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4月の放送開始以来、抜きん出たノリと勢いで注目を集めている「宇宙パトロールルル子」。WebNewtypeでは連載企画としてキャストやスタッフに登場してもらって、さまざまな角度からその魅力に迫っています。
雨宮哲第2監督と半田修平総作画監督が登場している第3回。後半では、ルル子の意外にも(?)真面目な話など、とても興味深い話が繰り広げられました。
――先日行ったキャストインタビューでも雨宮さんの話題が出て盛り上がったのですが、かなり本作のテーマ的な部分を掘り下げて考えていらっしゃるとか。
雨宮:「普通」というのはどういうことなのか、真面目に考えました。まず、今石さんが企画の初期段階で「ルル子と転校生がキスしたら宇宙が出るんだよ」ということを言っていて、「全然意味がわからないなあ…」と思ったんです。
半田:確かに(笑)。
雨宮:でも、それを自分なりに解釈したのが第2話です。「男から見た13才の女の子の初恋」には、どのくらいのエネルギーがあるのか、それはたぶんビッグバンと同等じゃないかという発想から、ああいった形になりました。男と女の初恋の価値はそのくらい違うんじゃないか、ということをやりたかった。…ただ、どう考えたところで僕らは男だからわからない。
半田:企画会議は男しかいないですからね。
雨宮:そう、おっさんしかいない。
――あははは(笑)。
雨宮:でも、男の初恋よりは価値があると思うんです。例えば学校のクラスで、男の子だったらクラスの一番かわいい子とか身近な子を好きになると思うんですよ。でも、女の子は全員ボツもあり得るわけで。男には全員ボツとかないんで。
半田:男は好きになりやすいですからね。
雨宮:そう、そういうところが男女はイコールじゃないんだろうなと常々思っていて。それを第2話で提示してみました。それは第10話の「女子中学生の初恋には価値がある/ない」という話にも繋がっています。
――すごく真面目な話になっているんですね。
雨宮:いや、「ルル子」は基本真面目なんですよ。アウトプットがそう見えないだけで。でも、そこがいいところでもあるんですよね。絵に関しても同じで、すごく頑張って直してもそう見えなかったりする。単純な足し算だけでできてないところがまた面白いですね。
半田:海外に撒いた動画で崩れたものが色付いて戻ってきたりするんですけど、それを「面白い!」って通していたりしますからね。
――第7話でルル子が「ノヴァくんには誰が見えているの!?」とキョロキョロするシーンでは、ロングショットからズームされますが、アップになっても非常にユルい絵のままですよね(笑)。
半田:あれはワザとです。単純に拡大するだけだとドットが荒くなるので普通は描き直すんですけど、そのシーンは活かして。
雨宮:「修正する」という当たり前のルーチンに乗り切らないというのは、場面によっては大事だなと思いますね。
――第8話、第10話のシナリオをうえのきみこさんが担当されていますが、今石監督や若林さんのものと違うという感覚はありますか?
雨宮:全然違いますね。
半田:特に第10話は、脚本打ち合わせでみんなが散々言いたいことを言ったものを、次の週にはちゃんとまとめて持ってきて、しかも7分に収めていたので、「プロってすげえ!」と思いました。
雨宮:しかもセリフが面白い。
半田:10話でブラックホール星人が「ジャージの裾を自分で切るバカな中学生に」って悪口を言うんですけど、そんなあるあるネタよく出るもんだなあって(笑)。
雨宮:引き出しが多いんですよね。
――まだ絶賛制作中だと思いますが、振り返って苦労した話数はありますか?
半田:総作監という自分の立場からすると、これで苦労って言っちゃダメなのかなって思ってます。すしおさんとか米山(舞)さんとかは「キルラキル」とか「キズナイーバー」で30分ものをずーっと一人で見てたので。それこそ「バケモンだな」と思いますし、7分ものをやってるオレはこれで「苦労してる」って言っちゃダメなんだろうなって思って。言わないようにしてます。
雨宮:…うん。苦労は一切なかった。そういうことにしておきましょう。
――あははは(笑)。ありがとうございました!【取材・文=細川洋平】