『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』公開記念対談、鈴代紗弓と幸村恵理がTVシリーズを振り返り【前編】

劇場アニメ『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』が9月11日に公開されます。2019年1～3月に放送されたTVシリーズを再構成し、新規カットを加えた本作は、119分に目いっぱい女の子だけのパイロット集団・コトブキ飛行隊による空戦シーンをたっぷりと詰め込んだアクション映画です。その公開を記念してキリエ役の鈴代紗弓さんとエンマ役の幸村恵理さんによる対談を実施。前編ではTVシリーズに関する話を中心にお届けします。

――2月1日に発表されてから半年ほどを経て、いよいよ『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』が公開されます。まず今の率直なお気持ちをお聞かせください。

幸村　発表されてからあっと言う間でした。発表当時は「まだまだ先だ」という印象だったのに。今は「もう皆さんに届けられるんだ」という嬉しさと「ああ、ついに始まるんだ」という緊張感が一緒に襲って来ています。

鈴代　本当にあっと言う間だったよね。私は早く劇場で観たかったので、「やっと来た！」という嬉しさと、楽しみにしていたものが来てしまった寂しさも少しあります。

――ここからはTVシリーズを振り返ります。おふたりはTVアニメでセリフの多い役を演じるのは『荒野のコトブキ飛行隊』が初めてだったとのことですが、特に印象深いことはありますか？

鈴代　やっぱり最初のアフレコです。水島努監督の作品はテンポが速めだと言われますけど、それを一番感じたのが第1話で。決められた尺に収めるのに精一杯でした。

幸村　私も初めてのアフレコの時は、早口になってしまって「こんなに速く喋って、ちゃんと内容が伝わるかな？」と思ったんです。でもあのスピード感のおかげで作品にすごく没入できるんだと学べました。あと登場するキャラクターが多く、キャストは激しく入れ替わりながらマイク前に立たなきゃいけないので、そういったマイクワークの面でも成長できた作品でした。

鈴代　本当に人は多かったよね。一番人が多かったときなんかは30人くらいいて。

幸村　収録していたスタジオは結構広めなのに、スタジオ内の椅子が全部埋まって、立っている人もいたくらいでした。

鈴代　普通はAパートとBパートを別で録るんですけど、そのAパート内でも前半後半に分けてたしね。前半が終わったら監督が「じゃあ用がない人は出てくださいー」（水島監督のモノマネしながら）とマイク越しに伝えてくださってみんな笑ったり（笑）。楽しかったですね。

――TVシリーズで特にお気に入りのエピソードは？

幸村　どのエピソードというわけではないですが、私は作中に登場する女性が強く描かれている点が好きなんです。女の子たちが戦闘機に乗っている時点でそうですけど、イジツの世界を引っ張っていくユーリア議員が登場してからそれがより強調されたと思います。彼女やオウニ商会を引っ張るルゥルゥを見ていると同じ女性として尊敬できますし、力や勇気をもらえます。特にルゥルゥは、レオナに「自分にとって利益があることって何ですか？」と聞かれた時に「選択肢が豊富にあることよ」って答えるんですが、そのセリフが印象的でした。

鈴代　たくさんある好きな場面の中でも特に好きな場面を2つ挙げさせていただきます！

まずコトブキ飛行隊の6人のシーンだと、最後の戦いに向けて作戦を決めるところ。チカが「6つも頭があるんだから、超いいこと思いつくね」みたいなセリフからみんなの士気が上がって、いつもの「コトブキ飛行隊、一機入魂！」を言う流れが6人の絆が見られて素敵なんです。

――あれをチカが言うのがいいんですよね。

鈴代　そうなんですよ！ でも「キリエじゃないんかい！」みたいな思いも（笑）。

――その頃のキリエは大変でしたから。

鈴代　そうそう。あとコトブキ飛行隊以外のキャラクターのドラマも良って、リリコさんとジョニーのペアとか大好きだし、サネアツのルゥルゥに対して情けない感じとかも（笑）。ラストでナオミとアドルフォが結婚しそうな流れもいいですし。

――ちょうどフェルナンドがいて神父代わりになるところとか、大団円感があっていいですよね。

鈴代　「バカやアホやカスな時も……」ですよね。あのセリフは「あ、水島さんの作品だな」って感じます。

――おふたりはTVシリーズの先行上映会などでTVシリーズを劇場で観られた経験がありますが、その時の印象はいかがでしたか？

鈴代　「あれ？ これ劇場作品かな」って最初思いました（笑）

幸村　先行上映回のときはみんなで「劇場で観るのが1話だけなんてもったいない」「劇場で全話観たい」って言ってたしね。

鈴代　映像ももちろんすごいけど、とにかく音響のこだわり方が尋常じゃないんだよね。鳥肌が立ちました。

幸村　音響が素晴らしい環境だと、エンジン音だったり重低音がよく聞こえて。戦闘機好きは本当に鳥肌止まらないし、詳しくない方も「あ、凄い」と肌で感じられるはずです。

鈴代　とにかく説得力がある音でした。

――ちなみに、おふたりはこの作品に関わって戦闘機に詳しくなりましたか？

鈴代　少しは詳しくなりましたし、何かと気にかけるようになりましたね。尾翼とか、コックピットの中とかエンジンの動かし方とか、知れば知るほど戦闘機や飛行機はロマンが詰まっているなと思います。

幸村　私も、最初はイナーシャ・ハンドルとか単語を覚えるだけで精一杯でしたけど、知識が増えていくごとに「この戦闘機のフォルムのここがいいな」と感じたり、「どうしてエンマちゃんは雷電が嫌いなのか」みたいな細かいことまでわかったりして楽しくなってきましたね。

鈴代　キリエたちが飛行機に対して言ってる感覚がわかってきました。「丸っこくてかわいい」とか。そういうフェチ的な見方もできるんだなと。

幸村　無機物フェチになりそう（笑）。

――例えば飛行機がテレビに映ったり、空を飛んでいると……？

鈴代　見ます見ます。

幸村　代々木って飛行機が大きく見えるんですよ。だから余計見ちゃう。

鈴代　飛行機を見るとちょっと『コトブキ』のこと思い出します。あとキリエが好きなパンケーキを食べても。

幸村　（笑）。そうだよね。

鈴代　明らかにパンケーキを食べる数が増えたし。お気に入りのパンケーキ屋さんも見つけて、月に1回は行ってます。

幸村　(作中の重さの単位)パウンドが増えないようにしないと（笑）。私は元々紅茶が好きだったんですけど、お婆ちゃんからもらったティーカップセットはあまり使ってなかったんです。でも最近は家で紅茶を飲む時はそのカップを使って、エンマちゃんを気取ったりしていますね。

【取材・文：はるのおと】