舞台

ふたりだけの特別な関係性を舞台の上で表現できるように――『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』カヲル役・尾上左近&シンジ役・上村吉太朗スペシャル対談

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 30周年を迎えた『エヴァンゲリオン』が日本伝統芸能・歌舞伎が奇跡のコラボレーション! 『エヴァンゲリオン』シリーズの30周年を祝うフェスイベント「EVANGELION:30+; 30th ANNIVERSARY OF EVANGELION」(以下、エヴァフェス)にて『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』が世界初公開されることになりました。この『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』に主演されるのは尾上左近さん。そして出演に上村吉太朗さんです。渚カヲルを尾上左近さんが、碇シンジを上村吉太朗さんが演じます。長い歌舞伎の伝統を背負う若いおふたりは『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』にどのように挑まれるのでしょうか。じっくりとお話を伺いました。


写真右より、渚カヲル役・尾上左近さん、碇シンジ役・上村吉太朗さん


――30周年を迎える『エヴァンゲリオン』シリーズが日本伝統芸能・歌舞伎とコラボレーションすることになりました。尾上左近さんと上村吉太朗さんは、『エヴァ』シリーズにどんな印象をいだかれていますか。
吉太朗 僕は(『新世紀エヴァンゲリオン』の)世代ではなくて、幼少期にアニメも漫画も見ていなかったんです。コロナ禍になって、ようやく配信でアニメを見始めたという感じなんです。だから、エヴァンゲリオンや碇シンジという名前や有名なセリフや印象的なシーンはもちろん存じていたんですが、今回の『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』のお話を伺ってから作品を勉強させてもらいました。
左近 僕はもともとアニメや漫画が好きでさまざまな作品に触れてきたのですが、『エヴァンゲリオン』は不勉強でした。もちろん日本のアニメーション作品の代表格であるとは知っていたので、最初にこの演目が発表されたときに「どの兄さんがやるんだろう」と発表を楽しみにしていたんです。そうしたら、「渚カヲル役を左近さんにお願いします」と言われて、責任重大だと思いましたね。

――『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』で左近さんは渚カヲル、吉太朗さんは碇シンジを演じられます。歌舞伎俳優として、キャラクターをどのように演じていかれるおつもりでしょうか。
吉太朗 歌舞伎にはいろいろな型があるものです。自分たちはその型を真似することから入って、自分の中に落とし込んでいき、役を演じることになる。元の型を忠実に敬意を込めて演じていかなくてはいけないんです。今回、『エヴァンゲリオン』シリーズを歌舞伎舞台化することになりましたが、『エヴァ』の型はとても複雑だなと感じていました。世界観が壮大で、世界を変えていく物語でありながら、碇シンジくんの成長記録でもある。彼の中にはいろいろな葛藤があって、自分の気持ちを制御できない。自分の気持ちをうまくことばにできないもどかしい気持ちや、感情の御し方がわからない辛さもある。シンジくんの気持ちは、誰もがわかるところがあり、自分の人生に置き換えることができる。大人になるための成長を描いていると思います。『エヴァ』のシンジくんとカヲルくんは、これまでアニメ以外で演じられたことがないキャラクターであり、2.5次元化されたこともないわけなので。これからどう演じていくか楽しみでした。
左近 まずTVシリーズを観たんですが、最初に驚いたのはカヲルくんが出てこない(笑)。最後の最後に出てきたら、あっという間に退場してしまう。



――そうなんです。渚カヲルはTVシリーズでは第弐拾四話「最後のシ者」に登場するキャラクターです。
左近 そう。でもそれこそが伝説だなって思いました。たった一度の出番だけで、アニメーションの二枚目の美少年の頂点に一瞬で君臨して、ここまで熱狂的に支持されている。本当に伝説のキャラクターなんだなと。歌舞伎にもさまざまな色男、二枚目がいますが、アニメーションの中で伝説となっているカヲルくんを自分が演じさせていただくということにプレッシャーを感じました。

――渚カヲルに対してどのようにアプローチされるのでしょうか。
左近 ただ個人的には、カヲルくんのようなキャラクターはとても好きですし、白髪赤目はわりと癖(へき)なので。ぜひやりたいなと。制作の段階から、衣裳も含めていっしょに考えたいと申し出させていただきまして。衣裳打ち合わせにも同席して、歌舞伎としておかしくはならないように、二次元の歌舞伎のかたちとして落とし込んでいく。歌舞伎としてカヲルくんをつくり上げていくのはとても楽しかったです。これから衣裳合わせや化粧について打ち合わせになるのですが、歌舞伎ですから白塗りになるつもりです。そこにカラコンを挑戦してみたいなと。
吉太朗 赤目のカラコン!? 初めてするの?
左近 初めてです。今回は配信も行われる予定なので……。
吉太朗 そうか、配信で撮影されるとなると、カメラで顔がアップになるからね。
左近 舞台から観るだけでなく、映像だとアップで見えるでしょうから、細部までこだわりたいなと思っています。

