スタッフ

「死亡遊戯で飯を食う。」プロデューサー・香山貴亮インタビュー【前編】「ドガの絵画からインスピレーション? 静謐で美しい映像世界」

静謐で、美しく、そして残酷――。初回60分で放送されたTVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」は、その独創的なビジュアルと息を呑むような緊張感、そしてあまりにも衝撃的な結末で、多くのアニメファンに鮮烈な印象を刻みつけました。多額の賞金を賭けたデスゲームに挑む少女・幽鬼(ユウキ)の物語は、なぜこれほどまでに見る者の心をつかんで離さないのか。そこには、既存のデスゲーム作品とは一線を画す、こだわりに満ちた制作アプローチが。本インタビュー【前編】では、KADOKAWAのプロデューサー・香山貴亮氏に、企画の成り立ちから、上野壮大監督がフランスの画家・ドガに着想を得たという唯一無二の映像世界の構築、そしてそれを支える特殊な制作体制まで、本作の骨格を成すクリエイティブの裏側をじっくりとうかがいます。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


――原作小説との出会いと、アニメ化に至った経緯についてお聞かせください。
香山 以前、スタジオディーンさんとごいっしょした「義妹生活」の担当編集が、本作の担当でもあったんです。新人賞の発表タイミングで「おもしろい作品があるから読んでほしい」と紹介されたのが最初の出会いでした。ただ、1巻を読んだ段階では、すぐには「アニメ化しましょう」とはならなかったんです。いわゆるファンタジーでも学園ものでもなく、この物語がどこへ向かうのか、映像にしたときのイメージがつかみきれなくて。主人公の幽鬼というキャラクターも、今思えば僕自身がよくわかっていなかったんだと思います。それで一度は「考えます」とお答えしたのですが、数か月後に出た2巻を読んで、印象が大きく変わりました。デスゲームという設定のなかで、キャラクターたちの人間関係の機微や、極限状況でしか描かれない人間性のぶつかり合いが非常におもしろく描かれていて、そこから「ぜひ考えたい」とお話を進めていきました。

――なるほど。単なるデスゲームのギミックだけでなく、キャラクターのドラマが動きだしたタイミングで、映像化の可能性を見いだされたのですね。
香山 そうですね。一方で、原作のもつコメディ要素やシニカルな笑いは、アニメでは少し抑えめになっています。これは意図した部分もありつつ、制作が進むにつれて、より幽鬼というキャラクターの感情に寄っていった結果なのかなと思います。第1話ではまだ女の子たちがわちゃわちゃしている場面も多少あったんですけど、そこから物語が進んでいくと、なかなかコメディに振りきって描くのは難しかったりしますね。

――かわいい女の子たちが序盤から次々と脱落していく展開は、ある意味では非常にぜいたくですよね。
香山 そうだと思います。誰もがメインヒロインになれそうなのに、それがあっというまですからね。それはこの作品ならではの容赦のなさですよね。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


――本作の映像は、デスゲームものとしては珍しく、キャラクターから引いた視点で描かれているのも非常に印象的です。この独特のスタイルはどのように生まれたのでしょうか?
香山 上野壮大監督は原作を読んだ段階で、フランスの画家・ドガが描いた「踊り子」の絵のような雰囲気がある、とおっしゃっていました。ドガはバレリーナの絵を多く描いていますが、そのイメージがなぜ本作につながったのか、僕も最初はわからなくて(笑)。おそらく、ゲームのなかで行動しているキャラクターたちを少し引いた視点で、俯瞰的にとらえるというイメージが監督のなかに明確にあったのだと思います。誰かの腕がちぎれてキャラクターがショックを受ける、といった直接的な感情に寄り添うのではなく、もっと引いた視点で世界を描く。その視覚化として、ああいった美術や構図が生まれてきたのではないでしょうか。

