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正解のない選択肢の先ある自分だけの物語! 「細田守監督作品と思考実験展」の体験レポート!


細田守監督の劇場最新作「果てしなきスカーレット」の公開を記念して、体験型リアルイベント「細田守作品と思考実験展」が、東京・渋谷にあるSHIBUYA TSUTAYAで2025年12月21日(日)まで開催中。今回はその体験レポートをお届けします。

没入型体験エンターテイメントを提供する株式会社NO MOREが2025年5月に開催し、チケット1万2000枚を完売、SNS総再生数400万回以上を記録するなど大きな反響を集めた「思考実験展」と、スタジオ地図の細田守監督作品がコラボレーションしたこのイベント。

「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」「未来のミライ」「竜とそばかすの姫」、そして「果てしなきスカーレット」といった細田守監督が手掛けてきた7作品の世界観の再現したエリアを巡りながら、登場人物たちが作中で直面した“選択・決断”を来場者自身が体験することができるようになっています。



イベント会場は「バケモノの子」の舞台にもなった渋谷。SHIBUYA TSUTAYAのエスカレーターを降りると、細田監督作品の名シーンが散りばめられた巨大なイベントパネルが参加者をお出迎え。体験所要時間は70分となかなかのボリューム。10分間隔で最大8人のグループを組んで各公演は進行していきます。遅刻厳禁なので開始時間20分前には会場で待機していた方がいいでしょう。イベントに必要なアイテムとして自分の名前(ペンネーム)を書いた名札と、それを首から提げるネームホルダー、そしてイベント中に配布される選択肢カードを収用するカードホルダーが配られると、いよいよ体験の始まりです。



最初に案内されたのは細田監督作品のポスターが壁に貼られた映画館のロビーのような空間です。ここでカウンターの中にいるチュートリアル担当のキャストから、イベントの目的が参加者自身が監督・主演となり、自分だけの物語を創り出すことだという説明が行われます。どうやら参加者はこの映画館を舞台に細田監督作品の世界を旅して、さまざまなシーンで展開される“正解のない問い”に答えながら、映画のフィルム(選択肢カード)を集めていくことになるようです。そうした公演の進行についての説明と合わせて、ここでは参加者同士での「一番好きな細田守作品は?」といった自己紹介なども行われました。好きな作品が一緒だと、同じ細田守監督ファンとしての連帯感も生まれていきます。



続いて通されたのは、物語への入り口となる世界で一つだけの小さな小さな映画館というスペース。ここで歴代細田守作品のダイジェスト映像を鑑賞した後に、案内人から「あなたの大切な人は?」と最初の選択を要求されることになります。「パートナー」や「父親」「母親」といった家族、「友達」や「仕事仲間」などが選べるのですが、その中で一番大切な人となると、なかなか選ぶことができません。

どうにか「パートナー」を選んだものの、さらに「大切にする方法とは?」ということも問われることになりました。多くの時間をそばで一緒に過ごす=「時間」や、プレゼントをする=「贈物」、嘘をつかない=「誠実」など、14もの選択肢の中から3つを選んでいくことになるのですが、「パートナー」との関係性を思い返しても、導き出した答えが正解なのかさっぱりわかりません。こうした選択を強いられるたびに、各参加者の出した回答についての解説を本人から聞けるのも面白いポイント。自分では導き出せない答えに感心したり、逆に「それってどうなの?」と疑問に思ったりと、まさに“思考実験”を楽しむことができます。



選んだ結果によってはルートの分岐もあったりします。今回は「サマーウォーズ」「未来のミライ」へのルートへと進んでみました。ここではなんと「サマーウォーズ」の健二の名ゼリフ「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!」を大声で叫びながら選択肢カードを手に取るといった、劇中の登場キャラクターと同じ気分での“決断”も体験可能。ここは恥ずかしがらずチャレンジしてもらいたいです。選択しなかった別ルートも、どんな展開が待っていたのか、ちょっぴり気になるところ。興味がある人は次はそっちを体験してみるのもいいかもしれません。



