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上映中にタブレットでコメンタリーも楽しめる!?『HELLO WORLD』『ANOTHER WORLD』一気見上映会

10月15日に新宿バルト9で、全国東宝系にて絶賛公開中のアニメ映画『HELLO WORLD』と、スピンオフアニメ『ANOTHER WORLD』(全3話)の一気見上映会&トークショー・イベントが開催されました。当日はまず『HELLO WORLD』本編を上映。その後で観客に配布されたタブレットの画面をセカンドスクリーンに、スタッフ&キャストによるビジュアルコメンタリー(映像解説動画)を楽しみつつ、スピンオフアニメ『ANOTHER WORLD』を劇場スクリーンで観賞するという上映会初となる試みがおこなわれ、その後に監督と音楽制作アーティストによるトークという流れでイベントは進行していくことになりました。

今回『HELLO WORLD』本編に続いて上映されたスピンオフアニメ『ANOTHER WORLD』は、伊藤智彦監督をクリエイティブ・スーパーバイザーに脚本を野﨑まどさん、キャラクターデザインを堀口悠紀子さん、キャストを北村匠海さん、浜辺美波さんといった映画同様のスタッフ&キャストで制作され、ひかりTVとdTVチャンネルで好評配信中のストーリー。主人公・堅書直実に接触してヒロインの少女・一行瑠璃を助けようと行動する10年後の未来から来た青年・ナオミが『HELLO WORLD』本編に至るまでの10年間の物語を3つの時間軸からなる全三部作として描いていきます。

スクリーンに第1話となる「Record 2027」の上映が始まると同時にタブレット画面でスタートしたビジュアルコメンタリーに登場したのはクリエイティブ・スーパーバイザーとして『ANOTHER WORLD』に参加した伊藤監督と武井克弘プロデューサー。大人ナオミの回想で作られている映像ということで画面の色味に気を遣ったことや、新規映像を追加しようといろいろ頑張ったこと、さらに作中で登場する『ガンバの大冒険』にまつわるマル秘ネタなどといった話題をそれぞれガッツリと語ってくれました。

続く第2話「Record 2032」ではこの2人に大学生時代のカタガキナオミを演じた松岡禎丞さんも加わってトークを展開。松岡さんは高校生の直実役・北村匠海さんと大人ナオミ役を演じた松坂桃李さんの間をつなぐ大学生時代のナオミを演じるということで「とんでもないぞ」と思ったとのこと。そう思いつつもアフレコでは松坂さんの演技から引き算していくかたちで大学生のナオミを演じたと解説してくれました。また「作品に漂う空気感が心地よく、没入感ある映像やストーリーと相まって永遠にこの世界観を体感していたいという気分になりました」と実際に映像を見たときの印象についてコメント。最後に監督やスタッフに向けて「素晴らしい経験をさせてもらいました」と感謝の言葉を語ってくれました。最終話となる第3話「Record 2036」は映像をたっぷりと楽しんで欲しいということもあってコメンタリーなしで上映されることに。スクリーンに映し出される青年ナオミの一途な思いと本編にリンクしながら進んでいくちょっとコミカルで切なさ溢れる物語に、客席からは上映後に大きな拍手がおくられていました。

イベント後半戦はトークショーということで伊藤監督と主題歌など作中の音楽を担当したロックバンドOKAMOTO'Sのメンバー4人と、上映会を見に来ていたというBRIAN SHINSEKAIさんがサプライズでステージに登壇。日本放送アナウンサーの吉田尚記さんを司会に、作品を音楽面から彩っていった主題歌や劇伴について、その制作秘話などが明らかにされていきます。

まず最初に話題になったのは『HELLO WORLD』の音楽制作にOKAMOTO'Sが関わることになった経緯について。伊藤監督と武井プロデューサーの間で今までと違うというアプローチで主題歌や劇伴の制作をしようとの話し合いがあり、その結果アニメ作品では一般的な劇伴作家ではなくOKAMOTO'Sが起用されることになったのですが、監督自ら制作チームとレコーディングスタジオで作業をしていたOKAMOTO'Sの元を訪れて音楽制作をオファーしたとのこと。そのときにOKAMOTO'Sのギターを担当するオカモトコウキさんは「すごく面白そうな作品だったし、新しいものを作ろうという熱意を感じてはいました」ということで参加しようと決めたものの、「まだ脚本だけといった段階で最終的にどうなるんだろうという不安はありました」と作品に参加した当時の思い出などを語ってくれました。

音楽制作にあたっては、OKAMOTO'Sのボーカル・オカモトショウさんが語ってくれたように「チームで分担して音楽をやれたら普通じゃない劇伴が出来るんじゃないか」ということで、豪華アーティストが集結した音楽プロジェクト「2027Sound」が結成されることになたっとのこと。そんなチームのメインメンバーとして音楽制作をしていくことになったOKAMOTO'Sのみなさんですが、初めての経験となる劇伴について、曲をピッタリの時間に収めて作るのがかなり大変だったと苦労話を披露。「あと1秒半短く」といった要求は楽曲を作る上でかなり難しい相談だったらしく、オカモトショウさんは「絵の方の時間を延ばしてくれればいいのにって思うときもありました(笑)」とぼやいていました。