――その世界観のベースを固めるうえで、コンセプトアートを手掛けられたhewaさんの存在が大きかったそうですね。
香山 はい、hewaさんの起用は監督からの強い要望でした。上野さんが監督を務められた「義妹生活」でエンディング映像をつくっていただいた3DCGアーティストの方なんです。今回はシナリオとほぼ並行してコンセプトアートの制作に着手されていました。アニメは小説や漫画よりも多くの情報が必要になるので、デスゲームの舞台が具体的にどういう場所なのか、周辺の空気感はどうなのか、といった部分を監督とhewaさんで密にコミュニケーションを取りながらつくられていましたね。たとえば第1話の「ゴーストハウス」であれば洋館のディテール、今後登場する「スクラップビル」であれば、とある工場の跡地という設定から、キャラクターのお芝居に関連するオブジェクトも配置して、それがキャラクターたちのお芝居にも絡んでくるんです。hewaさんが描いたコンセプトアートを起点に、全セクションが作業されているな、と見ていて感じました。

――その制作工程も、通常のアニメとはちょっと違うんですよね。
香山 そうですね、一番違うのは美術です。本作には、いわゆる通常の2Dの美術設定がほとんどないんです。hewaさんはまず3Dモデルで空間を構築して、そこにカメラを置いて画像化したものをコンセプトアートとしていて。美術チームはその素材を受け取り、それを極力そのまま美術ボードとして使えるように作業を進めています。つまり、コンセプトアートから直接、本番の背景(BG)を描いているようなものなんです。そのため、背景には最初から色味やトーンが乗っていて、映像的な情報量の多くを美術チームが担ってくださっています。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


――キャラクターデザインについてもうかがいますが、原作の繊細な絵を再現するのは大変だったのではないでしょうか。
香山 キャラクターデザインの長田(絵里)さんは、本当にみごとに描きあげてくださいました。原作のねこめたる先生の絵は非常に細かく、アニメーションにしづらい部分があるだろうと懸念していましたが、実際に上がってきた設定は情報量をほぼ落とさず、「こんなに描くんですか!」と、こちらの覚悟を問われるようなもので(笑)。ただ、キャラに寄った時は非常に細かく描き込まれる一方で、引いた絵ではベタ塗りのような表現にしたりと、あえて表現にギャップを加えることで、フィルムの深みが増し、結果的には作画がうまくコントロールされているようになっているなと感じます。

――目の表現も独特です。
香山 特にアップになった際の目のキレイさは圧倒的ですね。ハイライトの映り込みも、カットごとにすべて違うものを描いていると聞いていますし。オッドアイという幽鬼のキャラクター性もあって、僕から見ても目に対する執念はすさまじいものを感じます。

――ありがとうございました。引き続き、後編でもお話をうかがいます。


©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会


【取材・文:岡本大介】

■TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」
1月7日(水)よりTOKYO MX、ABCテレビ、WOWOWほかにて放送中
Netflixほか各配信サイトにて地上波同時配信中

スタッフ:原作…鵜飼有志(MF文庫J『死亡遊戯で飯を食う。』/KADOKAWA刊)/キャラクター原案…ねこめたる/監督…上野壮大/シリーズ構成…池田臨太郎/コンセプトアート…hewa/キャラクターデザイン…長田絵里/サブキャラクターデザイン…大塚渓花、小松聡太/プロップデザイン…黒岩園加/色彩設計…桂木今里/美術監督…中村嘉博/撮影監督…近藤慎与/編集…菊池晴子、小野寺桂子/音響監督…小沼則義/音響効果…山田香織/音楽…松本淳一/音楽制作…日本コロムビア/アニメーション制作…スタジオディーン

キャスト:幽鬼…三浦千幸/青井…本村玲奈/金子…水瀬いのり/黒糖…佐藤榛夏/紅野…田村睦心/桃乃…川口莉奈

リンク:TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」公式サイト
    『死亡遊戯で飯を食う。』公式X(Twitter)・@shibouyugi_

この記事をシェアする!

MAGAZINES

雑誌
ニュータイプ 2026年2月号
月刊ニュータイプ
2026年2月号
2026年01月09日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype
  • HOME /
  • レポート /
  • スタッフ /
  • 「死亡遊戯で飯を食う。」プロデューサー・香山貴亮インタビュー【前編】「ドガの絵画からインスピレーション? 静謐で美しい映像世界」 /