迫力のあるバトルシーンと美しい作画で、放送スタートと同時に世界から注目を集めたTVアニメ「桃源暗鬼」。監督を務める野中阿斗さんに、二クールに渡る制作を振り返って印象に残っているシーンと、制作が決定した「アニメ『桃源暗鬼』~日光・華厳の滝編~」の抱負を語っていただきました。
――第二クール全二十四話の放送が終わりました。第一クール・京都編と第二クール・練馬編を通して、特に力を入れたシーンはどこですか?
野中 力を入れたというか、力を入れざるを得なかったのが、第二十三話「友よ」の一ノ瀬四季と桃寺神門のバトルシーンです。銃を1丁しか出せない四季に対して、神門は6丁の銃を同時に出すことができます。単に弾を打つだけでなく、銃を床や壁に突き刺して移動したり、さらに銃を増やして連射したりします。さらにビルの側面で戦うので、重力の影響も含めて戦闘を組み立てる必要がありました。そこに覚醒した四季の炎鬼の能力も加わるので、これまでのアクション作画と3Dでやってきたバトル映像のノウハウの「集大成」というか、すべてを出し切る感覚がありました。
――第二クールの後半はバトルの連続で見ごたえがたっぷりでしたね。気に入っているシーンはありますか?
野中 たくさんありますが、特徴的なところでいうと、第十一話「ありがとう!」の唾切の回想シーンです。両親が桃太郎機関で働いていて、家にはほとんどいなかったという唾切には家族の思い出が特になく、他人への興味を失っていました。その唾切が、真中の家に毎日連れて行かれ、真中とその妻と娘といっしょにご飯を食べるようになったことで、家族のよさみたいなものに気づき、心境が変わるという重要なところでした。そこでテーブルにおいしそうな料理が並べられたシーンがあったのですが、その料理の表現がすごくよかった。サバの味噌煮がポンと置かれたシーンでしたが、表現をおろそかにしておらず、テクスチャーを重ねて味噌のいい照り具合が表現されていて、本当においしそうだったんです。ラッシュの映像を見たときに「この絵いいな」と感じて。登場人物の過去のエピソードが入るシーンがあるのですが、四季だけでなく登場する多くのキャラクターが、何気ない日常を突然、理不尽に奪われた悲しみや苦しみを抱えています。その日常のなかにある料理が、きちんとおいしそうに描かれていたことによって、見ている人にも「家庭の温かさ」が伝り、それが奪われた際の思いや苦しみも強調できたと思います。
――食事はみんなが日常的にやることなので身近な事柄ですし、生活感を感じやすいですね。
野中 日常と戦闘のギャップが大きければ大きいほど、戦いの無常さみたいなのが出てくるのが「桃源暗鬼」という作品の特徴だと思っています。例えば、戦闘中の唾切の表情の変化も重要な要素のひとつ。ベースは絵コンテでコントロールしていますが、キャラクターの本当に細かい表情は、演出家さんと原画さんの腕にかかっています。原作を読み込んで、感情の流れをくみ取って表情を描ける人に、重要なシーンをお任せしています。バトル全体はCGも多く使いつつ、キャラクターの表情は作画で描いていくというハイブリッド方式が、うまくいっていると思います。
――苦労したシーンはどこですか?
野中 第二十話「怒VS怒」の矢颪碇VS桃角桜介の空中戦です。矢颪自身は作画なのですが、羽根はCGで制作しています。羽ばたくだけでも大変なのですが、戦闘で負傷して羽根が落ちたり、翼がねじられたりと動きが複雑で、作画とCGの動きをきちんとシンクロさせるのがかなり難しかったです。CG監督や演出家さんたちが、本当に苦労して制作してくれました。次の第二十一話「パーフェクトof運勢」の無陀野無人VS桃華月詠も、同じく苦労しました。月詠の能力は、タロットカードの絵を具現化させるというものですが、夜空や戦車、鎧の騎士に猛獣といろんなモノを出すんです。1話のなかで違う質感のものがたくさん出るので、単純に作業が大変でした(笑)。
――「桃源暗鬼」はNetflixでグローバルTOP5入り、日本国内ランキング1位を記録するなど、配信で大きな反響を呼んでいます。その反響をどのように感じていますか?
野中 皇后崎迅役の西山宏太朗さんとフランスで行なわれたJapan Expoに参加しましたが、原作漫画のファンや声優さんのファンの皆さんがたくさん来場してくださって、改めて「桃源暗鬼」の人気を肌で感じました。また、アニメーションで本作に初めて触れたという人の意見をSNSで読んでいます。そうやってこの作品を好きな人が増えて、桃源暗鬼がますます盛り上がっていったら、ありがたいなという気持ちです。
――「アニメ『桃源暗鬼』~日光・華厳の滝編~の制作も決定しました。抱負をお聞かせください。
野中 ご視聴と応援ありがとうございます。「アニメ『桃源暗鬼』~日光・華厳の滝編~」は、物語が展開する場所がかなりユニークです。制作陣も別の挑戦が必要になってきますし、新たな表現や作品の魅力、おもしろさを伝えられる映像をつくりたいと思っています。新しいキャラクターも登場しますので、楽しみにしていてください。
【取材・文/ナカムラミナコ】
■TVアニメ「桃源暗鬼」
●Blu-ray第四巻1月28日(水)発売
Ⓒ漆原侑来(秋田書店)/桃源暗鬼製作委員会
リンク:TVアニメ「桃源暗鬼」公式サイト
TVアニメ「桃源暗鬼」公式X(Twitter)・@tougenanki_anm