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©TRIGGER・今石洋之/NPSG製作委員会
――約15年ぶりの新作ということになりました。そもそも制作はどんなふうに始まったんでしょうか。
若林 すでにいろんなところで取り上げられていることですが、スタジオカラーさんに協力いただいて、TRIGGERが「Panty & Stocking with Garterbelt(以下、パンスト)」の原作権を取得しました。実を言えば、当初は「グッズを作ろうかな」くらいに考えていたんですが、今石(洋之)監督はやっぱり、手に入れたらすぐに使いたい人で(笑)。なので、原作権が取得できたら、すぐに「作ろう」ということになったんです。なので、僕らが考えていた以上に、早いタイミングで新作の制作が決まった感じですね。
――監督はかなり乗り気だったんですね。
若林 今石監督からすると、シリアスで真面目な作品が続いていた感じがあったんです。今石監督は「天元突破グレンラガン」の後に「パンスト」、「キルラキル」の後は「宇宙パトロールルル子」……というふうに、おふざけアリな作品とストレートな作品を交互に作ってきたんですが、「プロメア」の後が「スターウォーズ:ビジョンズ」で、その次が「サイバーパンク:エッジランナーズ」と、真面目な作品が3本続いて。それで、精神が崩壊しかかっていたんです(笑)。なので、次は「パンスト」を作りたい、と。
――溜まっていたフラストレーションを吐き出したい(笑)。若林さんは旧作にも中核スタッフとして参加していましたが、制作が始まってみて、いかがでしたか?
若林 「パンスト」はもともと「続編を作り続けたい企画」として考えていた企画なんです。それこそ「シーズン5だろうがシーズン10だろうが、劇場版だろうが、永久に作り続けられるでしょう」みたいな気持ちで立ち上げた企画でした。しかも新作の話が影も形もなかった頃から、今石監督やコヤマ(シゲト)さんと「次の『パンスト』には、こういう話を入れたい」という話をずっとしていたんですね。なので、制作が決まったときにはもうすでに、やりたいことがちょっとずつ溜まっていた状態だったんです。だから、新作の制作が決まったときは当然、嬉しかったんですが、とはいえ想定よりも動き出しが早かったので、現場作業がはじまった当初はそこに自分の気持ちを乗せるのが大変でした(笑)
――一方の☆Takuさんは?
☆Taku 旧作は、僕にとってほぼ初めてのアニメのサウンドトラックだったんです。しかも当時はあまり時間もなくて、若手の子たちにいっぱい参加してもらったうえで、僕がそれを監修する……みたいな部分が多かったんですね。でも今回はできる限り、自分で手を動かしたい。というのも、旧作が素晴らしかったのに加えて、僕自身、サウンドトラックの経験が増えてきて「もっとできるな」と思っていたんです。あと今回、若さん(※若林の愛称)と話す機会が多くて……。そういえば、夜中によく話してましたよね。
若林 そうですね。夜中の1時とか2時くらいにLINEでメッセージしたり、電話したり。それで「もうちょっと、ここにこういう音が欲しいんです」とか、結構、細かくやり取りさせてもらえました。
☆Taku これだけ密に話しながら進められた現場は、日本でも珍しいんじゃないかと思いますね。それこそ曲ができる前は「どんなニュアンスですか」って話をして、完成した後もできるだけ絵に合うように調整をして。じつは最初のミーティングのときから、「絵に合わせられるなら、合わせたい」という話をしていたんです。若さんたちは「そんなことまで頼んじゃって、いいんですか!?」みたいな感じだったんですけど、「いやいや、僕がやりたいので」と。
©TRIGGER・今石洋之/NPSG製作委員会
――多くの作品では、曲が完成したらあとは音響のスタッフにお任せになることが多いですが、それはかなり珍しいケースですね。
☆Taku 劇伴って、作品を際立たせるのにすごく重要なポジションだと思いますし、そのためにとことん話し合えたのは、すごくよかったと思います。あとプライベートで観ている作品がわりと近くて、話が早かったというのもありますよね?
