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普遍的なテーマに身が引き締まる作品―「宇宙戦艦ヤマト2205」福井晴敏&畠中祐インタビュー

2021年10月07日 07:00配信
左から、土門竜介を演じる畠中祐さん、シリーズ構成・脚本を担当した福井晴敏さん
左から、土門竜介を演じる畠中祐さん、シリーズ構成・脚本を担当した福井晴敏さん(C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会

2021年10月8日(金)から全国の劇場で上映開始となるアニメ「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-」。1979年に放送されたTVスペシャル「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」をベースに、それ以降の「ヤマト」の要素も盛り込んだリメイク作品です。

物語の舞台は前作「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」から3年後。ヤマトの新艦長となった古代進とクルーたちが激動の時代で新たなる船出を迎えます。上映を目前にひかえ、シリーズ構成・脚本を担当した福井晴敏さんと、「2205」で新登場となるヤマト新クルーの1人・土門竜介を演じる畠中祐さんにお話をうかがいました。

――本作の副題は「新たなる旅立ち」ですが、TVスペシャル「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」のみならず、土門竜介ら新クルーの登場など、TVアニメシリーズ「宇宙戦艦ヤマトIII」の要素も見られます。構成はどのように詰めていかれましたか。

福井 前作の「2202」ほどには揉めませんでしたね。「2202」の原作である「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」は最後に特攻をしかけてしまうお話でしたので、リメイクにあたっては「そのテーマ性を抽出しつつ、結末はまったく異なるものにする」という困難なコンセプトでした。

それに比べると「2205」は、原作を忠実に再現するということに対しては最初からあまり重きが置かれていなくて。言ってしまえば、フリーハンドでやってもいいんじゃないかくらいの空気感でした。とはいえ、本当にそうすると今度はリメイクであるという存在意義が危うくなってしまいますので、好き勝手にやりすぎてもいけない。そうした落としどころをスタッフ間で探っていき、「新たなる旅立ち」に続く「ヤマトIII」のキャラである土門たちが前倒しで登場することになりました。

「ヤマト」はコアスタッフが40年来のファンでもありますので、その人たちにいかに納得してもらえる構成にするかが一大作業でした。逆に言えば、"うるさ型"である彼らに納得してもらえれば、ファンの皆さんにも納得してもらえるものになっているだろうと(笑)。

――原作となるTVスペシャル「新たなる旅立ち」への思い入れをお聞かせください。

福井 自分は「ヤマト」リアルタイム世代ではないのですが、当時は「さらば~」が上映されて「ヤマト」が一躍ブームになっていて、そんな時に僕に初めてオンタイムで触れたのが「新たなる旅立ち」でした。インターネットなんて当然まだないころに、テレビで映画のようなクオリティの作品を見られるこということで興奮しっぱなしでした。とはいえ、実は翌日に林間学校をひかえていて、初めて見たときは最後まで見られることなく親にテレビを消されてしまったのですが。あのときのことはまだ許していません(笑)。

畠中 (笑)。それは強烈な思い出ですね…!

――「2205」は「2202」よりも"大河路線"に向かっていくとのことですが、群像劇的な面もより強くなるのでしょうか?

福井 たしかにそういう一面は強くなっていると思います。「2202」は古代進という一人の男の物語に収斂する形でしたが、今回は古代だけでなく、土門やデスラーがお互いを照らし合うような構造で、それぞれにとっての激動の時代に入っていきます。

――それでは畠中さんにもおうかがいします。本作で初登場となる土門竜介について教えてください。

畠中 時には人を試すような眼も見せる、激しい怒りを内に秘めた青年です。彼は何に怒っているのかは作品をご覧いただければと思いますが、本作において"新しい風"になっていると思います。古代も、彼との出会いが自身の背負っているものをもう一度見つめ直すきっかけになっているといいますか。

