新作&おすすめアニメのすべてがわかる!「月刊ニュータイプ」公式サイト

rssボタン

「盾の勇者の成り上がり」阿保孝雄(監督)×小柳啓伍(シリーズ構成)対談【前編】「ゲーム的要素はあるが、あの世界は紛れもない“現実”である」

2019年01月18日 18:30配信
「盾の勇者の成り上がり」阿保孝雄(監督)×小柳啓伍(シリーズ構成)対談【前編】「ゲーム的要素はあるが、あの世界は紛れもない“現実”である」

「盾の勇者の成り上がり」より

(C)2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

現在、好評放送中のTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。

第5回は、監督・阿保孝雄さん、シリーズ構成・小柳啓伍さんの対談をお届けします。この前編では、おふたりが本作に参加した経緯から本作で何を描こうとしているのかについてたっぷり語っていただきました。

――おふたりが本作に関わることになった経緯を教えていただけますでしょうか。

阿保 キネマシトラスの社長の小笠原(宗紀)さんから、「こういう企画があるんだけど」と作品の紹介があったのが最初ですね。そのときは作品を存じ上げなかったので、監督としてお願いしたいという依頼を踏まえたうえで、自分にできそうかどうかを考えながら原作を読ませていただきました。

――実際、原作を読まれてやってみようと考えられたのでしょうか。

阿保 いわゆる「異世界転生作品」というジャンルは、監督としてもアニメーターとしてもほとんど関わった経験がなかったので、演出や画作りの方向性がなかなか見えないこともあって、最初は躊躇する部分がありましたね。

――そこからオファーを受けるに至った決め手というのは?

阿保 ひとつは、異世界を冒険するような作品を作ってみたいという興味があったからです。それを監督としてやらせていただけるというのは、とてもありがたいなと思いました。もうひとつは、ゲーム性を伴った世界というものに挑戦してみたかった。本作はステータスであったりスキルであったりと、ゲーム的な要素の多い作品です。僕はあまりゲームに詳しくない人間なので、あえてそこにチャレンジしてみたいという思いがありました。

――小柳さんはどういった経緯だったのでしょうか?

小柳 キネマシトラスさんが制作していた「メイドインアビス」に関わっているときに、小笠原さんから「ちょっと読んでおいて」と紙袋いっぱいの原作をいきなり手渡されたんです。最初は何がなんだかわからなくて(笑)、しばらくは「メイドインアビス」に集中していたんですが、「読んだ?」「まだです」というやりとりしているうちに、いつの間にか「盾の勇者」の打ち合わせに参加するようになっていました。

――知らぬ間に参加されていた、と(笑)。

小柳 そうですね。ただ、「メイドインアビス」でお世話になっていて、その上、新作でもお声がけいただけるというのはありがたかったですし、ぜひお手伝いできるならと思って快諾いたしました。それから、阿保さんとは「灼熱の卓球娘」や「メイドインアビス」の各話脚本、各話コンテ、演出としてクレジットされることはあったのですが、直接顔を合わせてお仕事するのは初だったので、それもすごく楽しみだったんです。「阿保さんとご一緒できるなら、ぜひ」という感じでした。

――小柳さんは、原作にはどんな印象をお持ちになりましたか?

小柳 監督もおっしゃっていたように、ゲーム的な要素が面白いなと思いました。その一方で、ゲーム的な要素をどこまで映像に落とし込めるか、そもそもそこまでゲーム的な要素を取り入れるべきなのかは、かなり悩みましたね。

阿保 この世界はゲームの世界なのか、あるいはちゃんとした現実世界なのかという部分ですよね。

小柳 あの世界はあの世界で現実に存在しているはずなのに、レベルアップや経験値という概念が当然のように言葉として出てくるんです。じゃあ、どこまで現実世界として描いて、どこまでゲームっぽく描くか。これは割と最後のほうまで悩みましたよね。

阿保 ゲーム的な要素って、すごく便利であると同時に頼り切ってしまうとストーリー展開が単調になるおそれもあるんです。たとえば、主人公が苦難の道を乗り越えて行くというシチュエーションに対して、ゲーム的な要素が強すぎると、「詠唱ひとつで強大なスキルが使えるなら、もうこれで済んでしまうのではないか」となってしまうんです。下手をするとストーリーそのものが崩壊してしまう。そのバランスをどう保つかは、シナリオの段階から細かく調整していきました。

――ステータス画面やスキルツリーなど、説明は少なめに、映像で見せるという手法が光っていると感じました。

阿保 ステータスやスキルの説明に関しては、最初からセリフで説明するというよりは画面上に盛り込んでいくつもりでした。

小柳 「レベルが上がりました」「こんなスキルを覚えました」とセリフで説明してしまうとそれだけで尺が奪われてしまいますし、ストーリーの流れをぶった切ってしまうので、なるべく表示されている画面でわかるようにしています。テキストもしっかり画面に書き込まれているので、気になる方はぜひ一時停止をして読んでいただきたいですね。

――監督はもともとあまりゲームをプレイされないとおっしゃっていましたが、ステータス画面やスキルツリーなどの画作りは、どなたのアイデアなのでしょうか?

