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ガメラ50周年映像を手がけた石井監督を直撃(後編)

アメリカのポップカルチャーの祭典「ニューヨーク・コミコン2015」で公開されるやいなや、全世界で話題沸騰中のガメラ生誕50周年記念映像「GAMERA」。それを手がけた石井克人監督へのインタビューの後編をお届けします。

今回は、CGに関する苦労や、キャスティングの裏話、そして気になる「今後」について聞きました。

――約4分強の映像の内容が見えてきて、そこからは?

石井:基本、長編の映画を撮る時と同じ段取りでした。いや、手間としては、より細かかったですね。絵コンテを描いて、ビデオコンテをつくって、CGが絡む部分はプレビズ(人物や背景などを簡易CGで表現したもの。完成映像のイメージについてのスタッフ間のコンセンサスをとるために有効な工程)をつくって…。だから、ほとんどアニメに近い作業でした。終わらないんじゃないかと思ったことが何度もありました(笑)。

――実作業の部分では、CGチームの動きが重要になりますね。

石井:これはもう、いろいろな会社に声をかけさせていただく形になりました。メインはオムニバス・ジャパンですね。美術監督をお願いした都築(雄二)さんが「宇宙兄弟」('12年)もやっていたので、あのチームがいいだろうと。僕も確かに「宇宙兄弟」のような、実直なテイストのCGがいいなと思いました。その他にも、かなりの会社や人に関わっていただいたんですが、僕や都築さんの要求が厳しくて(笑)。都築さんはとにかく「見た目」がそれらしく見えるだけではダメだと。きっちりパースを合わせたレイアウトをつくることにこだわっていました。これはCGチームとしては、かなり面倒な作業なんですね。僕自身、これまでCMをたくさん撮ってきましたし、CGを使った作品もたくさん見てきましたが、合成カットをつくる時に「あと少し頑張れば、かなりよくなるのに…」ということが、けっこうあるわけです。今回は、せっかくやるなら、その部分…実写とCGをなじませる作業を徹底的に頑張ってみようと思いました。

――舞台が六本木というのは、ちょっと珍しいような。

石井:そうなんですよ。美術部とCGチームが何度もロケハンに行きました。単純な話、六本木はCG向けのいいデータが今までなかったんです。これが渋谷だと、すでにいろいろな会社が使っているから、そのデータも使えたりするんですが…。少し前に話題になっていた「ULTRAMAN_n/a」も、渋谷だったでしょう(笑)。でも、こっちは六本木にしたことで、新鮮味が出ているかもしれませんね。

――マナフくんの父親役は、人気脚本家で俳優でもある宮藤官九郎さんです。

石井:まさか、この人が食べられるわけないだろう、というキャスティングにしたかったんです(笑)。設定としては「カルト本を出版しているような人」というイメージだったから、宮藤さんが合いそうだなって。それに宮藤さんなら、みんなが顔を知っていますからね。声をかけたら、快諾してくれました。自分の撮る映画の準備中だったのに(笑)。

――映像が完成してみて、率直なご感想は?

石井:会社というより「人」と仕事をしたという印象のほうが強いんです。このカットはこの人がつくっている、というように、みんなの「顔が見える」状態だった。だから、ちょっと今はまだ映像を客観視できないんですよ。どのカットにも愛着があって。怖いシーンでも、自分にとっては愛おしい(笑)。頑張ってくれたスタッフの顔が浮かんでくるんです…。でも、ここまでやってみて、こうすれば怪獣映画は撮れるんだなという手ごたえは感じましたね。

――プロジェクトの「今後」に期待してもいい、ということでよろしいですか?

石井:そうですね。ただ、今回の仕事を引き受けるにあたって、KADOKAWAの社訓を読んでいたら、「新しいもの、見たことのないものを創る」という意味のことが書かれてあったんです。だから、自分が撮る時は、そういう怪獣映画にしたいですね。【取材・文=用田邦憲】



リンク:ガメラ生誕50周年記念サイト
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