僕と土門では抱えているものは全然違いますが、僕自身も今作で初めてヤマトに搭乗させていただいた身ですので、そういう意味ではすごく共感できました。

福井 古代たちはまだ20代ではありますが、作中の時間で5年以上一緒にやっているわけです。お互いを支え合おうという空気がすっかりできていて、いつか馴れ合いが始まってしまうかもしれない。そして、馴れ合いの物語ほど面白くないものはないんです。土門はそんなところに入ってきて、なにも忖度することなく、これはなぜですか、そこで立ち止まっていてはダメでしょうとバシンバシン突きつけるキャラクターですので、キャストも畠中君くらい若い人にやってほしかった。自分の中では、土門と畠中君はほとんど同一の存在ですね。

畠中 土門の先々のことまで考えられない一面は危うさでもありますが、正しいと思ったことには一直線に突き進んでいける土門には、演じている僕も勇気づけられました。最初は僕とは抱えているものが違いすぎて距離すら感じていましたが、いざ演じてみるとすごく人間くささもある青年で、すぐに好感を抱くようになりました。きっとみなさんにも好きになっていただけるのではと思います。

――コロナ禍という情勢に配慮して、アフレコはお一人ずつ行われたとうかがいました。収録を終えての感想はいかがですか?

畠中 (その詳細を聞く前は)大先輩の皆様方の中に飛び込むという緊張感があったのですが、結局、収録を終えた今もその実感はなくて……。でも、だからこそずけずけと土門を演じられたところもあると思います。

福井 現場で他のキャストと一緒だったら芝居も変わっていたかもしれない?

畠中 仮定の話にはなってしまいますが、もっと緊張していたかもしれません(笑)。でも1人だったからこそ、土門が抱える怒りや孤独とより深く向き合えたのかなと。1人だから演じづらかった…とは感じませんでした。

福井 現場ではキャストさんたちが入れ替わり立ち替わりで、1日に10人分を収録…という感じだったんです。畠中君は、収録の前後も若手の人が多かったよね。

畠中 そうですね。土門と同じ新クルーの京塚みや子を演じてる村中知さんなどでした。現場では僕の直前に村中さんが収録していたことがあって、そのとき村中さんが「土門の芝居を知っておきたいから」と収録後もスタジオに残ってくださったことがありました。

そのときの土門のセリフは二言、三言という程度だったのですが、そんな少しのセリフだけでも聞こうとしてくださる。村中さんもそれほどまでに強い思いで携わっておられるのだと知り、僕も全力でがんばらねばとあらためて感じました。

――いざ演じてみると土門に好感を抱いたとのことですが、収録も順調でしたか?

畠中 もちろん、難しいシーンも多かったんです。ですが、分からないものを分からないと言っていいキャラクターでもあるので、そんな戸惑いも素直に芝居に込められたと思います。こういう逡巡も、土門の一部になってくれたらなと。

福井 土門は、今この年齢、このキャリアの畠中君でなければやれない役だろうと現場で強く感じました。畠中君の朴訥とした、"作っていない"感じの芝居がピタリとはまっていた。倉本聰さんの書くドラマ「前略おふくろ様」は、萩原健一さんが演じる主人公が母親に宛てた手紙を独白するナレーションが印象的ですが、あれに近いようなぼそっとした声。これがとてもいい。現場では大きくディレクションすることもなく、むしろ「そのまま作らなくていいです」とお願いしました。

畠中 僕は決して器用なタイプではないというのは自覚していますので、そういうところをむしろ評価してくださったのがすごくうれしくて。体当たりで演じたのが功を奏しましたね。土門は、僕とすごく近いところにいるキャラになったと思います。

――それでは、土門以外で気になったキャラクターはいましたか?

畠中 物語のネタバレがなさそうな範囲ですと、土門と同じ新クルーの坂本茂ですね! 坂本はとにかくかっこいい!