若林 それはあるかもしれないですね。「あの映画の、こういうイメージで」とか「あの時代のあの曲の音が欲しいんです」とか。
☆Taku ほかにも「海外ドラマのこういうシーンだよね」みたいな。
若林 そうですね。お互いに「それ知らないですね」みたいなことがなく、スムーズにやり取りができた。そこは本当にやりやすかったと思います。
――共通のリファレンスがあったのも、大きかった。完成した作品を拝見すると、音がゴージャズというか派手で、あと歌モノがすごく多い印象があります。
若林 まず大前提として、旧作の曲をすべて使おうと考えていたんです。旧作の曲に加えて、今回用にTakuさんに新曲を作ってもらおう、と。なので、もし旧作の曲が使えなかったとしたら、またちょっと違う感じになったのかもしれないですね。
☆Taku でも若さん、じつは旧作より今回のほうが曲数多いんですよ(笑)。
若林 たしかに(笑)。そもそもボーカル曲が、ボーカルありのバージョンとそのインストゥルメンタル・バージョンが絶対に欲しい、というお願いをしていたので、それだけで2曲分になる(笑)。
☆Taku ただ第1話の編集を観たときに、曲数が多くなるのも当然だな、とも思ったんです。これは、曲がいっぱい必要になるわけだ、と。
――それこそずーっと曲が流れ続けているような作りになっていますよね。
若林 第1話に関しては、我慢できなくて、最初から主題歌級の曲をかけまくっちゃいました(笑)。
☆Taku ド頭から行ってしまえ、と(笑)。
若林 僕も今石さんと同じで、「使える」と思ったら我慢できないんです(笑)。
☆Taku それこそTikTokで「××な曲10選」とかを観ているような感じで、ポンポン曲が変わっていく(笑)。しかもそれがすごくいい感じに、クイックに畳みかけるようにミックスされてて。そうするとやっぱり、気持ちも上がるんですよ(笑)。すごく気持ちよくカタルシスまで持っていってもらえて、めっちゃいいDJがプレイしてる、みたいな感じがありました。
若林 それを聞いて、ホッとしました(笑)。やっぱり曲を作っている人に「ここでこの曲をこんなふうに使うのか……」と思われるのが、一番悲しいので。そこはつねにドキドキするポイントですね。
☆Taku 「ここにこの曲をハメるんだ!」みたいな驚きもあって、おお、なるほど!と。
若林 いつかイベントとかで、細かく選曲の話をしたいですね(笑)。
☆Taku でも本当に、テレビシリーズとは思えないくらい、いろいろと詰め込んでますよね。旧作もスゴかったけど、完成してきたものを観て、間違いなくパワーアップしているなって感じました。そういえば、若さんは今回、サウンドトラックの中でどの曲を一番聴きました?
若林 ちょっと先なんですけど、自分が脚本まで担当してるエピソード用の曲は、めちゃくちゃ聴き込みました。あとはやっぱりオープニング。あの曲は結構、いろんな場面で使わせてもらっているんですが、特にロングバージョンのほうは、めちゃくちゃ聴きました。
☆Taku もともとは30秒なんですよね。
若林 そう。元は30秒なんですけど、劇中でも使いたいので、フルコーラス作ってもらえませんか、とオーダーをして(笑)。
☆Taku なので今回は、まずフルコーラスを作ってから、短くしています(笑)。歌ってくれてるのが、AshleyちゃんとE.V.Pちゃんっていうラッパーなんですけど、2人の雰囲気がちょうどパンティとストッキングみたいな感じで。
若林 もともと、女性ボーカルでパンティとストッキングが歌っている感じになるといいな、っていう感じでオーダーしたんですよね。
©TRIGGER・今石洋之/NPSG製作委員会
☆Taku 振り返ると、構想を固めるのに一番苦労したのは、もしかするとオープニングかもしれない。最初の頃は「旧作のオープニングをカバーしましょうか」みたいな話もあって。
若林 そうそう。「あれを女性ボーカルに変えるパターンはどうでしょう」みたいなことを言ってたんですよね。
☆Taku あとは子供に歌わせてみるのはどうだろう、とか。いろいろアイデアを出し合ってたんですけど「ちょっと違うな」という話になって。あと、若さんたちはきっとチアリーダーっぽいノリが好きだろうな、というのがあって。「ハイスクール・ミュージカル」みたいな雰囲気にできないかなと思って、今の形になったんですよね。
若林 最高でしたね(笑)デモを聴いて、一発で「そうそう、コレコレ!」って(笑)。個人的には旧作のオープニングの、あのインパクトを超えられるかな?という危惧が、ちょっとあったんですけど……。
☆Taku たしかに。同じ方向性で、あれを超えるのは難しいなって思ったんですよね。じゃあ、全然違うアプローチしかないなと。
若林 個人的には、新しいオープニング曲は別ベクトルで旧作のオープニングを超えられたと思ってます。よりアップデートされた感じがある、というか。
☆Taku 今回の「New」にすごく合ってますよね。……そういえば、どうして「2」じゃなかったんですか?
若林 やっぱり「2」ってつけちゃうと、続きっぽい印象になっちゃうじゃないですか。それこそ「シーズン1を観なきゃダメなのかな」と思われてしまいかねないし、ワクワクしない。言い方を変えると、お客さんが驚いたりワクワクする気持ちを奪いたくないな、という思いがあって。
☆Taku そうだったんですね!
若林 それで悩みに悩んで、最終的に「New」にしました。あとはやっぱりν(ニュー)ガンダムとかカッコイイじゃないですか。……というのは、ウソですけど(笑)。
☆Taku あのガンダムは「New」じゃないですし(笑)。他のタイトル候補はあったんですか?
若林 長いサブタイトル――例えば「〜なんとかの翼〜」とかつけて、パンストらしくない敢えてちょっとダサくする、みたいな案もありました(笑)。ただ、今石監督やコヤマさんたちと話して、やっぱり「New」がいいんじゃないかなと。シンプルだし読みやすいし、タイトルの頭にひとつ、単語が足されてるっていうのも、新しくなったことが伝わりやすいかな、と。
☆Taku なるほど、なるほど。
若林 あと「2」じゃくて「New」というのがストーリー的にも大事なキーワードにもなっていたりするので、そのあたりもシリーズを通して楽みにしてもらえると。
【文・構成:宮昌太朗】
☆発売中の月刊ニュータイプ2025年8月号ではこちらの話題とはまた別の切り口の対談を掲載! こちらもお楽しみに。そして次号ニュータイプ2025年9月号では、あの3人の座談会を掲載します。そちらもお楽しみに!
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