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もう一度作ってみたい――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」メカ作画監督・金世俊インタビュー

2021年05月17日 17:00配信
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、メカ作画監督を務めた金世俊さんにお話を伺いました。

――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の初号試写をご覧になったとき、どんな感想をおもちになりましたか。

金 観る前は全体の尺が長いから、少しだるくなるんじゃないかなと思っていたんです。ラッシュ(制作中の映像チェック)で何回も観ていましたしね。でも、初号試写を見たら、あっと言う間に終わった感じがあったんです。自分の関わった作品だから、いい感じに見えているんじゃないかなと思って、実際のお客さんの反応はどうなのかなと知りたくなりましたね。初日に劇場へ観に行って、ファンの人たちの反応を見て。友人や仲間から「すごくおもしろかった」と感想を聞いたときは、素直に良かったなと思いましたね。

――金さんにとって「エヴァンゲリオン」とはどんな作品でしたか。

金 韓国にいるときにTVシリーズを見ていたんです。日本に来て、押山(清高)さん(監督、アニメーター)とお会いしたんですが、僕は当時、アニメーターさんの名前をまったく知らなかったんですね。そのころ押山さんは「電脳コイル」をやっていて(注:押山さんは作画監督)、その監督が磯(光雄)さんだったんですけど、「磯さんってどんな方なんですか? 僕はわからないんですけど」と言ったら、「いや知っといたほうがいいですよ」と。それで「これを見たほうが良いです」と「新世紀エヴァンゲリオン劇場版」を進められたんです。それまで「新世紀エヴァ劇場版」を観たことがなかったんですが、磯さんのパートを観て、衝撃を受けてしまって。その後はあのパートだけを無限リピートしていました。あの磯さんのパートは、今見てもすごいなと思います。最近の作品のアクションシーンはエフェクトで派手に見せることが多いですけど、磯さんの「新世紀エヴァ劇場版」のアクションシーンは過剰に飾らなくても、品が良い。あれを観て、いつか「エヴァ」を描いてみたいなと思っていました。

――画的な部分に惹かれたということなんですね。

金 最初は、アニメーターとして作画の観点で参考にしていた作品でした。でもそのうちに、だんだん自分は演出の方面への興味をもちはじめて、鶴巻さんや庵野さんの演出のやり方に興味が沸いてきました。「エヴァ」に参加したいなと思ったのは、鶴巻さん、庵野さんをはじめとする有名な演出家の仕事ぶりを近くで見てみたいという思いが一番大きかったです。今回、最終電車に間に合うことができました。

――金さんはスタジオカラーに入って、作業をされていたんですよね?

金 そうですね。ずっとスタジオカラーで仕事をしていたんですが、緊急事態宣言が出た後は、自宅作業にしてほしいということになったんです。4月から6月後半くらいまで完全に自宅作業になって。6月後半くらいから週に一度くらいスタジオに戻ることになりました。

――スタジオカラーでは、どんな方とお話することが多かったですか。

金 浅野(直之)さん(作画監督)とはよく話をしていましたね。あとは、原画の秋津(達哉)さんとか。雑談をしてから、作業に入る。みんなの集中が切れたときはああだこうだと話をしていました。

――鶴巻さんや庵野さんのお仕事ぶりはご覧になれましたか?

金 ええもちろん。ものすごく勉強になりました。席が近いから、庵野さんがほかのスタッフと話をしているのを聞くことができて。庵野さんの指示を見ては、自分なりに解釈していました。

――今回、「シン・」は制作上、いろいろな新しい試みをされていたようですが、金さんにとってはどんな現場でしたか。

金 2年ぐらいずっと「エヴァ」をやっていたのでマヒをしてしまって。これが新しいことなのか、どうなのかが正直わからなくなっていて。お客さんが見たときの反応が気になっていました。皆さんの反応を見て、あらためてヤバイことだったんだなと(笑)、あらためて気づきました。

――作品の最後には「終劇」という文字が出ます。そのことについてはどんなお気持ちがありますか?

金 とくにこだわりはあんまりなくて。肩の荷を下すことができたのかも、わからないんですが……。今回僕が入ったことで、「エヴァ」のメカ部分のテイストが変わったらまずいんじゃないかなとずっと思っていて、「:Q」の作画をかなり参考にさせてもらっていたんです。でも、描いているうちに、もっと自分の我を出しても良かったのかなと、今は思っています。「終劇」となっているんですが、もしもう一回やってもらえるなら、もう少しやることがあったんじゃないのか?みたいな気持ちになっています。

――「シン・」をもう一度作ってみたい、と。

金 もう一度やれるんだったら、最初からもっと自分の色を出して、いろいろとやれたんじゃないかなと思います。過去の「エヴァ」を否定しているわけじゃなくて、影をつけたり、ディティールをもっと足しても良かったんじゃないかなと思うんです。たとえばゲンドウの後ろから初号機が出てくるカットでは、エヴァの目のディテールを別セルにしてつくっていたんです。TVシリーズから「:序」「:破」「:Q」のエヴァンゲリオンの設定を全部見て、その中で一番目のディテールがあるものを引っ張り出して、そこからアレンジして描きこんで。もしそのディテールが必要なかったら抜いてもらえばいいだろうと思っていました。そうしたら、その目のディテールが通った(OKだった)んです。ああ、これはいけるなと。庵野さんも「もう少しディテールを足したい」とおっしゃっていたし、甲板にある新2号機の残骸を庵野さん自身がディテールを足していたんですよね。それは実際に作業をしているときは気づいていなかったから、もう一度「シン・」をやれたら、もっと盛りたいなと。影を足したり、ハイライトとか、影をもっと盛ってもよかったんじゃないかなと。もう一度制作前に時間を戻すことができるなら「もうちょっと盛っていいんだよ」と自分に言いたいです。そういう想いが自分の中に残っていますね。

(プロフィール)
●きむ・せじゅん/本作以外では「機動戦士ガンダムNT」(キャラクターデザイン)や「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」、錦織敦史が監督を務めた「ダーリン・イン・ザ・フランキス」にも参加している

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「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー


現在発売中のニュータイプ6月号では、金世俊さんをはじめスタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載。総作画監督・錦織敦史さんの描きおろしイラストが目印です。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中(C)カラー


【取材・文:志田英邦】