スタッフ

音楽クリエイターチーム・Elements Garden先輩音楽家座談会レポ

テクノからクラシックまであらゆるジャンルの楽曲で、ゲームやアニメの作品を彩っていく音楽クリエイター集団・Elements Garden(以下、エレガ)。ただ楽曲を提供するだけでなく、ここ数年は作品の原案や音楽プロデュースを手がけることで、作品そのものの方向性を形づくるようになりました。エレガの創立メンバー・藤田淳平さん、藤間仁さん、エレガの切り込み隊長・菊田大介さん、後輩たちのよき先輩・母里治樹さんの4人はいま何を考えているのでしょうか。月刊Newtype2017年1月号では、エレガという組織について語っていただきましたが、こちらでは“エレガ・サウンド”の魅力を語り合っていただきましょう。

――今回は数多くの作品を彩る“エレガ・サウンド”とは何かを伺っていきたいと思います。まず、皆さんから「これが“エレガ・サウンド”だと思う楽曲」を一曲教えてください。

藤間:漠然と思うのは、上松(範康・Elements Garden代表)が手がけた水樹奈々さんに提供した楽曲ですね。たとえば20代最後に手がけた「Orchestral Fantasia」(作曲:上松範康)とか、その次に挑んだ「NEXT ARCADIA」(作曲:上松範康)とか。曲ごとに次のステップはこっちへ行くんだと、自分たちの指針になる曲があるんです。もし、あとから年表をつくるとしたら、この楽曲が挙がるんじゃないかなと思います。

菊田:ターニングポイントになる曲と考えると、いくつもありますよね。それこそ「マジLOVE1000%」(作詞・作曲:上松範康、編曲:藤間仁)とか。「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズはエレガの転換期だったと思うし。

藤田:そこからジャンルをつくった、という感じがあるよね。

菊田:次へのステップにつながった曲ですよね。

藤田:「エレガ」の代表曲か……うーん、一曲に絞るのは難しいですね。それだけが「エレガ」という感じに受け取られるのも違うと思うし……。

――じゃあ、個人的にお好きな“エレガ・サウンド”は?

藤田:個人的に好きか……。みんながつくった曲をあらためて聴く機会ってなかなかないんです。僕は演奏者(キーボード)として茅原実里さんのバックバンドに参加していた時期があったのですが、そのとき菊田(大介)が手がけている「TERMINATED」を聴いて(弾いて)……「なるほどね!」と。間奏がすごく壮大で、そこだけ違う展開になったりする。よくこのバランスで曲が成り立っているなと。ライブでその曲が流れると、お客さんは大盛り上がりで。こういう正解もあるんだなと思いました。

菊田:個人的に好きなエレガ曲だと、僕は「戦姫絶唱シンフォギアGX」の「Glorious Break」ですね。アニメと挿入歌がシンクロして、すごくいいシーンになっていて。「これはいいな」と感動しました。曲単体でもいいんですけど、アニメとして見ると何倍にもよさがでるなと。

母里:僕が個人的に思い出深い曲は、エレガの楽曲ではないんですが、(藤田)淳平さんが編曲した「冒険でしょでしょ?」(編曲:藤田淳平)ですね。あれは衝撃を受けて、何回も聴いて。「ああ、ピアノのグリス(グリッサンド)がイイ!」って。当時、僕は高校生だったんですけどバンドで演奏しました。

藤田 うんうん。最近特に思うんですけど、やっぱり自分の引き出しって10代までに詰めたものででき上がっていて。いわゆる、その自分のルーツを20代以降に身に着けた知識でなんとかしているんじゃないかと。

――“エレガ・サウンド”の原点は10代のときに好きだった音楽?

菊田:そうなんですよね。はやっている音楽も聴いているんですけど、自分の根っこのところの趣味趣向は(10代のころと)変わっていないなと。

藤間:いま新しい曲を聴いても、理屈っぽくとらえてしまうんですよね。自然に聴いて、それを自分のものにしていくことはもうできない。なかなかルーツになりえないんです。

母里:小さい頃に聴いていた音楽から生まれるものが、自分にとっては感覚的にいいなと思うメロディなんですよね。でも、それは他の人にとってはもしかしたら、いいと思えないものかもしれない。そのギャップが面白いところでもあると思うんですけど。最近は音楽を理屈っぽく聴いてしまうことが多いので、「虫の音」とか「自然音」を聴いています(笑)。

藤田:「雨の音」とかね。

母里:気分転換的に、ですね。

――今のエレガではやっているのは「虫の音」!?

