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アニメ「死亡遊戯で飯を食う。」の独創的な映像世界の裏側をひもといた【前編】に続き、【後編】ではいよいよ物語の核心に迫ります。初回60分放送で描かれた「ゴーストハウス」編は、多くの視聴者に衝撃を与えました。なぜ主人公・幽鬼は、あれほどまでにミステリアスなのか。彼女の行動を彩る、静謐で不気味な音響はどのようにつくられたのか。そして、誰もが息を呑んだ、あの非情な結末に込められた制作陣の意図とは。引き続き、KADOKAWAのプロデューサー・香山貴亮氏に、主人公・幽鬼のキャラクター造形に施された特殊な演出や、物語のテーマを決定づけた初回放送の狙い、そして第1話のラストシーンがもつ意味について、深く語っていただきました。このインタビューを読めば、もう一度、あの60分を体験したくなるはずです。
©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会
――主人公・幽鬼はとてもミステリアスなキャラクターですが、彼女を演じる三浦千幸さんのキャスティングの決め手は何だったのでしょうか?
香山 幽鬼役はオーディションで、かなりの人数の方のお芝居を聞かせていただきました。そのなかで三浦さんに決まったのは、感情が平坦な無感情っぽさをもちつつも、そこに人間味が感じられたからです。ロボット的ではなく、あくまで感情の起伏が少ない人間としてのリアリティがありました。実は三浦さんのお芝居を聞いて、監督が後半のコンテの内容を変えた部分もあるんですよ。役者さんの血の通ったお芝居が、フィルムにも大きな影響を与えているなと感じます。
――幽鬼のモノローグも非常に特徴的でした。ナレーションのようでもあり、本人の心の声のようでもある、不思議な響きがあります。
香山 あれは、収録現場では「オッドモノローグ」と呼んでいました。彼女のオッドアイにちなんで、監督が演出されて、そう呼んでいたんですけど、つまりは同じ内容のセリフを一人称(私)と三人称(幽鬼)の両方で収録しているんです。ダビングの際、それを同時に流したり、ずらしたり、片方を強めたりすることで、幽鬼という人間の実体の幽鬼らしさ、自分自身や世界を俯瞰して見ている側面を表現しているんです。
――なるほど。アニメでは原作と違い、幽鬼の目的がすぐには明かされず、よりミステリアスな存在として描かれているのも、そうした演出と連動しているのですね。
香山 そうですね。幽鬼の目的やモチベーションについては、アニメにおける一番の核でもあると思ったので、原作のエピソードも組み替えつつ、アニメでは徐々に明らかになっていくような構成にしています。そのための演出のひとつが〝オッドモノローグ〟でもあるんです。
――音楽や効果音の使い方も独特で、静かで不気味な雰囲気を高めています。
香山 音響監督の小沼(則義)さんがおっしゃっていたのですが、劇伴と効果音の境界をめちゃくちゃ曖昧にしていきたい、という狙いがありました。音楽を担当された松本淳一さんは、以前「廃墟の休日」というドキュメンタリー番組の音楽を手がけられていて、その雰囲気がすごくいいと。メロディが強いというより、本作の世界観にそっと寄り添ってくれるだろうというのがお願いした理由です。実際に音楽素材のなかに人の笑い声や歩く音が入っていたりして、そこに音響効果さんが違和感のないSEを当てていく、というつくり方をされていますね。
©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会
――初回60分放送のラストは本当に衝撃的でした。60分という仕掛けにはどのような狙いがあったのでしょうか。
香山 一番の狙いは、第1話の「ゴーストハウス」編を最後まで描き切ることで、この「死亡遊戯で飯を食う。」がどういう作品なのかを視聴者の皆さんに明確に提示することでした。僕も原作を読んで一番ショックだったのが、あの結末なんです。かわいい女の子を助けて生き抜くだけの話ではない。利他的な行動の先に、非情にも見える決断がある。そこにこそ、この作品の本質があると感じました。
――多くのデスゲーム作品では、主人公はみずからの手を汚さないというある種のお約束がありますが、本作はそこを軽々と超えていきましたね。
香山 そうですね。利他的な精神で、できる限りみんなで生き抜こうという彼女のことばに嘘偽りはない。でも、最後の最後では、ああいった行動をとる。「どういうこと?」と視聴者に思っていただき、次が見たくなるようにという狙いは確かにありました。
――あの結末を描き切ることで、本作が少年漫画的なデスゲームとは違う、もっと先の読めない物語なのだと宣言したわけですね。
香山 そうですね。先ほども触れたように、幽鬼という不思議なキャラクターを、1シーズンを通じて解き明かしていく物語なのだということですね。
――第1話のなかで、特に香山プロデューサーが印象に残っているシーンはありますか?
香山 原作にはないシーンなのですが、個人的にすごく好きなのが、青井が亡くなった後、ドレスルームで幽鬼が金子の髪を乾かしてあげるシーンです。セリフはないんですけど、あの人間同士の寄り添いの描き方がすごくキレイで……。幽鬼というキャラクターの奥深さや、少女たちの心情を豊かに表現していて、これこそ上野監督ならではの描写だなと非常に印象に残っています。
――では最後に、今後の見どころを含め、本作を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
香山 本作はフィクションですし、デスゲームという極限の世界ではありますが、そこでしか描かれない人間の感情が確かに存在します。初回60分で、まずはこの独特の世界観にどっぷりと浸っていただき、少女たちだけでなく、舞台そのものや空気感、その隅から隅まで触れていただけるとうれしいです。あの衝撃的な結末から、幽鬼という少女の物語は本格的に始まります。彼女がこれからどんなゲームに挑み、何を考え、何をめざしていくのか。ぜひ、その旅路を最後まで見届けてください。きっと、あなたが今まで見てきたデスゲーム作品とはまったく違う体験が待っているはずです。
©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会
【取材・文:岡本大介】
■TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」
1月7日(水)よりTOKYO MX、ABCテレビ、WOWOWほかにて放送中
Netflixほか各配信サイトにて地上波同時配信中
スタッフ:原作…鵜飼有志(MF文庫J『死亡遊戯で飯を食う。』/KADOKAWA刊)/キャラクター原案…ねこめたる/監督…上野壮大/シリーズ構成…池田臨太郎/コンセプトアート…hewa/キャラクターデザイン…長田絵里/サブキャラクターデザイン…大塚渓花、小松聡太/プロップデザイン…黒岩園加/色彩設計…桂木今里/美術監督…中村嘉博/撮影監督…近藤慎与/編集…菊池晴子、小野寺桂子/音響監督…小沼則義/音響効果…山田香織/音楽…松本淳一/音楽制作…日本コロムビア/アニメーション制作…スタジオディーン
キャスト:幽鬼…三浦千幸/青井…本村玲奈/金子…水瀬いのり/黒糖…佐藤榛夏/紅野…田村睦心/桃乃…川口莉奈
リンク:TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」公式サイト
『死亡遊戯で飯を食う。』公式X(Twitter)・@shibouyugi_