スタッフ

筆の乗ったキャラクターが続々!の現場裏とは——「KILLTUBE」栗林和明×しまぐち ニケ対談

©CHOCOLATE/KILLTUBE


とある理由により、現代まで江戸時代が続いている日本。そんな世界には、厳しい身分制度が敷かれていたが、動画配信によって下剋上することができるシステムが存在して——? そんな世界観を舞台に、下剋上をめざす少年の姿を描く劇場長編「KILLTUBE」。気鋭のエンタメ企業・CHOCOLATE Inc.所属のプランナー・栗林和明が初めてアニメ監督を務める本作は、脚本チームのひとりに「超かぐや姫!」の夏生さえり、助監督に「ネガポジアングラー」の上村泰、キャラクター設定協力に「オモコロチャンネル」でも話題のARuFaらが参加。2026年中完成をめざして、日々制作が続けられています。
さらに本作は、今年6月に開催される「第50回アヌシー国際アニメーション映画祭」にて、コンペティションとならんで高い注目を集める部門「Work in Progress」部門にも選出! そんな注目作「KILLTUBE」について、今回は栗林監督と、TOOBOE「心臓」「錠剤」や星街すいせい「ビビデバ」MVでも知られ、本作のキャラクターデザイン・演出として参加しているしまぐち ニケさんにインタビュー。魅力的なキャラクターの創造方法についてお話を伺いました。


——しまぐちさんが「KILLTUBE」に参加された経緯をお教えください。
栗林 しまぐちくんと(本作にも演出として参加している)Biviくんのユニット「擬態するメタ」に僕が注目していたことが始まりです。特にTOOBOE「心臓」「錠剤」MVはキャラクターデザインが特徴的で、「KILLTUBE」がめざしたいデフォルメ感やエッジの効かせ方にマッチしているように感じ、お声がけしました。
しまぐち 確かに、最初にお話をうかがったとき、自分のデザインがとても合いそうな内容だと思いましたけど(笑)。そもそも「擬態するメタ」は作品ごとにデザインの方向性を変えるユニットなんです。なので、その都度企画の概要に沿ったキャラクターをめざして設定画を描いています。「心臓」「錠剤」はカートゥーンの文脈を踏まえつつ、日本らしさを足したデザインを目指していたんですが、そこを評価していただいていたのですね。

——キャラクターデザインをしまぐちさんにお願いすることになってから、栗林監督は何かオーダーは出されたのでしょうか?
栗林 あらかじめ、いちキャラクターにつき数人のイラストレーターさんへ最小限の設定を渡して、さまざまなデザインを描いていただいていたんです。そのデザインをしまぐちくんにお送りしたんですが、その時点では脚本作業も序盤でしたし、ARuFaさんによる設定資料も存在しておらず。なので、送ったデザインは参考資料として、かなり独自の解釈を含めてもいいと伝えていた気がします。
しまぐち たとえば、武蔵の甲冑は僕がかってに着けたものでしたね。でも、そうやって気分を乗せて描けたのは、栗林さんの指示が明確だったからです。「このキャラクターのここがいいよね!」とあらかじめ作られていたデザイン画にコメントしてくださったので、そのことばをヒントに描くことができました。
栗林 武蔵や菊千代、玲央のデザインはほとんど一発で決まりましたよね。原型となるイラストがあるとはいえ、しまぐちくんのオリジナリティがかなり詰め込まれていて、奇跡的なデザインになったと思っています。


武蔵のデザイン案 ©CHOCOLATE/KILLTUBE


菊地代のデザイン案 ©CHOCOLATE/KILLTUBE


玲央のデザイン案 ©CHOCOLATE/KILLTUBE


——メインとなる3人について、それぞれ栗林監督が気に入っているポイントをうかがいたいです。
栗林 まず、武蔵はシルエットのユニークさですね。ズボンを脱がすまで振り切っている大胆さが鮮やかだなと。また、犬に育てられた設定があるからこそ、犬耳がついたバンダナを着けてくれたところにも惹かれました。
しまぐち 「KILLTUBE」の世界なら、ありきたりなデザインでは負けてしまうと思ったんです。なので、ズボンを脱がせるまで思い切ったことをしようと考えたんですよね。犬耳は……手癖かもしれませんが(笑)。
栗林 菊千代は、チャラくて悪そうにも見えるけれど、切れ者であることも一瞬で分かるデザインのよさがありますよね。さらに、服にこだわりをもつしまぐちくんならではの美的感覚が菊千代のファッションに表われていると思います。
しまぐち ファッションデザイナーの方に案を出していただき、そこからストリートの要素を抽出していったんですよね。ちなみに、完成稿ではスカジャンを着用している菊千代ですが、最初はロングコートだったはずです。
栗林 玲央は金髪で可憐だけど、ジャージとサンダル姿というギャップが天才だと感じました。
しまぐち キャラクターのバックグラウンドをデザインから想起させたかったんですよね。玲央はジャージやサンダルもそうですが、髪の毛を結ぶのがめんどくさいから垂れ下がっている……といった具合に、生活感を醸し出すことを意識してデザインしていた記憶があります。
栗林 この3人の他にもいろんなキャラクターを、しまぐちくんにはデザインしてもらっていて……。
しまぐち 一瞬しか登場しないキャラクターもいますけど、それでもその人物のバックグラウンドを連想させられるようなデザインをめざして描いています。相撲取りがベースであればつっぱりで攻撃できるようてのひらに放電器を仕込んだり、元気っぽさをどこかから醸してみたり……とアイデアを詰め込みまくっているんです。なので、公開された暁には、数秒しか出ないキャラクターまで注目してほしいですね。

