新作&おすすめアニメのすべてがわかる!「月刊ニュータイプ」公式サイト

rssボタン

「盾の勇者の成り上がり」脚本担当・江嵜大兄×田沢大典対談【前編】「大事なのは、キャラクターが嘘くさく見えないようにすること」

2019年03月22日 18:30配信
「盾の勇者の成り上がり」脚本担当・江嵜大兄×田沢大典対談【前編】「大事なのは、キャラクターが嘘くさく見えないようにすること」

「盾の勇者の成り上がり」より

(C)2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

現在、好評放送中のTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。

第9回は、各話脚本を担当している江嵜大兄さんと田沢大典さんにお話をうかがいました。前編では、1クール目の前半を振り返りつつ、キャラクター造形やシナリオづくりの裏話について語っていただきます。

――お二人はどういた経緯でこちらの作品に参加されることになったのでしょうか?

江嵜 シリーズ構成の小柳(啓伍)さんと別のアニメ作品でご一緒した縁があり、小柳さんのお誘いで参加することになりました。一緒に作品を作りたいですねという話を二人でしていたので、今回参加できてとても光栄です。

田沢 私のほうは、もともとキネマシトラスさんの別の企画に参加していて、そのときに社長の小笠原(宗紀)さんとご縁ができたのがきっかけで、今回、小笠原さんからお声がけいただきました。

――原作にはどのような印象を持ちましたか?

江嵜 異世界作品というと、主人公がつらい人生を送っていたり、事故が原因で転生したりするイメージがありますが、「盾の勇者」は大学生活を満喫していたのにいきなり異世界に召喚され、仲間に裏切られて傷つけられ、そして転落していくという逆境からスタートするところが新鮮でした。飛び抜けた力があるわけではないけれど、それでも必死に生きようとしている。その「生き抜く」というテーマに魅力を感じました。

田沢 「盾の勇者」は主人公に困難が訪れ、その困難をどう乗り越えていくかという作品で、実はすごくベーシックで王道の物語なんですよね。「小説家になろう」の初期の作品なので、今“なろう系”として流行っている異世界作品とは少し毛色が違うのですが、逆にクラシカルなファンタジー作品に近くて、とても馴染みやすかったです。

江嵜 尚文が生き抜くためにあくどくお金を稼ごうとするところや、誰に嫌われても構わないと覚悟しているところも魅力的ですね。生きていれば尚文のように何かを乗り越えたいという状況になることがありますし、目標のために手段を選んでいられないという考えに辿りつくこともあると思うんです。そこが共感を得られているポイントだと感じたので、大事に描きたいなと考えていました。

田沢 結果的に露悪的になってしまうんですが、尚文の根っこはとても真っ当なんですよね。だからこそ迷うし、間違える人なんです。その人間くささがャラクターとしての魅力に繋がっているのかなと。ただ単に強いだけとか、ただ単に悪に染まるだけのキャラクターだったら、きっと多くの方の共感は得られなかったと思います。

――シナリオを書くにあたって、監督や小柳さんからどのようなオーダーがありましたか?

江嵜 印象に残っているのは尚文の人物造形について、「自分で戦うことはできないけれど、生き抜く力は誰よりも強い」という言葉をいただいたことですね。戦い方に制限はあるのですが、その分、やり方によっては尚文なりの戦いが見せられるぞ、と。実際、監督から間接的な攻撃ならできるというアイデアをいただいて、それが形になったのが第3話でした。ゾンビ兵を引き連れて見張り台の上から火をつけるシーンは、尚文らしさが出ていてよかったなと思います。

田沢 第3話は監督がこだわっていましたよね。もっと派手にしたい、尚文ならではのアクションがどうしてもほしいと。

江嵜 波との戦いはいろんな案が出ましたね。まずはどんな能力があるか盾の能力を整理して。でも、最初の波で使えそうなものはない、じゃあどうする? 村が燃えているはず、だったら松明を使おう……という感じで、シーンの状況や尚文の行動をひとつひとつ確認しながらあのシーンを組み上げていきました。

――田沢さんのほうはいかがですか?

田沢 ロードムービーがやりたいと言われたのが印象的でした。この作品の大きな魅力のひとつが、行商です。キャラクターが生きているという実感とお金稼ぎの面白さを出すために、この行商をロードムービー的に描いてほしいというオーダーがありました。自分が担当した第5~8話は、特にロードムービー感を大事にして尚文たちがこの世界に地に足を付けて生きている感じを出すようにしています。

江嵜 それから共通してあったのが、モノローグを減らして説明台詞を極力排除することでしたね。モノローグがどんどんなくなっていきました(笑)。

田沢 設定がたくさんある作品でそんなにチャレンジングなことをするの!?と思いました(笑)。覚悟のいることですし、お客さんを信じないとできないことですからね。最初はびっくりしました。

江嵜 ただ、表情芝居や雰囲気で見せるほうが僕も好きなので、出来上がった映像を見ると、大変ではあったけれど結果的に挑戦できてよかったですね。

――お二人がシナリオを書く上でこだわったことはどんなことでしょうか?

