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“音楽”がアニメやゲーム作品の重要なファクターとなる時代を牽引する音楽クリエイター集団・Elements Garden(以下、エレガ)。代表・上松範康さんの元、さらなる未来に羽ばたかんとする若手音楽家たち――岩橋星実さん・藤永龍太郎さん・末益涼太さん・都丸椋太さん――は、今、何を考えているのでしょうか? 月刊Newtype2016年12月号では、いくつかのアニメ作品を元にした皆さんの思いを掲載しましたが、ここではさらに突っ込んで、そのパーソナルな部分を解き明かしていきましょう。
――そもそも、皆さんはどうしてエレガのメンバーになったのですか?
岩橋:音楽的な原点は高校の吹奏楽部です。そのせいもあってか、需要があるかわからないけど、いつか吹奏楽曲も作りたいなと思っているんです。その後バンド活動などやるうちに音楽を仕事にしたいと思うようになって、専門学校の先生がエレガの存在を教えてくれたんです。デモテープを送り、ありがたいことにご縁がありました。
藤永:僕は高校生の時にバンドを始めて、大学でレコード会社への就職を検討しているうちに、自分で音楽が作りたくなってしまって。それで専門学校に行ったら、エレガの先輩方の話を聞く機会があったんです。
岩橋:僕と菊田(大介)さんですね。優秀な後輩をつかまえられてよかった(笑)。
藤永:公募で合格して、入社させていただきました。
末益:僕は、むしろ音楽が嫌いだったんです。
一同:ええっ!?
末益:……なんですが、中学生の時、ビジュアル系にハマって人生観が変わり、ギター少年になり。専門学校2年の時、たまたま上松さんのTwitterで公募があることを知って……。面接の時、「ふわふわしてる」と言われたことを覚えています。
岩橋:なぜか履歴書の写真が極悪人だったんですよ。
都丸:僕は幼少の頃ピアノをやっていましたが、メタルにハマったりフュージョンに転んでみたり、いろんな音楽を聴くようになって自分も作ってみたいと思ったのがきっかけです。僕も専門学校2年の時に公募を知って受けました。
――ご自身の音楽づくりにおいて、こだわっていることは?
岩橋:“自分印”というのは、大切にしていることのひとつですね。僕はアニメよりゲームの曲を聴いて育っているので、ピコピコした音が好きなんです。そういう音づかいで、自分だけの曲を作っていると思います。
藤永:ハムバッカーと呼ばれるギターの音色が好きなんですが、皆はあまり使わないので、自然と“自分印”になっているかもしれません。あと、締め切りは多少破っても自分の納得するものを出したいです。多少、ですが(笑)。
末益:曲はライブで完成するものだと思っているので、お客さんの声やコールがどう入るかということも意識していますね。一度聞いたら頭の中でずっと回ってしまうような中毒性のある曲を心がけています。
都丸:その曲が作品中で流れているのが想像できるかどうか。これは(藤田)淳平さんからの受け売りなんですが、ムービーの資料をいただいている場合はそれに合わせて流してみます。
――上松さんや先輩たちとの印象深いエピソードを教えてください。
岩橋:まだアシスタントだった頃、「このまま作家を目指していいのかな」って、上松さんに相談したことがあるんです。そこで一緒に頑張ろうと背中を押してくれたのは、ぐっときましたね。そのおかげで今があります。
末益:同じように悩んだことがあるんですが、僕の場合は「よし、叙々苑に行こう」でした(笑)。「お前はまだできる」って言ってくださったのが、忘れられないです。
都丸:焼肉といえばなんですけど(笑)、翌日までに仕上げなきゃいけない仕事があって必死にやっていたら、淳平さんに無理やり焼肉に連れて行かれたんです。きっと、気分転換しろってことだったんだろうなって。それで一緒にスタジオに帰って手伝ってくださった夜のことは、忘れられません。
藤永:先輩とのそういう夜っていいよね。僕は、菊田さんと一緒にスタジオにこもりながら、遠くまで歩いてラーメンを食べに行ったりすることが多いです。好きな音楽の話をしたり、よくしていただいているなと思います。
岩橋:淳平さんと藤間(仁)さんって、切羽詰まった時ほどフラッと消えない?
藤永:岩橋さんだって、煮詰まってると、ダーツ行こうとか誘ってくれますよね。
岩橋:先輩のマネかな(笑)。インプットが足りないと出るものも出ないし、気分転換は大事ですよ。聴いている人にクスッとしてもらえるような遊び心も音楽家になくてはならないものかな、と思います。
――皆さんにとって上松さんはどんな存在なのでしょうか。
藤永:上松さんって、実は“音楽を作る”ということを考えていなくて、その曲を作った先にあるものを見ている気がします。どういう映像がつくのかとか、常に「お客さんにどう受け取ってほしいか」という結果から逆算して作っているのかな、と。
岩橋:確かに。
末益:一番最初にお会いした時、「父親だと思っていいよ」って言ってくださったんですよ。僕はバイトの経験すらなかったので、社会人としての常識も上松さんから教わりました。
都丸:僕は直に接する機会が少ないのですが、やっぱりカリスマ性があるなって。あまり気が進まないことも、上松さんが励ましてくれると、やる気になるんです。
岩橋:音楽はもちろん、人柄でも他人の人生に大きな影響を与えている存在だなと思います。僕らにとっては……族長?