藤田:そんなことはないですけど(笑)。最近、嵐のニューアルバム(「Are You Happy?」)も買ったし、好きで聴いてはいるんです。でも、知識を吸い取ってやろうと考えている部分も半分くらいはあります。

菊田:そういう時期は定期的にありますよね。最新のサウンド感を聴いて、それを楽曲に取り入れてみるというのもやっています。

藤田:でも、流行を取り入れてみても、そのまま同じものにはならないんだよね。何も知らない10代のころだったら、完璧にコピーできたのかもしれないけど、いまは自分の中に「いいもの」が既にあるので。だけど流行もののエッセンスを知識として取り込んで、自分のものと組み合わせるというのは、ひとつのやり方だと思いますね。

菊田:楽曲の中に「自分の考えるいいもの」がないと、自分たちがつくる意味がないですからね。

――楽曲の担当者を決めるときは、やはりその人の得意なジャンルを考えたうえで発注するのですか。

藤間:実は「誰がこういうルーツをもっているから、こういうジャンルの曲を頼みましょう」というのもあまりなくて。ルーツとは違う楽曲も担当してもらいながら、みんながいいと思えるものをつくって、それをみんなで共有する。人が増えたこともあって、みんながつくったものを聴く機会が増えたのはいいですね。

菊田:お手本通りのサウンド感はすでに掘りつくされていると思うんです。だとしたら、それ(ルーツ)にとらわれないつくり方をしたほうが新しいものができる。聴く側もそのほうが面白いんじゃないかなという気がします。

――“エレガ・サウンド”は皆さんの知識の積み重ねとお手本(主流)にとらわれない気持ちにあると。

藤田:以前までは“エレガ・サウンド”とはどういうものかを意識していたころがありましたが、今年(2016年)また、新たに空気感が変わった感じがあるよね。

一同:うん、うん。

藤田:「エレガとはこうあるべきだ」という強制力がなくなったというか。

菊田:以前は「またエレガか」と言われることが気になっていたんですが、最近は気にならなくなりましたね。「エレガだよ! 文句ある?」って。

――“エレガ・サウンド”とはどんどん進化しているんですね。今後の“エレガ・サウンド”がどんなものになるのかが楽しみです。

藤田:これからも「音楽の文化」を大事にして、音楽をつくっていきたいなと思うんですね。キックの音ひとつにしても、80年代の音色、90年代の音色があるわけで、それを無視したつくり方もできると思うのですが、その文化を理解して曲をつくることで共感できる人を増やせると思うんです。例えば、90年代風のメロディとキックを組み合わせることで親和性が生まれるというような……そういう音楽づくりをしていきたい。僕もここ数年でようやくそういう曲づくりができるようになってきたのかなと思います。

【写真=西田航(WATAROCK)、文=志田英邦】

■プロフィール
藤田淳平(ふじた・じゅんぺい)/エレガ創立メンバー。幼少頃から音楽教育を受け、豊富な知識を生かし、幅広いジャンルの楽曲を生み出す。「Dance with Devils」「BanG Dream!」で音楽プロデューサーを務める
藤間仁(ふじま・ひとし)/エレガ創立メンバー。南米へのギター留学を経験し、ギターアレンジや民族楽器を用いた楽曲に定評がある。水樹奈々「SCARLET KNIGHT」作・編曲、「Exterminate」編曲他
菊田大介(きくた・だいすけ)/初期より参加。ストリングスを取り入れたドラマチックな楽曲を得意とする。茅原実里をはじめ、数多くのアーティスト、作品への楽曲提供を行なう
母里治樹(もり・はるき)/2009年より参加。感情豊かなメロディメーカー。南里侑香「閃光のPRISONER」作曲、新田恵海「想像を超えた世界」作・編曲他

リンク:Elements Garden公式サイト
    twitter公式アカウント・@_elementsgarden
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