「Re:ゼロから始める異世界生活」、「この素晴らしい世界に祝福を!」、「文豪ストレイドッグス」――。KADOKAWAが送るこれらの人気作が、今年で放送開始から10周年! ロサンゼルスで開かれたAnime Expo 2026では、10周年を記念して、3作品のプロデューサーによるトークパネルが開かれました。そんな北米でも圧倒的な人気を誇る3作品をめぐる熱狂の様子をレポートします。
定刻になると、MCが北米のファンに向けてKADOKAWAが出版からアニメまで幅広く手がける会社であることを解説。KADOKAWAが送る「Re:ゼロから始める異世界生活」と「この素晴らしい世界に祝福を!」、「文豪ストレイドッグス」という3作品が放送開始から10周年を迎えることが説明されると、会場からは大きな拍手と歓声が起こりました。
そして、MCに呼び込まれ、田中翔さん(「Re:ゼロから始める異世界生活」プロデューサー)、小倉理絵さん(「この素晴らしい世界に祝福を!」プロデューサー)、倉兼千晶さん(「文豪ストレイドッグス」プロデューサー)が登壇。
まずアニメのプロデューサーとはどのような仕事なのかを問われると、田中さんが「Making anime, making money(アニメを作り、お金を稼ぐ)」とジョーク交じりに返答すると、会場は大きな笑いに包まれました。そのうえで田中さんは、制作スタジオと製作メーカーにはそれぞれプロデューサーが存在し、KADOKAWA(メーカー)では20人強のプロデューサーがアニメ製作の統括指揮を行っていることを説明していました。
次に10年間の振り返りを求められると、「制作面でいくと色の使い方に変化を感じている。鮮やかなものが増えていき、今は少し落ち着いた深みのあるものがトレンドになっていると感じる」と田中さんが分析。10年間での映像の変化にも注目してみるよう観客に呼びかけました。倉兼さんは「文スト」がAnime Expoに来るのは4回目であることに触れつつ、長い応援への感謝を述べました。小倉さんは大きな変化として「サブスク」の登場を挙げ、アニメを観る機会が増えた「より面白い世界になった」と喜びの姿を見せていました。
その後、トークは各作品にまつわるものへ。特にこだわって作り込んだシーンを尋ねられると、小倉さんは「このすば」第1期オープニングのタイトルロゴが出る部分のクリップを提示。青空の上にキレイな羽が舞っているシーンですが……よく見ると、「とんでもないもの」が映っているそうです。「何度も見て味わってほしい」という金崎貴臣監督の思いから生まれた演出であり、ぜひ改めて見返してほしいと呼びかけました。
「文スト」で倉兼さんから挙げられたのは、「黒の時代編」で子どもが亡くなる一シーン。五十嵐卓哉監督は当初、このシーンを描くのに強い抵抗感があり演出に関して熟慮していたこと、また、あえて子どもの居るアニメーターに担当してもらい、子どもを失う気持ちをリアルに、とてもつらいシーンとして描くことで、現在の形へと完成したことが明かされました。
田中さんは、「リゼロ」第15話より、ペテルギウス初登場シーンを紹介。細田直人さんが手がける絵コンテの時点で、凶気的なキャラクターが非常に生き生きと描かれており、現場全体で衝撃を受けたという秘話が明かされました。
また、ラストシーンでスバルから「あるもの」が落ちるのも衝撃的なこの話数。田中さんとしては想定外の演出だったとのことで、思わず渡邊政治監督に意図を尋ねたそうです。スバルの心がぽっきりと折れることを印象づけるためだったそうですが、該当シーンのクリップが流れると会場からは大きな悲鳴が上がっていました。
続いて行われたのは、3作品にまつわるエピソードを題材にしたクイズコーナー。3つのエピソードのうち、1つだけ混ざっている「ウソ」を当てるという内容で、会場は大いに盛り上がりました。
小倉さんからは「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」冒頭のマグロ漁のシーンについて、「実は当初TVシリーズ1話くらいの分量がありましたが、尺の都合で3カットに収めた」というエピソードが披露されました。
倉兼さんからは、「文スト」アニメチームと原作チームの仲の良さをアピールするエピソードが多数紹介。脚本打ち合わせの際は作品の舞台となった横浜や文豪ゆかりの旅館で合宿をしたことが明らかにされました。また、第5シーズンでは原作より先のストーリーが展開されたことにも触れ、「強固な信頼関係で原作側からも快諾していただいた」と成功の秘訣を語ってくれました。
田中さんから挙げられた「リゼロ」のエピソードはどれも衝撃的なもの! 第1期と第2期のメインスタッフは、当初全く違う想定だったそうですが、運の良い「偶然」が重なって渡邊監督をはじめとした素晴らしい座組みが成立したそうです。また、エミリア役を務めた声優の高橋李依さんはもともとキャスティングの第一候補に挙がっていなかったそうで……。「エミリアはめぐみんじゃなかった」と笑いを交えながらも、実際のオーディション音声を聞いたスタッフ全員が満場一致で高橋さんの起用を決めたというエピソードも明かされました。
トークセッションが終わると、KADOKAWAから北米のファン向けに新作情報が案内されました。「SEKIRO: NO DEFEAT」はKADOKAWAグループのゲームメーカーであるフロム・ソフトウェア作品として初のアニメ化作品。全編手描きで制作される作品であることが紹介され、田中さんは注目を呼びかけました。続いて「幼女戦記Ⅱ」のティザームービーが流れると、会場からは大歓声が。「幼女戦記」のダークで重厚なストーリーが北米でも高く注目されていることを実感させました。
最後に海外のファンへのメッセージを求められた3人。田中さんは「リゼロ」を「あと20年くらい続けたい」と意気込みを語り、小倉さんは「世界中で作品と共にぜひアクシズ教も一緒に布教してください」と「このすば」らしいユーモアを交えて呼びかけました。
倉兼さんも「Anime Expoへ来るたびに、皆さんの応援に力をもらっています。その思いをスタッフへ届け、これからも作品を長く楽しんでいただけるように頑張ります」と感謝を伝えました。
そしてパネル終了後には、「Re:ゼロから始める異世界生活 4th season 奪還編」1話目(第78話)の世界最速先行上映を実施。「喪失編」の衝撃的なラストを受けた続編ということもあり、上映前から会場の熱気は最高潮に達していました。
10周年を迎えた3作品の歩みを振り返るとともに、KADOKAWAが送り出す新たな作品群への期待も高まる、メモリアルなパネルとなりました。
取材・文:梁川ろんげ