田沢 キャラクターが嘘くさくならないようにすることですね。台詞ひとつとっても、「この状況でこの台詞は妥当か」と細かく検証していって、意見を出し合いました。たとえば、第11話でラフタリアが三勇者に台詞をぶつけるシーンも、どんな感情が先にくるのか、その上でどんな台詞を放つのか侃々諤々の話し合いをしました。

江嵜 それでいうと、尚文のキャラクター造形もそうですね。もともと原作の尚文は転落してからも普通の大学生っぽいところがあるのですが、アニメでは覚悟を決めてからは性格がぶれないようにしたので、大人びた印象になりました。

田沢 私は第4話の途中ぐらいから制作現場に合流したので、最初は少し戸惑いました。尚文君、ずいぶん大人っぽくなりましたねと(笑)。

江嵜 わかります。僕も最初の頃はかなり学生っぽく描いていましたから(笑)。

田沢 初期の修正で多かったのは、まさにここですよね。尚文が子どもっぽいので、もっと覚悟をもった人として書いてくださいと小柳さんや監督からオーダーをいただきました。

――個別の話数についても伺っていきたいと思います。第2~4話は江嵜さんが担当されていますが、このブロックで重視されたことはなんでしょうか?

江嵜 ひとつはラフタリアが守られる立場から守る立場になっていく過程ですね。その成長はしっかり描きたいと思いました。印象に残っているのは、第2話でラフタリアがお子様ランチを食べるシーン。あそこでラフタリアが涙ぐむんですよ。奴隷商に売られてひどい環境下で生きてきたので、まともな食事なんて食べられなかった。だから、尚文がお子様ランチを食べさせてくれたことに感情が溢れてしまったんです。あのシーンはグッときましたし、ここで涙ながらにご飯を食べたからこそ、ラフタリアは強くなれたのかなと思います。

田沢 第4話もすごくよかったですね。特に決闘のあとの尚文とラフタリアのやりとり。

江嵜 第4話の決闘のところで言うと、原作では尚文がわりとすぐに成長したラフタリアを認識するのですが、アニメでは尚文の絶望した心が少しずつ解けていくさまを表現したかったので、ラフタリアが徐々に成長していくように見せています。

田沢 最初に尚文が近づいてくるラフタリアを拒絶しますよね。あそこでラフタリアが一瞬ビクッとなる芝居が入るのがよかったですね。不信感の塊になった人間がそう簡単に心を開くはずないですし、何より大の大人に拒絶されるわけですから、ラフタリアにとってとても恐ろしいことだと思うんです。でも、ラフタリアは勇気を持って一歩踏み出した。そのラフタリアだからこそ、尚文は心を開いたんだろうなと。

江嵜 そのあと、尚文にスポットライトが当たる形でシーンを区切っているのですが、あれは尚文を囲むスポットライトの中に幼いラフタリアが入ることで、尚文の閉ざされた心の中に入ったというふうに見せたいよねということで、そういう演出をさせていただきました。

――脚本の段階からその演出を提案されていたんですか?

江嵜 そうですね。もともと舞台のお仕事をやっていた経験があるので、このアイデアを出させてもらったんです。

田沢 これはいい!って思いましたね。江嵜さんのアイデアのおかげで、カースシリーズを発動するときのような心情芝居は、ある種の舞台っぽさで見せることになったんです。

――第4話のラスト、尚文とラフタリアの関係性が深まったあとは画面の色味や明るさも変わりましたよね。

田沢 あれは監督のこだわりですね。意図的に色味を変えたとおっしゃっていました。アニメーションという媒体において、味覚を取り戻す表現ってとても難しいので、映像でわかるように色で変化を補強していたのかもしれないですね。

江嵜 あるいは、尚文は味覚だけでなく視覚的にも影響が出ていたのかな、と。

――次回は物語の中盤以降についてうかがいたいと思います。その前に、まもなく放送・配信される第12話の見どころを教えていただけますか?

田沢 第12話は1クール目の終わりとして、「盾の勇者」として“らしい”区切りのつけ方ができました。最初から最後までクライマックスなので、ずっと目を離さないでいただきたいです。

【取材・文:岩倉大輔】

■TVアニメ「盾の勇者の成り上がり」

放送:AT-X 毎週水曜22:00~(リピート放送有り)

   TOKYO MX 毎週水曜25:05~

   テレビ愛知 毎週水曜26:35~

   KBS京都 毎週水曜25:05~

   サンテレビ 毎週水曜25:30~

   TVQ九州放送 毎週水曜26:35~

   BS-11  毎週水曜25:30~

配信:ひかりTVにて毎週水曜23:30~ 独占先行配信 その他随時配信

スタッフ:原作…アネコユサギ(MFブックス「盾の勇者の成り上がり」/KADOKAWA刊)/原作イラスト…弥南せいら/監督…阿保孝雄/シリーズ構成…小柳啓伍/キャラクターデザイン・総作画監督…諏訪真弘/アニメーション制作…キネマシトラス

キャスト:岩谷尚文…石川界人/ラフタリア…瀬戸麻沙美/フィーロ…日高里菜/天木 錬…松岡禎丞/北村元康…高橋 信/川澄 樹…山谷祥生/メルティ…内田真礼

リンク:アニメ「盾の勇者の成り上がり」公式サイト

   公式Twitter・@shieldheroanime