アニメ

「死亡遊戯で飯を食う。」上野壮大監督×幽鬼役・三浦千幸対談 「少女たちの生死をドライに描く」

衝撃の初回60分放送で幕を開けたTVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」。残酷な運命にあらがう少女・幽鬼の瞳は何を映すのか。
主演・三浦千幸さんと上野壮大監督が、美しくも冷徹な〝生存〟の記録を語り尽くす。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


――主人公・幽鬼を演じるにあたってのアプローチからお聞かせください。
三浦 オーディションの段階では、幽鬼というキャラクターが何を考えているのか、正直つかみ切れていませんでした。ただ、ビジュアルや原作の描写から「幽霊っぽさ」や「線の細さ」を感じていたので、そこを意識して演じました。幽鬼のことは、収録現場で上野監督や音響監督の小沼(則義)さんに導いていただいた部分が大きいですね。今回は特に「息」の演技を大切にしていたんです。幽鬼はささやき声に近い発声なので、声だけだとどうしても表現の幅が狭まってしまって。そのなかで感情を伝えるために、セリフの間の息遣いに意味を込めようと。ただ、ふだんの呼吸とはまったく違うので、アフレコ中は常に酸欠状態で……毎週「苦しい、つらい」と思いながらマイクに向かっていました(笑)。
上野 現場も特殊で、シーンごとに細かく切らず、わりと長回しで録っていくスタイルでしたからね。オンとオフの切り替えがなく、ずっと幽鬼としてそこにいつづけなければならないのは大変だったと思います。
三浦 そうなんです。でもだからこそ、うそのない感情が乗ったと思いますし、役者としての幅をむりやりこじ開けられたような現場でした。

――幽鬼のモノローグが、一人称(私)と三人称(幽鬼)で重なり合う「オッドモノローグ」という演出も非常に印象的でした。
上野 幽鬼という人物を考えたときに、この場にいる自分と、それを俯瞰しているもうひとりの自分がいるような感覚があったんです。それを表現するために、彼女のオッドアイにかけて、声も2つの視点を重ねてみようと。
三浦 あれは収録が本当に大変で……。最初は尺を合わせるために、先に録った1本目のモノローグを耳で聞きながら、2本目を録ったんですね。でも1本目の音声のなかに、直前に亡くなった青井のうめき声が入っていて。客観的な視点で淡々としゃべらなきゃいけなかったんですけど、それが心理的にすごくきつくて、「なんでこんな声を聞かせるんだ!」って思いながら演じていました(笑)。
上野 あれは三浦さんを追い詰めようとしたわけじゃなくて、完全にこちらのミスでした。でもそういった極限状態での演技が、フィルムに緊張感を与えてくれたのは間違いありません。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


――映像面についてもおうかがいします。本作はデスゲームでありながら静謐で、どこか絵画を見ているような雰囲気もありますね。
上野 原作を読んだときに、ドガの「踊り子」の絵を思い出したんです。当時のバレエダンサーって、華やかな舞台の裏で過酷な現実を生きていたらしくて。ドガはそれを劇的に描くだけではなく、練習風景や日常を淡々とスケッチしつづけたんですが、本作もそれと同様に、少女たちが命を散らす瞬間を劇的にあおるのではなく、カメラがその場に立ち会い、彼女たちがどう生きたのかを記録するような映像にしたかったんです。
三浦 完成した映像を見て、その「命のあっけなさ」に衝撃を受けました。第1話で青井や黒糖が亡くなるシーンも、すごくドライに描かれていて。幽鬼だけはそのあっけなさを知っているけれど、ほかの子たちは取り残されている。演じている私自身も、その空気感に圧倒されました。
上野 第1話のコンテは、最初はもっと寄りの画で劇的に描こうとしていたんです。でも「違うな」と思って、黒沢清監督の「CURE」などを参考に、日常のなかでふっと人が死ぬような、ミドルのルーズショットで撮る方向に修正しました。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


