪魔させていただいてます。
梅津:おもしろいでしょう(笑)。
川井:ああ、こうなっているんだなと。アニメの現場が少しわかりましたし、声だけでもおもしろいシーンはおもしろくなるんだなということがわかりました。声優さんたちは、指示が出るとその場ですぐにお芝居を変えてくださるので、本当にすごいなと。
梅津:そうですよね。アフレコを観ていると、本当にプロだなって思いますよね。でも、自分で声は?
川井:ええっ?私が声を出すってことですか?
梅津:そうそう。アフレコで。
川井:えっ……。ちょっとこういう性格なので、しゃべるのがあまり得意ではないので……!それはできる方にお願いするのがベストだと思うんです……!
梅津:僕はたまに声をやらされることがありますよ。監督やスタッフが現場でやらなきゃいけないときもあるんです。
川井:ううーん。第3話できりんが着ているシャツに、私の自画像のサボテンイラストを描いていただいて。もう、すごくうれしかったんです。出演はそれだけで満足しています(笑)。
梅津:そうやって自分の爪痕を残しておくと、一生の思い出になりますよ(笑)。【記事=WebNewtype】