阿保 一緒にやっている若いスタッフたちに(ゲーム画面)開発のメインスタッフとしても関わってもらって、アイデアを出してもらいました。自分はその舵取りをするという立ち位置でした。

小柳 参考用のゲームがいくつかありましたよね。

阿保 そうですね。いろいろ参考になりそうなゲームをいただいたんですが、なかなか自分がプレイするまではいかなかったですね(笑)。

――小柳さんはゲームをされるほうですか?

小柳 RPGは知識程度ですね。あまり向いていなくて、シューティング系やFPSばかりプレイしています。

――ストーリーについてもうかがえればと思います。アニメ化する上で、軸にしたいと考えた部分は?

阿保 異世界に心を躍らせる尚文が、周囲に貶められていきます。悲劇が尚文の心を変えていくわけですが、それでも自分を見失わずに突き進んでいく、尚文の強い心を描きたいと思いました。シナリオにも、決してひるまず敵に立ち向かっていく尚文の姿を入れ込んでいただきたいとお願いしました。

小柳 もうひとつ監督と決めたことは、やはり中心となるのは尚文とラフタリアだろうということでしたね。2クールという尺では原作のエピソードをすべて描くことはできないですし、じゃあどこに焦点を絞るかとなると、お客さんに一番興味を持って受け入れてもらえるのがこの二人の物語だと思ったんです。

阿保 フィーロとメルティもいるんですけどね。でも……。

小柳 そうなんですよ。もちろんフィーロとメルティにも頑張ってもらうんですが、決してこの作品は「ハーレムもの」ではないので。尚文が異世界で成り上がっていこうとするきっかけとなるのも最初はラフタリアですし、尚文がひとりで勝手に頑張っていこうと思ったわけではないんです。だからこそ、ラフタリアの存在をどう魅力的に描くかが、尚文の問題意識にも繋がっていくので、その描き方については相談に相談を重ねました。

――原作サイドからは何か要望などはありましたか?

阿保 一度、アネコユサギ先生と食事をする機会を設けていただいて、そのときに印象的だったのが四人の勇者についての考え方でした。「この物語は四人の自分なりの正義を持った主人公たちの物語なんです」とのことで、それぞれの正義がぶつかりあっているだけで、必ずしも誰かひとりの正義が正義なのではないのだと。そういった思いをちりばめながら四人の勇者を構成しているとうかがって、その四者の関係の中で尚文が自分なりの答えを見つけていく物語にしていければいいなと思いました。

小柳 僕もその席に同席させていただいて、まさに同じようなことを感じました。この四人って「四勇者が一緒に行動できない」という制約がなければ、たぶん尚文がうまいことパーティをまとめていたと思うんです。それができなかったせいで仲違いしてしまっただけなのだと。できる限り、四勇者の絡みを補完できたらいいなと思いました。とはいえ、四人の関係は一筋縄ではいきません。でも、決して尚文以外の三人を嫌いになってほしいわけではないんです。なるべく「アホかわいい」と思っていただけるような描き方を心がけるようにしました。

――さて、いよいよ序盤のクライマックスともいえる「波」との戦いに突入していきます。こちらの見どころを教えていただけますでしょうか。

阿保 シナリオに盛り込んでいただいたのは、尚文は戦略的に勝つことはできないかもしれないけれど、降りかかってきた災いに対して知恵を働かせた戦い方はできるはず、そこを何か描写してほしいというものでした。それが尚文の“守る”戦い方であり、ほかの勇者との違いにもなるので、戦闘の描写そのものももちろんですが、三勇者との戦い方の違いも楽しんでいただけたら嬉しいです。

小柳 「波」との戦闘回の脚本を担当されたのは第2話に引き続き江嵜大兄さんなのですが、ロケーションとシチュエーションをしっかり固めないといけない重要な話数だったので、「絵コンテにお任せします」ではなく脚本陣で監督のイメージを共有し、脚本段階で尚文の立ち振る舞い、人を守る戦いを細かく描写するようにしました。村全体の描き方にも注目していただきたいですね。

【取材・文:岩倉大輔】

■TVアニメ「盾の勇者の成り上がり」

放送:AT-X 毎週水曜22:00~(リピート放送有り)

   TOKYO MX 毎週水曜25:05~

   テレビ愛知 毎週水曜26:35~

   KBS京都 毎週水曜25:05~

   サンテレビ 毎週水曜25:30~

   TVQ九州放送 毎週水曜26:35~

   BS-11  毎週水曜25:30~

配信:ひかりTVにて毎週水曜23:30~ 独占先行配信 その他随時配信

スタッフ:原作…アネコユサギ(MFブックス「盾の勇者の成り上がり」/KADOKAWA刊)/原作イラスト…弥南せいら/監督…阿保孝雄/シリーズ構成…小柳啓伍/キャラクターデザイン・総作画監督…諏訪真弘/アニメーション制作…キネマシトラス

キャスト:岩谷尚文…石川界人/ラフタリア…瀬戸麻沙美/フィーロ…日高里菜/天木 錬…松岡禎丞/北村元康…高橋 信/川澄 樹…山谷祥生/メルティ…内田真礼

リンク:アニメ「盾の勇者の成り上がり」公式サイト

    公式Twitter・@shieldheroanime