——キャラクターデザインの一方で、しまぐちさんは演出としても本作にてその腕を振るわれています。
しまぐち 今振り返ると、序盤は演出として作品に対する距離感を間違えていて、自分が担当していないパートまで口を出してしまったなと反省しているんです。自分が監督を務める作品でしか演出をしてこなかったことが災いして、この作品をおもしろくしたいという思いが空回りしていたなと。でも、栗林さんはそういった意見も受け入れてくださったので、とてもありがたかったです。
栗林 そう言えば、しまぐちくんがとあるシーンの流れについてめちゃくちゃ脚本チームと議論していたことがあったんです。Slack上で「ここのシーンはこうした方がいいんじゃないか」と理由と共に食い下がってくれて。本当は僕と脚本チームは別の案が最善だろうと考えていたのですが、しまぐちくん案を取り入れたらよりおもしろくなったんですよね。なので、そのパッションがあってこちらこそうれしかったです(笑)。
しまぐち STUDIO DOTOUは、メインでないスタッフのアイデアも栗林監督が拾ってくれるので、とても楽しい雰囲気に感じますね。

——さて、そんなキャラクターデザイン作業を振り返られた、率直なお気持ちをお教えください。
しまぐち これまで、僕はキャラクターをデザインすることに自信がなかったんです。でも、栗林さんがほめてくださったおかげで、一層キャラクターデザイナーを名のる自信がつきました。まだまだ演出の作業も残っているので、より成長できるように頑張っていこうと思います。
栗林 しまぐちくんが参加してくれたことで、より「KILLTUBE」という作品に厚みが出たと思っています。そんな作品をより分厚く、ワクワクし続けられるものにしていくことが今後の目標です。先ほどしまぐちくんが触れたようなモブキャラクターであっても二次創作を作りたくなるような魅力に満ちあふれている作品をめざして、これからも全力を尽くします!

【取材・文:太田祥暉】


■劇場アニメ「KILLTUBE」
●2026年完成予定

スタッフ:企画・監督…栗林和明/助監督…上村泰/脚本…夏生さえり、竹林亮、徳山武昇/キャラクターデザイン…しまぐちニケ/コンテ・演出…志賀匠、しまぐちニケ、後藤雅人、山田遼志、Bivi/世界設定協力…氏田雄介/キャラクター設定・台詞協力…ARuFa/コンセプトアートディレクター…澤井富士彦/CGスーパーバイザー…溝口結城/CGアニメーションスーパーバイザー…竹野智史/CGアニメーションサブディレクター…金子大祐/テクニカルディレクター…岡田博幸/キャラクターモデリングスーパーバイザー…北野修平/リグスーパーバイザー…向井真史/背景モデリングスーパーバイザー…一瀬隼/背景リードモデラー…関野公紀/CGエフェクトスーパーバイザー…小松泰/ショットスーパーバイザー…高橋護/VFXスーパーバイザー…太田貴寛/グラフィックデザイナー…吉田雅崇/エディター…小林穣/プロダクションエディター…須田悠斗/音楽監督…マツザカタクミ/音楽…大木嵩雄/音楽プロデューサー…成川沙世子/音響監督…小泉紀介/音響制作…dugout/アニメーションプロデューサー…野田楓子、島田研一、佐藤大洋、中塚南緒、神山あい/ラインプロデューサー…赤川樹里亜、浦松秀伍/プロダクションマネージャー…角田竜大、新井凌、佐藤光、和田堀哲也、北倉晴子/プロデューサー…三輪靖史、小山直紀、永井千晴、藤村香耶音、武富陵一郎/宣伝プロデューサー…藤村香耶音/宣伝・ 公式SNS…倉上穂/宣伝…田中詩織/宣伝企画…石倉一誠、富永敬、高橋祐司/アートディレクター…関川卓也/PRグローバルマーケティング…山田七海/制作…STUDIO DOTOU

キャスト:武蔵…塚田悠衣/菊千代…河西健吾/玲央…佐倉綾音

リンク:劇場アニメ「KILLTUBE」公式サイト
    「KILLTUBE」公式X・@KILLTUBEJP

この記事をシェアする!

筆の乗ったキャラクターが続々!の現場裏とは——「KILLTUBE」栗林和明×しまぐち ニケ対談(画像1/0

MAGAZINES

雑誌
月刊ニュータイプ2026年5月号
月刊ニュータイプ
2026年5月号
2026年04月10日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype
  • HOME /
  • レポート /
  • スタッフ /
  • 筆の乗ったキャラクターが続々!の現場裏とは——「KILLTUBE」栗林和明×しまぐち ニケ対談 /