作品世界の空気感をそのまま体感できるエリアも見どころです。「時をかける少女」では高校の教室をセットで再現。告白されたキャストの三角関係の悩みを聞きながら、タイムリープで過去に戻ってやり直すか否かを選択していくことのですが、劇中に登場したギミックのひとつであるクルミが登場する一幕も。こうした印象的なアイテムがそこかしこに散りばめられているところも、ファンには嬉しいところ。さまざまなこだわりを交えながら、物語のワンシーンを思い起こさせるシチュエーションの中でキャストと会話をしていくことによって、作品世界への没入感はどんどん深まっていくことになります。



「バケモノの子」のエリアは、もちろん渋天街が舞台です。かつてこの渋天街で修行していた熊徹と九太の思い出を語ってくれるキャストのぶっきらぼうな語り口はバケモノらしい雰囲気満点。ただここまでくると、問われる選択は重いものばかり。中でも熊轍の生き様になぞらえた二者択一を突きつけられると、参加者も悩みまくってしまったのか、なかなか選択肢カードに手が伸びません。考え抜いた結果、一度決めた選択を撤回する参加者もいたりと、正解のない答えに自分自身で“決断”することの難しさを実感させられました。



最後のエリアは「果てしなきスカーレット」です。赤く燃える戦場のような光景が広げる中に現れた謎の旅人から問われるのは、物語のテーマのひとつとなっている「復讐」を果たすか否か。自分の人生をも左右するこの究極の選択にどういった答えを出すのか、劇中でのスカーレットと同じ決断を自分ならできるのか。限界まで悩んだ答えを提示したところで、体験は終了となりました。



ここからは用意されたQRコードを読み込み、スマホの専用フォームにこれまで手に入れてきた選択カードを打ち込んで、今回の旅の目的であった自分だけの物語を完成させていくことになります。全ての項目をチェックして完成したのは「影の実力者」というタイトルの映画でした。第一幕の「小さな映画館」から終幕の「現実への帰還」まで、全6部構成の「大切な人」への想いが綴られた細田守作品のエッセンス満載の自分だけのストーリーです。最後に映画のタイトルが書かれたカードもプレゼントされます。そこには「あなたと思考が似ているキャラクター」として、「サマーウォーズ」の佳主馬に似ているとの診断結果が書かれていました。正解です(笑)。



出口には細田監督のサインと、監督が体験した結果を記したボードが飾られていました。それを見ながら自身の体験結果との違いを比べてみるにも面白いかもしれません。

またイベント会場に併設された「グッズショップ」には、今回のイベント用に製作されたオリジナルグッズをはじめとした、細田守監督作品の各種アイテムを販売中。こちらのグッズショップはチケット未購入の方でも利用することができますので、ぜひお立ち寄りください。



細田守作品のファンにはたまらない、ここだけしか味わえない特別な体験を、ぜひ皆さんにも堪能してもらえたらと思います。

【取材・文/川畑剛】

細田守監督作品と思考実験展
https://shikoujikkenten.com/scarlet

<イベント名>
「果てしなきスカーレット」公開記念「細田守監督作品と思考実験展」

<コラボレーション作品>
「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」「未来のミライ」「竜とそばかすの姫」「果てしなきスカーレット」

<開催期間>
2025年11月21日(金)~12月21日(日)

<開催時間>
10:00~21:40
※最終公演は20:30スタート
※入場無料の物販コーナーへの最終入場は21:00まで

<定員>
1公演最大8名まで

<体験時間>
約70分間

<会場>
SHIBUYA TSUTAYA 地下1階「SHIBUYA IP SQUARE」
(〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町21-6 Q Front, B1F)

<公式サイト>
https://shikoujikkenten.com/scarlet

<チケット情報>
■チケット価格:3900円(税込)
■チケット販売サービス(プレイガイド)
【日テレゼロチケ】
https://l-tike.com/ntvzero/event/scarlet.html
【ローソンチケット】
https://l-tike.com/scarlet/

※日時指定券(10分ごとの日時指定)での販売となります。
※指定日時(各ご入場開始時間)の20分前にご来場ください。

<主催>
日本テレビ放送網、KADOKAWA、NO MORE

<制作>
NO MORE

<特別協力>
スタジオ地図有限責任事業組合/「果てしなきスカーレット」共同事業体(日本テレビ放送網/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント/KADOKAWA/東宝/スタジオ地図)

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