福井 それ、何度聞いても俺はよく分からないんだよね(笑)。

畠中 「ヤマト」って、やっぱり戦闘シーンも見どころのひとつじゃないですか。劇中では航空隊員である坂本の卓越した操縦技術がよく分かるシーンがあって、それがひと際目を引くんです。「コイツ、"カッコイイ"路線を突き進んでるなぁ!」と(笑)。

――作品を見る際は坂本の戦闘シーンにも注目します(笑)。土門は畠中さんあってのキャラクターになっているというのがよく分かりましたが、あらためて、土門の作劇上の立ち位置、役回りをどのようなものと捉えておられるかお聞かせください。

福井 「忖度なく、耳に痛いことを突き付けてくる」役どころですね。現実でも、そういう人に現場に入ってこられるのは、やっぱり誰でもイヤなものですよね。でも、イヤだけど、そういう人がまったくいない現場はゆっくり死んでいくようなものだということも、きっとみんな分かっていて。

絵でできているアニメーションはいわば絵空事の典型でもあって、気持ちいいことだけを連ねていくこともできます。でも「ヤマト」は原作のころから敵とさんざん戦ったすえに「戦うべきではなかった、愛し合うべきだった」と涙するような、ある意味現実にコミットした作品です。リメイクもその精神性を忘れずに、現実と対比できる話でありたかった。

「2205」を作っているときはまだ新型コロナウイルスの姿は影も形もありませんでしたが、今現実はこうなっていて、ある意味では自分も含めた大人たちのだらしなさが露呈している状態でもあります。そんなときは、土門みたいな存在にいっぺんバシッと言われて(現実や目の前の問題と)取っ組み合わなければ、と。結果としては、土門のおかげで今の世情を代弁できるような話になったのかなと思っています。

――お二人は、完成した映像をご覧になっての感想はいかがでしたか。

畠中 困っている人を今すぐ助けにいくべきか。傷つくとはどういうことで、僕らはそんな人にどう寄り添っていくべきか。「ヤマト」は人としてどうあるべきかという選択を突き付けてくるシーンがたくさんあって、ついつい楽な方、楽しい方に流れたくなってしまう現代にあって身が引き締まる作品だと思います。そこにすごい熱を感じますね。

福井 自分で言うのもなんですが、21世紀に作ったとは思えない手作り感がある作品になったと思います。「ああ、これは"フィルム"だな」と自分でも感じるんです。フィルムなんか一切介していないのに(笑)。

――それでは最後に、10月8日の劇場上映開始に向けてメッセージをお願いします。

福井 まだまだ新型コロナウイルスは落ち着かず、上映開始日を無事に迎えられる保証もないですが、そんな時世だからこそ、見ておく意義のある作品になったと思います。劇場に足を運ぶのに不安を感じる方もおられるかもしれませんが、上映開始と同日からデジタルセル版の配信も始まります。ご自宅で落ち着いて見ることもできますので、ぜひ触れていただければと思います。

畠中 コロナ禍で先行きが不透明になってしまった今日にあって、すごく強い芯をくれる作品です。簡単な言葉で片づけたくはありませんが、見終わったあとには勇気が湧いてきます。普遍的なテーマが詰まっていますので、僕と同世代の方たちにもぜひご覧いただきたいです。

福井 「2199」と「2202」をリビルドした「『宇宙戦艦ヤマト』という時代 西暦2202年の選択」をご覧いただけますと、さらにバッチリですのでよろしくお願いします。

左から、土門竜介を演じる畠中祐さん、シリーズ構成・脚本を担当した福井晴敏さん
左から、土門竜介を演じる畠中祐さん、シリーズ構成・脚本を担当した福井晴敏さん(C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会

■「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-」
2021年10月8日(金)より劇場上映
同日よりBlu-ray特別限定版販売&デジタルセル配信 スタート

スタッフ:原作…西﨑義展/製作総指揮・著作総監修…西﨑彰司/監督…安田賢司/シリーズ構成・脚本…福井晴敏/脚本…岡秀樹/キャラクターデザイン…結城信輝/メカニカルデザイン…玉盛順一朗、石津泰志、明貴美加/音楽…宮川彬良/音響監督…吉田知弘/CGディレクター…後藤浩幸/アニメーション制作…サテライト/配給…松竹ODS事業室

キャスト:古代進…小野大輔/森雪…桑島法子/真田志郎…大塚芳忠/アベルト・デスラー…山寺宏一/スターシャ…井上喜久子/土門竜介…畠中祐/徳川太助…岡本信彦/京塚みやこ…村中知/板東平次…羽多野渉/坂本茂…伊東健人

リンク:アニメ「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」公式サイト
    公式Twitter・@new_yamato_2199