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先日のアメリカのポップカルチャーの祭典「ニューヨーク・コミコン2015」で、KADOKAWAが公開したガメラ生誕50周年記念映像「GAMERA」が、さっそく世界で話題となっています。そして、同時に50周年記念・特設サイトもオープンし、あの大怪獣の「帰還」へ向けて、一大プロジェクトが動き始めていることも明らかとなりました。
そこでWebNewtypeでは、記念映像を手がけた石井克人監督にインタビューを敢行。圧巻の映像が完成するまでの軌跡を振り返ってもらいました。
――失礼ながら、石井監督と怪獣映画というのが結びつかなかったので、今回のニュースは意外でした。
石井:そうですか(笑)。でも僕は小さい頃から好きで、けっこう見ているんですよ。昭和の「ガメラ」も、平成の三部作も、「小さき勇者たち」も。特に好きなのは「ガメラ2 レギオン襲来」あたりかな? 自分でも怪獣映画を撮りたくて、企画を進めていたんです。それは巨大怪獣じゃないんですけどね。もっと小さいんだけど、とにかく強いという…。韓国で大ヒットした「グエムル~漢江の怪物~」('06年)っていうのがあったでしょう。あれに近い世界観をイメージしていたんですが、脚本がうまくまとまらず、その企画は具体化には至りませんでした。
――今回のお話は、どのような経緯で?
石井:去年の秋ごろだったか、KADOKAWAの井上(伸一郎=代表取締役専務)さん、プロデューサーの菊池(剛)くんたちに呼び出されたんです。何の話だろうと思ったら、実は「ガメラ」の50周年記念映像をつくって、2015年に「特撮展」のようなイベントで上映しようとしているんだけど、社内でなかなか企画が進まないということだったんですね。それで、いきなり「やりませんか?」と。4~5分の映像という話ではありましたけど「重いな」というのが正直な感想でした(笑)。少し考えて、これは大変そうだと思いつつも、こんな機会はめったにあるものじゃないですし、お引き受けすることにしたんです。
――そこから、作業はどのように進められたんですか?
石井:いつも僕の作品で美術をお願いしている都築(雄二)さんには、早い段階でご相談しました。都築さんはそれこそ「ゴジラ」シリーズや、その他の特撮映画にも関わってこられた方なので。それで方向性として打ち出したのは、4~5分は4~5分でも、ちゃんと一本の映画から見せ場を抜粋したような形の映像にしようということです。最初、井上さんのほうで用意していただいたプロットもあったんですが、僕としては「これはちょっと違うかな…」と。そうしたら「じゃあ、どうします?」と振られたんですよ(笑)。そんな流れで、実は完成した映像に出てくる怪獣やキャラクターについては、きっちり背景もつくってあるんです。マナフくんという少年とお父さんが逃げていて、お父さんがギャオスに食べられて、そこへガメラがやって来る…というのは、映画の冒頭3分ぐらいのイメージ。だから実際の映画で考えた場合は、ラスト1分の「10年後」のほうがメインです。もう、その時代は「怪獣が存在する」ことが前提になっていて、避難の方法なども決まっている…というような設定も考えてあります。
――ガメラやギャオス、そしてもう一匹、「10年後」に登場する怪獣のデザイン案も石井監督が描かれたとか。
石井:やはり怪獣映画をやるからには、もう一度「怪獣ってなんだ?」というところから勉強し直そうと思って、いろいろな作品を久しぶりに見ましたし、デザイナーさんたちの画集なんかも買い漁りました(笑)。その中ではやっぱり「ウルトラマン」('66年)などの怪獣デザインを手がけられた成田亨さんのものが素晴らしかったですね。デザインについては、とにかく最初の時点では先が見えなかったので、まずは自分でやってみるしかなかったというのもあるんです。怖さとか生物感にはこだわりましたね。当初は着ぐるみ中心で撮る方向性も考えていたんですが、井上さんのほうから「10年後」の怪獣を○○でいきたいという要望が出まして。その時点で、CGで表現することが確定しちゃったんですよ(笑)。僕としては「ガメラ3 邪神<イリス>覚醒」のイリスと似ちゃうかもしれないという危惧もあって、けっこう悩みました。
――では、監督ご自身は、着ぐるみやミニチュアなど従来の特撮テクニックを使うことも想定されていたんですね。
石井:もちろんです。ただ、中途半端にCGと併用すると、どうしても違和感が生じてしまうので、それは避けたかった。僕自身がいわゆるアナログ特撮が嫌いだというわけではないので、そこは誤解しないでほしいですね。むしろ好きですから(笑)。たとえば、前に撮った「山のあなた~徳市の恋~」('08年)という映画では、マーブリング・ファインアーツさんに頼んで、温泉街を丸ごとミニチュアで表現したりしているんです。<後編に続く>【取材・文=用田邦憲】