――第1話のラスト、金子を殺害した後のモノローグが圧巻でした。幽鬼の業のようなものを感じます。
三浦 最初、あそこはもっと淡々と演じていたんです。幽鬼はデスゲームのプロだし、そこは割り切っている子だと思っていたので。でも監督から「言い訳にしよう」というディレクションをいただいて。
上野 もともとの設計では淡々とやるつもりだったんですが、三浦さんが演じる幽鬼の愛嬌や心の揺れを見て、もっと人間味のある、感情のグラデーションが見えるシーンにできるんじゃないかと思ったんです。
三浦 なので、「言わずにはいられない。言って整理したい、解放したい」という気持ちで演じました。もし最初から感情的に演じるつもりでいたら、その前の金子への接し方ももっと計算高く、いやらしい優しさになっていたと思うんです。でもそうじゃなかったので、結果的に幽鬼という矛盾を抱えた存在をそのまま表現できたのかなと思います。
上野 あのシーンで、幽鬼というキャラクターの複雑さと魅力が伝わったと思います。彼女がただの冷徹なダークヒーローではなく、弱さも抱えた人間であることを感じてもらえたらうれしいですね。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


――第1話で特に印象に残っているシーンはありますか?
上野 僕は、幽鬼が金子の髪をドライヤーで乾かしてあげるシーンですね。金子がすがるようにスカートをつかんで泣いて、そこからあの穏やかな時間になる。自分でコンテを描いておきながら、完成した映像を見てグッときてしまいました。
三浦 私もあのシーンは大好きです。だからこそ、ラストの落差が……。金子を殺した瞬間に、「ケセラセラ」が軽快に流れだすじゃないですか。「やってくれるな」と思いましたね(笑)。
上野 でも、あそこで「なるようになるさ」と歌われる残酷さが、この作品のテーマでもある気がするんですよね。

――最後に、第2話以降の見どころについても教えてください。
三浦 この作品は時系列がシャッフルされていて、第2話では10回目のゲームに挑む幽鬼が描かれます。28回目の達観した幽鬼とは違い、まだ経験の浅い幽鬼が見どころだと思います。
上野 アフレコではキャストの皆さんに「『華氏451度』のラストシーンのように、ひとり一冊の本を抱えて生きるように演じてほしい」と伝えました。少女たちはそれぞれに生きる理由をもっています。幽鬼だけでなく、これから登場するキャラクターたちも、一瞬の交錯のなかで何かを幽鬼に残していく。その「生」の連鎖を見届けてほしいですね。
三浦 第1話のラストで衝撃を受けた方も多いと思いますが、幽鬼のことが理解できるのは、きっと最終回を見てからだと思います。ぜひ最後まで見届けて、自分がどんな気持ちになったのかを振り返ってみてください。

【取材・文:岡本大介】

■TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」
●1月7日(水)よりTOKYO MX、ABCテレビ、WOWOWほかにて放送中
●Netflixほか各配信サイトにて地上波同時配信中

スタッフ:原作…鵜飼有志(MF文庫J『死亡遊戯で飯を食う。』/KADOKAWA刊)/キャラクター原案…ねこめたる/監督…上野壮大/シリーズ構成…池田臨太郎/コンセプトアート…hewa/キャラクターデザイン…長田絵里/サブキャラクターデザイン…大塚渓花、小松聡太/プロップデザイン…黒岩園加/色彩設計…桂木今里/美術監督…中村嘉博/撮影監督…近藤慎与/編集…菊池晴子、小野寺桂子/音響監督…小沼則義/音響効果…山田香織/音楽…松本淳一/音楽制作…日本コロムビア/アニメーション制作…スタジオディーン

キャスト:幽鬼…三浦千幸/青井…本村玲奈/金子…水瀬いのり/黒糖…佐藤榛夏/紅野…田村睦心/桃乃…川口莉奈

リンク:TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」公式サイト
    『死亡遊戯で飯を食う。』公式X(Twitter)・@shibouyugi_

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