また瑠璃が本棚の前の脚立から落ちそうになるシーンの劇伴について「瑠璃が落ちそうになってちょっと不安なんだけど、最終的にキャッチできて安心するような感じを全部入れてくれ」といった難しいオファーが伊藤監督からあったらしく、完成した音源を送ったところ「不安すぎるので、不安感減らし目で」と言われ、減らしたら「不安感が減りすぎたので、不安ちょい足しで」といったような細かい要望が繰り返し送られてきたといった当時のやりとりがあったことが語られることに。他にも制作が進んでいくにつれて、セリフが足されたりしてそのたびに微調整が必要になったらしく、「制作は大変だった」とメンバーそれぞれがコメント。しかし監督との細かいやりとりはかなり徹底して丁寧におこなわれたとのことで、オカモトショウさんは「メチャクチャ納得いくものに仕上がったなと思ってます」と笑顔を見せてくれました。

他にも制作秘話の一つとして一番冒頭の羽根が舞うシーンで音響スタッフかから「シュワーっていう音を足して欲しい」という話があり、OKAMOTO'Sのハマ・オカモトさんがベースの弦をひたすらこすっている音を入れていったといった裏話も。これは監督も初耳だったらしく、「はじまって5秒で必死に弦をこすっている音が流れるので恥ずかしくなっちゃって(笑)」と笑うハマ・オカモトさんの言葉に驚いた表情をみせていました。

またOKAMOTO'Sのドラム・オカモトレイジさんからのプッシュで「2027Sound」に参加したBRIAN SHINSEKAIさんは、ねじりパンを買う直実と瑠璃のシーンを担当することになり、「同じメロディを使って弱気な直実とずうずうしくて強気な瑠璃を同じメロディで表現して欲しい」とオファーを受けて劇伴を作ったというエピソードを披露。アレンジ違いで送ったところ監督からボツを食らい、それではとオファーを無視してメロディを変えて送ったところ、なぜかそれが採用されたらしく「結局どういうものを欲していたのか、今でも分からないんですけど(笑)」と首をひねりながら監督に訪ねる一幕に客席からは笑い声が。これには「申し訳ない」と監督も平謝り。「同じメロディがいいかなと思っていたら、ちょっと違う気もするなぁ」と思っていたところ、送られてきた劇伴がピッタリだったとのことでOKを出したとのことだが、実はこのシーンについてはOKAMOTO'Sが5回ほど曲を作ってみてダメ出しを食らい最終的にBRIAN SHINSEKAIさんに丸投げされた劇伴だったらしく「よく攻略したなぁと思いました」とメンバー全員感心しきり。BRIAN SHINSEKAIさんはこの劇伴について「自分でシーンを見返してみましたが、すごくいい対比になっていたと思います」と満足そうに語ってくれました。

さらにOKAMOTO'Sが担当した主題歌「新世界」についての解説も。この映画の音楽制作を手掛けて一番最初に作った曲らしく、他に何曲か別に作ってみたものの最終的に監督から「この主題歌がいい」とのコメントがあり主題歌に決まったとのこと。オカモトショウさんは劇場で始めて観賞したときに「一般のお客さんと一緒に劇場で見て、最後に『新世界』が流れたときにこの曲書いてよかったという気持ちになりました」と語ってくれました。ただデビュー10周年を記念した初の武道館ワンマンライブの2日後に主題歌のレコーディングがおこなわれたらしく、「最初翌日にって言われたんですが、バカなのかって思った(笑)」と収録秘話が語られると客席からは笑い声がわき起こっていました。

そんな「2027Sound」が手掛けた劇伴について伊藤監督は「こんなにたくさんのアーティストに参加してもらっていてバラバラな割には統一感が不思議とある感じがしているところが、この作品の音楽の特徴になっていていいなと思いました」と感慨深げなコメント。オカモトレイジさんは「攻めりゃいいんだったら、誰でも出来ると思います。ただ俺らじゃないと出来なかった攻め具合とほどよいポピュラリティが、映画を見たときに出来ているのが分かって、やったことが間違ってなかったなと再確認できてよかったです。」と自分たちが生み出した劇伴や主題歌について納得の表情で語ってくれました。

最後にMCからの「もう一回映画音楽をやってくれたとオファーがあればどうします?」との質問にオカモトショウさんからは「やります、絶対やりたいです」と前向きな回答が。さらにBRIAN SHINSEKAIさんからも同じく「メチャクチャやりたいです。すごい楽しかったです」との答えが出ると会場は大きな拍手に包まれました。伊藤監督も「次はいつSoundになるのかな?(笑)」との乗り気のようす。そんな和気あいあいとした雰囲気のまま、上映イベントは終了ということになりました。

【文・構成:すわみさお】

■HELLO WORLD
●全国東宝系にて公開中
リンク:「HELLO WORLD」公式サイト
    公式Twitter・@helloworld0920
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