――すでに稽古はお進めになっていると思いますが、普段臨まれている歌舞伎との違いはありますか?
左近 僕は吉太朗さんと歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』でもご一緒させていただき、初めてゲーム原作の歌舞伎を経験したんです。そのときにゲーム原作の新作歌舞伎であろうと、やはり根本には歌舞伎があるということを認識しました。新作歌舞伎に挑むたびに、古典の大切さを感じています。今回は舞踊劇として振り付けがあるんですが、手の動きや置き場所は日ごろ歌舞伎の型を意識していないとすぐにはできない。そこは難しいところでもあるけれど大事なことだなと思っています。
吉太朗 違いといえば、今回音楽がすごく特殊で、洋の楽器をほぼ使っていません。三味線とかお箏とか琵琶とか尺八といった歴史のある和楽器を使って、歌舞伎でも使われているような演奏で「エヴァ」シリーズの世界観を表現しているところを楽しんでもらえたらと思います。いわゆる雅楽にあわせて、歌舞伎俳優だけでなく、舞踊家やアクロバットの人たちが舞うので、見た目はすごく派手なものになるんじゃないかなと楽しみにしています。もちろん古典的な歌舞伎の表現もたくさん入っているので、そこでシンジとカヲルのふたりをどのように見せていくかがとても楽しみですね。
左近 今回は『エヴァンゲリオン』シリーズという長く複雑な作品をぎゅっとまとめた作品になると思うのですが、大事なのはカヲルくんとシンジくんの物語であることだと思っています。カヲルくんとシンジくんはすごく特別な存在なので、この歌舞伎という軸がある中で表現するのはとても難しい挑戦だと感じています。BOY MEETS BOYになりすぎないように、なおかつふたりだけの特別な関係性を舞台の上で表現できるように。とくにふたりが出会うシーンは印象的で、今回はモチーフにした場面もあると思います。ふたりが一瞬で特別な関係になることを、歌舞伎では「見初め」というんですけど、そこを練り込んで『エヴァ』シリーズが好きなお客様にもわかりやすく伝えられるようにしていきたいなと思っています。



――吉太朗さんは、左近さんが演じられる渚カヲルにどんな印象を抱かれていますか?
吉太朗 いやあ、もうカヲルくんそのものですよね。左近さんとは何度か共演させていただいているんですが、初めてお会いしたときのことを今でも覚えています。歌舞伎座の4階にある稽古場の控室だったと思うんですが、そこに入ってきたときの左近さんはカヲルくんのような不思議な子で。今回で3回目の共演なんですが、いまだにどういう子なのかわからない、ミステリアスなところがあるんです。カヲルくんはそういうミステリアスさがあるから、シンジくんが気になってしようがないわけで。僕らもそういうところはこれから左近さんとつくりあげていきたいです。

――左近さんは、吉太朗さんが演じる碇シンジにどんな印象を抱かれているのでしょうか。
左近 吉太朗さんは、もうシンジくんですね。
吉太朗 ありがとうございます。
左近 よく「逃げちゃ駄目だ」だって言ってるし。
吉太朗 いやいや、どうですかね(笑)。
左近 吉太朗さんは甘えたくなるような独特な雰囲気をもっていらして。僕の父のお弟子さんの尾上緑さんに似た空気をもっていらっしゃる。とてもお話しやすいですし、気を遣いすぎることなく接することができる方なんです。もっと仲良くなりたいと思っているんですけど、今回はカヲルくんとシンジくんの関係なので。なるべくお話しすぎないように。一定の距離を置いて、本番に臨もうと思っています。



――『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』は「エヴァフェス」の最終日である2月23日に世界初披露されます。本番に向けて、意気込みをお聞かせください。
吉太朗 『エヴァンゲリオン』シリーズ30周年をお祝いする大きなフェスで『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』という新しいエンタテインメントが生まれることがとても素晴らしいことだと思います。日本を背負っている作品のひとつである『エヴァ』と歌舞伎が融合することは、歌舞伎界にとってターニングポイントになる大きな作品になるんじゃないかと思います。エヴァファンにも、歌舞伎ファンにも、どちらのお客さんにも楽しんでいただける作品になるように、ふたりで頑張っていきたいと思います。
左近 『エヴァ』シリーズへのリスペクトをもってみんなで頑張っていきたいと思います。「エヴァフェス」のステージにおける最後の演目ですから、期待しているファンの方も多いと思います。この大きな演目を自分と吉太朗さんを引き受けた以上は、期待に応えられるものを作りたいと思っています。ニコニコ超会議で「今昔饗宴千本桜」が生まれ、歌舞伎座で演じられる興業になったように、この『歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン』もより大きな興行につながるようなものにしていきたいと思っています。「エヴァフェス」にいらっしゃる方は『エヴァ』シリーズが好きな方とでしょうから、そういう方にも歌舞伎を通じて『エヴァ』を感じてもらって、歌舞伎っておもしろいねと知っていただきたいと思っています。

【取材・文/志田英邦、写真/大川晋児(atelier Sirius)】


尾上左近さん、上村吉太朗さん、ありがとうございました!


「EVANGELION:30+; 30th ANNIVERSARY OF EVANGELION」
2026年2月21日(土)~2月23日(月・祝)【3日間】
於:横浜アリーナ
(〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜3-10)
チケット:発売中
https://30th.evangelion.jp/fes

「歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン」
2026年2月23日(月・祝) 17:30~(予定)
※生中継配信あり!※
本イベントの生中継配信が決定!
もちろんこの「歌舞伎エヴァ」も観られるぞ。
詳しくはイベント公式サイト「生中継配信」のページへ
https://30th.evangelion.jp/fes/ppv

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