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「机を叩きながらデザインしてました」今石監督&まごに聞く「宇宙パトロールルル子」【連載企画 第5弾(前編)】

4月に放送が始まり、ついに最終回を目前に控えたテレビアニメ「宇宙パトロールルル子」。WebNewtypeでは連載企画としてキャストやスタッフ陣が登場して、さまざまな角度からその魅力に迫ります。

最終回はいよいよ今石洋之監督とキャラクターデザインのまごさんが登場。前編では本作におけるまごさんの絵とは、という部分に迫ります。

――本作は以前から温めていた企画だったとうかがいました。

今石:僕自身はそうですね。前に1回出した企画で、その時は「キルラキル」に決まったので使わなかったんです。次にUSAT(ウルトラスーパーアニメタイム)の短編の話が来たので、ハマったらいいなと思って、また出しました。

――—「キルラキル」がTRIGGERの総力戦だった分、全体の制作カロリー的にも押さえたもので、という意図もあったのでしょうか。

今石:それもありますね。7〜8分枠のライトなテイストでできる企画としても考えていたし、現場としてもオリジナルアニメの「キズナイーバー」も同時に作っている中だったので、うまくハマったらなあということですね。

――「普通の女子中学生」といったキーワードは早い段階で決まっていたのでしょうか。

今石:短編になる前から考えていたことではあります。女の子ひとりのお仕事ものの中に多少恋愛が描けたらいいなあ、と。初恋がテーマだったり、恋愛ドラマをガチでやろうとは考えてませんでしたけど。

――その中でキャラクターデザインをまごさんにお願いするというアイデアはどのように出てきたのでしょうか?

今石:主人公はちゃんとかわいくて感情移入できるキャラクターにしたいなあというのがあったんです。それで若林と相談している内に、まごさんの名前が出てきて、という経緯だったと思います。まごさんは「キルラキル」でSDキャラなども描いてもらっていて、その感触もすごくよかったのでハマるんじゃないかということでお願いしました。

――TRIGGERの中にもキャラクターデザインをされる方がいる中で、まごさんを選んだというのは?

今石:やっぱりアニメーターだとアニメーターが描きやすい絵を描いちゃったり、のちのち動かす都合を考えて理路整然と描きすぎるというか。自分もそうなんですけど、そういう考えはデザインをする時に足かせになってしまうんですね。まごさんはちゃんとしたリアル目の絵も描ける人なんですけど、独特の面白いデザインで描いてくれる人なので、あえてこちらもデフォルメの強い絵柄を発注して――。

まご:それ、もうちょっと早く言ってほしかったですー!(笑)

今石:あ、まじすか!? ははははは(笑)。

まご:TRIGGERはアニメーター的にうまい人ばっかりじゃないですか。その中でなぜ私?と最初すごく悩んで、アニメの絵を勉強したり、アニメっぽくしなきゃいけないとか思いながら、家で机を「どうすればいいんだー!」ってドンドン叩いてました(笑)。作業が終わる頃、コヤマシゲトさんに「イラストレーターならではの感覚を求められているので、まごさんはそのままでいいんですよ」と言ってもらったんですけど、それももっと早く言ってもらえたらって思いました(笑)。

今石:ラフな絵だからこそかわいさを出せたり、自分たちからは出てこないものが欲しいというのがあったんです。確かにラフの時はよかったのに、クリンナップするとすごく固くなってるなあと思う時もありました。

まご:ネットでアニメの設定画の描き方を調べたり、線はちゃんと隙間がないように描いたり、輪郭線の太さも強弱付けないように一定の太さで、とか。なのにできあがったアニメでは太い輪郭線で強弱が思いっきり付いてたので「何だよー! いいのかよ!」って。最近はそれをマネして版権イラストは太い線で描いてます。

今石:線の太さは僕の指示じゃなくて総作画監督のアドリブなんです。2人いる総作画監督が2人とも線を太くする理屈が違って「バラバラだな〜」と思いつつ、どちらもいいのでそのまま採用してます。

――当時伝えてもらっていたら、もっとスムーズに行ったかも知れませんね。

まご:いや、でも悩んだ方が成長するのでよかったと思います!

今石:ポジティブですね(笑)。

――「キルラキル」ではかなり時間がかかったとうかがいましたが、キャラクターデザインはどのように進められていったのでしょうか。

まご:私の中では先ほどのような葛藤があったんですけど、出したものに対しては皆さん「あ、いいんじゃない?」って。早かったですね。そして気がついたら、もう違う話をしながらオモチャをガチャガチャいじってて(笑)。

今石:打ち合わせでは半分以上雑談してますからね。キャラクターのOKラインというのは「まごさんの絵」であることだったんですよ。実際、僕らが悩んでいるものが、まごさんが描いた瞬間に解決することは多かったんです。

――おお。

今石:40代のおっさんがどんなに頭をひねって考えても「中学生っぽい」とか「女の子っぽい」「かわいい」とかは、まあ出ないんですよね(笑)。でもストーリー上欲しい。それをまごさんがフッと描くと、その時点で解決しちゃうんです。まごさんということで機能していることは多かったです。

まご:長い間悩んで、自分の絵を変えてまで寄せようとしていたのに、意味がなかったんですね…。

今石:ありのままでよかったんですよ。

まご:もうちょっと早く言ってほしかった!(笑)<中編に続く>取材・文=細川洋平】

■今石洋之(いまいし・ひろゆき)
ガイナックスを経て、大塚雅彦、舛本和也らとTRIGGERを設立。アニメーターとしての人気、実力も非常に高い。主な監督作品に「天元突破グレンラガン」、「キルラキル」などがある

■まご
イラストレーター/漫画家。主な作品に「ともだちマグネット」(竹書房・全2巻)、「キルラキル/SDキャラ」などがある。現在WebNewtypeでエッセイ4コマ「潜入!TRIGGERトリガー24時」を連載中。twitterアカウントは@magodesu

リンク:アニメ「宇宙パトロールルル子」公式サイト
    アニメ「宇宙パトロールルル子」公式twitterアカウント・@s_p_luluco
    4コマ漫画「潜入! TRIGGER24時」
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