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「盾の勇者の成り上がり」監督・阿保孝雄×キャラクターデザイン・諏訪真弘 対談【後編】「実はかわいらしいマイン!? 出ない話数は少し寂しい」

現在、好評放送中のTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。

第10回は、阿保孝雄監督とキャラクターデザインの諏訪真弘さんにお話をうかがいました。後編では、フィーロ、三勇者、そしてマインのキャラクターデザインについて語っていただきます。

――前編に引き続き、各キャラクターについてうかがえればと思います。フィーロのキャラクターデザインについて、監督からオーダーしたことなどはありますか?

阿保 強いオーダーというわけではないのですが、自分がチェックさせていただくときに重視したのは、同じ小さな女の子でも少女時代のラフタリアとは役割も個性も全然違うというところですね。過去にトラウマを持ったラフタリアと異なり、フィーロはまだ何色にも染まっていない天真爛漫な女の子なので、そのイメージを大切にしていただきました。

諏訪 フィーロはとにかくかわいらしく描けたらいいなというのが一番でした。表情についても、監督がおっしゃったように素直さや無邪気さを大切にしています。

――原作イラストの弥南せいらさんと相談されたことなどはありますか?

諏訪 髪型について、普通にくしゃくしゃとなったウェーブヘアではなく、外側に膨らんだゆるいウェーブヘアであるというアドバイスをいただきました。後ろ姿がわかりやすいのですが、全体的に台形のシルエットになっているんです。

――鳥形態も諏訪さんがデザインされたのでしょうか?

諏訪 そうですね。ちゃんと鳥に見えるけれど、表情はどこかマンガ調で豊かな表情が出せたらいいなと思いました。それから、シルエットに関してはもふもふ感をしっかり出しつつ、あまり線が汚く見えないように羽根のもこもこ(線)の量を全体的に少なくするようにしています。増やしすぎると雑多な感じが出て、あまり綺麗に見えないので、この調整には気を遣いました。

阿保 鳥の状態の作画については、自分は動物の描写がそれほど得意なタイプではないと認識しているので、各話で担当していただく演出さんや作監(作画監督)さんにお任せすることが多いです。その方なりの味付けでフィーロのかわいらしさを表現してくださいとお願いしています。

――鳥形態はCG使われていますよね。

阿保 そうですね。CGということで、最初はやや硬めの質感になるかもしれないという不安があったのですが、思った以上にかわいらしくやわらかいCGになりました。CGを担当してくださっているオレンジさんの力ですね。とても感謝しています。

――三勇者のキャラクターデザインについても聞かせていただきます。まずは元康のキャラクターデザインで意識したことはどんなことでしょうか?

諏訪 元康はキザでカッコつけで自信家なところをわかりやすく出すようにしています。同時に、フィーロとの絡みでは勝手に暴走して勝手に滑ることが多いので、コミカルな表情も多めに入れられたらな、と。勇者としての自信はたっぷりだけれど、まわりにはそう思われていないような感じですね。意外とかわいらしい奴なんです。

阿保 四聖勇者の中では表情が一番豊かですね。諏訪さんがおっしゃったように本人はキメ顔で言っているつもりでも、結果、コミカルなことになっていて。ストーリーが進むにつれて、いろんな表情を見せてくれるキャラクターです。

――続いて、錬については?

諏訪 錬は、ただただクールでカッコいい剣士というイメージですね。真面目なところや正義感の強そうな雰囲気も意識しました。

阿保 正統派の主人公という感じですよね。

諏訪 そうですね。主人公らしい主人公というキャラクターです。ただ、喜怒哀楽の幅は狭いので、表情に大きな変化がないというのが大きなポイントです。

阿保 錬に限らずですが、2クール目に入り三勇者のキャストさんたちがキャラクターの個性を掴まれて、お芝居にアドリブが入ることも増えました。1クール目から表情自体を変えたわけではありませんが、キャストさんのおかげで三勇者の個性が膨らんできたので、そういう意味では表情豊かに見えると思います。

――2クール目に入り、今後さらに三勇者の活躍が期待できそうですね。

阿保 1クール目は深くストーリーに関与しているわけではありませんでしたが、今後はこの世界の裏側には何があるのかと、自分たちで世界の真実を探り出す展開も出てきます。能動的にストーリーに関わってきますので、ぜひ楽しみにしていてください。

――では、三人目の樹についてはいかがでしょうか?