一同:それだ(笑)!
――今回の座談会メンバーは、どんな関係性なんですか?
末益:上松さんが「父」なら、岩橋さんと藤永さんは「兄」。で、都丸は言うことを聞かない「弟」。
都丸:心外です!
藤永:岩橋さんは先輩だけど1歳しか違わないし、末益は年下だけど同期なので相談しやすいところもあるし。皆、ちょっと行き詰まった時に気軽に話せる相手ですね。
末益:「何か楽しいことある?」って(笑)。
岩橋:そうそう。皆に順番に聞いてまわって「楽しい話」を探す旅になったりするんだよね(笑)。
都丸:皆さん、悩んでいる時には解決案を出してくれる、頼りになる先輩方です。
岩橋:全員後輩ですが、尊敬もするし、刺激を受ける相手。彼らは僕と違ってガツガツしているし(笑)、自分に出せない部分が音に出ている時は、素直に「これ、どうやって作るの?」って聞いちゃいます。
藤永:まあ、ガツガツはしてるほうですね。僕は、常に自分が一番になりたいと思って生きていますから。
末益:同じく、です。
都丸:僕はどちらかというと岩橋さん寄りなんですが、ただ、周りの人のいいところを盗みたいという気持ちは強くもっていますね。
――では、そんな皆さんのライバルともいえる音楽家は?
岩橋:6月にエレガを脱退したエヴァン・コールです。年齢も一緒で、自分にはない刺激を与え続けてくれました。友人としても、これからの活躍に注目しています。
都丸:僕も、エヴァンさんです。アシスタントをさせていただく中でも、どんどん成長されているのが伝わってきたので、この先どこまでクオリティを上げていくんだろうなって。
岩橋 ちょっとエヴァン推しすぎじゃない(笑)!?
藤永:年齢も比較的近い、MONACAの田中秀和さんです。理論的に考え抜かれた音楽作りをされているのですが、それをキャッチーに表現されているところがスゴイなって。
末益:アイドル楽曲を多く手掛けられているヒャダインさんです。キャッチーなメロや飽きないアレンジで、本当にライブのことがよくわかっていらっしゃるんだなと思います
――日々のリフレッシュ方法や音楽以外の趣味はありますか?
岩橋:シューティング・ゲームが好きです。とあるマニアックなゲームで世界10位をとったことがあるんですが、そのランキングをひたすら上げることですね。
藤永:中学までやっていたこともあって、サッカーが好き。フットサルをやりたいんですが、エレガは皆体を動かさないから(笑)。
岩橋:でも、皆ビリヤードやダーツはするよね。
都丸:はい、皆とやるのは楽しいです。
藤永:ひとり、苦い顔してますよ。
岩橋:ああ、末益は……。
末益:でも、最近リフレッシュのためにもよく散歩してるんですよ!
藤永:散歩でドヤ顔(笑)。
都丸:僕は群馬出身で昔から田舎が好きなので、休みの日にはひとりで温泉につかったり、山のおいしい空気を吸って、しがらみを忘れています。
岩橋:しがらみとは僕たちのことか!?
藤永:今度、都丸が山の中にいる時を見計らって電話するね。
岩橋:次は都丸の番だな、上松さんの家に押しかけるの(笑)。
――最後に、好きな四字熟語や座右の銘を教えてください。
岩橋:「人生は一度きり」みたいな。僕はそんなにストイックな人間ではないので、プライベートも含めて人生を充実させてこそ、いい音楽が作れると思っています。偶然出会った音楽や人から聞いた話が何かに生かされることもあるから、ゲームのオフ会やクラブイベントにも行くようにしています。あくまでハンドルネームで、ですが(笑)。
都丸:僕もそれと同じ意味合いで「一期一会」。どんなに仕事で曲を作っても、家に帰ると「何か新しい音楽はないかな」ってネットを探したりするし、いろんな出会い、ひとつひとつの出来事を大事にしていきたいなって。
藤永:「行動を伴わない想像力はなんの意味ももたない」。チャップリンの言葉です。
末益:何それ、頭よさそう!
藤永:フワッと思うだけじゃなく、一歩踏み出すことで見えたり変わったりするものがある。失敗しても得られるものがあるから、ちょっとでも思ったことがあればやるべきだ、と。
末益:僕は、うーん……。
藤永:もう「焼肉定食」にしとけ。
末益:じゃあ「マイペース」で、お願いします。
岩橋:うんうん、等身大って大事なことだと思うよ!【撮影=山口宏之、文=キツカワトモ】