諏訪 彼もまた正義感の強い勇者ですが、顔立ちとしては女性を描いてるような感覚が強いですね。髪型もちょっとウェーブがかっていて、少女漫画の登場人物にいてもおかしくないようなイメージがあります。

阿保 中性的な王子さまという感じですよね。

諏訪 そうですね。小柄で顔立ちも幼いというのは意識しました。あとは学級委員長のような印象です(笑)。

阿保 四聖勇者の中では一番かわいらしさを含んでいるキャラクターなのですが、同時に性格としては元康や錬以上に正義感が強いので、その主張の強さ、我の強そうなところはデザインに落とし込んでいただきたいと考えていました。シナリオの段階でも彼なりの主張がわかるような場面をポイントで押さえていただいています。

――そして、もう一人伺いたいのが、マインです。“悪女感”がにじみ出ていて、登場するたびに強烈なインパクトを残しています。

諏訪 マインは……実は自分はあまり嫌いじゃないんですよ。それもあって、わりと彼女を描くときはかわいく描きたいと思う気持ちが前面に出てきて、かわいくなりがちになってしまうんです(笑)。

阿保 でも、第1話の冒頭などはヒロインかのような立ち振る舞いでしたから。実際にそのときのマインはかわいらしく描いてほしかったので、ラッシュチェックでちょっと違うかなと感じたところは諏訪さんにもリテイクをお願いしました。

諏訪 憎めないキャラクターですし、個人的にはすごく好きなキャラクターですね。出ない話数はちょっと寂しいくらいです。

阿保 同じく自分もそうですね。わりと気に入っているキャラクターです。少なからず彼女がストーリーを動かしている部分があるので、やっぱり出てこないとちょっと寂しいなと思ってしまいます。

――2クール目はさらなる活躍、暗躍が見られそうですね。

阿保 はい。尚文が第11、12話で活躍しましたが、それによって危機感を覚えたマインが本格的に動き出しますので、楽しみにしていてください。

――さて、物語は折り返し地点を迎えたわけですが、現在の手応えはいかがでしょうか?

阿保 自分のイメージしている「盾の勇者」のアニメ化、こうしたいと考えていたことがしっかり形になっている感覚はあって、それはやはりスタッフの皆さん、キャストの皆さんのおかげですね。なかなか難しい要求も多いと思うのですが、皆さん丁寧に対応してくださって、小説では出し切れないアニメーションならではの面白さが出せていると感じます。

諏訪 身も蓋もありませんが、本当に楽しい作品になっているなと感じます。描いているときはどういう感じになるのかいつもわからなくて、出来上がって初めてすごく楽しいと気付かされるんです。色がついて、音がついて、音楽がつくと全然違いますからね。

阿保 その感覚はわかります。

諏訪 特に「盾の勇者」は作業している時期と放送の時期が結構離れているので、放送を見て初めて気付くようなことが多くて。一視聴者として普通に楽しんでいる自分がいます。

阿保 なかなか手応えのないまま何本も制作してきたので、視聴者の方の反響をインターネットなどで読ませていただくと、すごく勇気づけられますね。

――では最後に、今後の放送の見どころを教えていただけますでしょうか。

諏訪 ひとつは、ますますたくましくなっていく尚文ですね。戦闘でもそれ以外でも、これからもどんどん活躍していきます。そして、もうひとつは尚文、ラフタリア、フィーロのチームワーク。ここが個人的に一番好きなポイントなので、そこに注目していただけたら嬉しいです。

阿保 2クール目に入って新しいキャラクターも登場し、今後、ますます群像劇感が強くなって映像も賑やかになっていきます。尚文は勇者としての覚悟を持ち、地位も獲得していきますが、それが新たな火種になったり、障害になったりしていくので、いかにそれを乗り越えていくのかを楽しんでいただけたら幸いです。

【取材・文:岩倉大輔】

■TVアニメ「盾の勇者の成り上がり」
放送:AT-X 毎週水曜22:00~(リピート放送有り)
   TOKYO MX 毎週水曜25:05~
   テレビ愛知 毎週水曜26:35~
   KBS京都 毎週水曜25:05~
   サンテレビ 毎週水曜25:30~
   TVQ九州放送 毎週水曜26:35~
   BS-11  毎週水曜25:30~
配信:ひかりTVにて毎週水曜23:30~ 独占先行配信 その他随時配信
スタッフ:原作…アネコユサギ(MFブックス「盾の勇者の成り上がり」/KADOKAWA刊)/原作イラスト…弥南せいら/監督…阿保孝雄/シリーズ構成…小柳啓伍/キャラクターデザイン・総作画監督…諏訪真弘/アニメーション制作…キネマシトラス
キャスト:岩谷尚文…石川界人/ラフタリア…瀬戸麻沙美/フィーロ…日高里菜/天木 錬…松岡禎丞/北村元康…高橋 信/川澄 樹…山谷祥生/メルティ…内田真礼

リンク:アニメ「盾の勇者の成り上がり」公式サイト
   公式Twitter・@shieldheroanime

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