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頑張らないことを全肯定!「LAIDBACKERS -レイドバッカーズ-」監督・橋本裕之×脚本・上江洲誠 対談

2019年04月12日 18:33配信
頑張らないことを全肯定!「LAIDBACKERS -レイドバッカーズ-」監督・橋本裕之×脚本・上江洲誠 対談

4月18日 (木)までの2週間限定で公開中の「LAIDBACKERS -レイドバッカーズ-」

(C)おばけ屋/LAIDBACKERS製作委員会

4月18日 (木)までの2週間限定で公開中の本作、現在発売中の「月刊ニュータイプ5月号」でも描き下ろしのイラストとともに対談が掲載されているが、あまりにも会話が弾んでしまったこの取材。もったいないのでWebNewtypeでも掲載します!

◆ぼくらが出会ってタッグを組んだ理由

――まずは企画の成り立ちを聞かせてください。

上江洲 「蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-」と「結城友奈は勇者である」の仕事が終わって、僕がシリアスなストーリーものに完全に疲弊していたタイミングに、フライングドッグの南(健)プロデューサーが「次は明るく楽しい作品をやろうぜ!」と声をかけてくれたのが始まりです。しかもその時点でスタジオ五組さんのスケジュールが取れていた。じゃあ、「じゃりン子チエ」みたいな日常コメディの作品をやりませんか、と。で、僕の原案が大体まとまったところで、橋本監督に参加してもらうことになりました。僕は「美少女もの」が苦手なので、得意な方にお願いしたかったんです。

橋本 「魔法少女育成計画」の監督をやっているときに、南さんに「アルバイトしない?」と。それで現場に連れてこられたら、監督をやってほしいと言われて、全然「アルバイト」じゃなかった(笑)。

――お2人のお仕事での付き合いはどこから?

上江洲 岸(誠二)監督の「デビサバ」(「DEVIL SURVIVOR 2 the ANIMATION」)かな。

橋本 ですね。ただ、その前から自分は上江洲さんの名前はずっと知っていました。自分が原画で参加した「うたわれるもの」のときに、初めて名前を意識したんです。「上江洲誠」っていう字面が、ものすごい大御所感があるじゃないですか。だからきっと大御所なんだろうと。

上江洲 これ載せてください(笑)。文字が強いんですよ、僕の名前。

橋本 でもしばらくお仕事では全然一緒にならなかったですね。「デビサバ」に自分は各話の演出として参加して、絵コンテも描いていたんですけど、普通は絵コンテはシナリオが上がってから発注されるんですよ。でも「デビサバ」のときは時間がないこともあったし、自分もやるんだったらシナリオから関わらせて欲しいタイプだったので、終盤の方はホン読み(シナリオ会議)に参加していたんです。

上江洲 ホン読みに出るとシナリオの内容が把握できるから、絵コンテの作業が速くなるんだよね。それが岸(誠二)監督のやり方なんです。で、そうした経験をしたあとも、橋本さんとはずっと仲良くしていたんです。

橋本 「アルペジオ」も演出をやらせてもらったし、劇場版のときはやっぱり、シナリオ会議にも参加して。

上江洲 で、オリジナル企画で割と自分の自由にできることだったので、監督はメカと美少女が得意な橋本さんでどうでしょうと言って快諾していただきました。

◆ポイントは鈴木次郎さんなんです!

――完成した映像は、アニメらしい弾けた描写と、地に足のついた描写の絶妙なバランスが印象的でした。

橋本 実写ではどう撮ってもリアルさ、実写らしさは残る感じですけど、アニメのいいところってファンタジーらしいところはとことんファンタジーらしく、それでいてリアルな表現もできるところです。そこが楽しい。

上江洲 今回はシナリオ上でも、アニメらしいご都合で描写してしまわないように、一手間加えています。たとえば戦いが始まるにしても「周りの人間はどうした?」「逃げた!(だから戦っても大丈夫)」みたいなやりとりをちゃんと入れて、リアリティを守る。どこか懐かしい雰囲気がある企画でありつつ、古臭いアニメにはなっていないのは、そうした工夫をしているからだと自負しています。

橋本 古いアニメにはしたくないとは、僕も考えていました。

上江洲 モチーフだけですよね、懐かしさは。だからキャラクター原案も鈴木次郎さんなわけだし。

――鈴木次郎さんは企画のポイントだと。

上江洲 超ポイントです。ここは文字を大きくしてほしい(笑)。とにかくカッコいい絵描きさんに頼みたかったんですよ。

橋本 舞台が京都なのに、京都にはあまりいなさそうなデザインの服なのがいいんですよ。

上江洲 京都どころか、残念ながら日本のどこにもいない(笑)。

橋本 そう。そこがすごくいいんです。これが存在できるのがアニメなんですよ。青い髪で、浮いた格好をして京都を歩いていても、「こんな人もいるのかな」ぐらいに収まる。実写だとこうはならない。

上江洲 次郎さんのデザインのアイデアはぶっ飛んでるんです。注文していたものよりも、斜め上のものが上がってくる。

橋本 必ずオーダーから少し外して、びっくりさせようとするんですよね。そして、いい意味で、現実に寄せていない。寄せてほしいところはちゃんと寄せてくれている感じがあるんですが。そのバランス感覚がいい。

上江洲 彼女は芸術家だと思いますよ。センスがすっ飛んでる。

橋本 リアリティありそうな服を描いたキャラクターでも、髪の毛のハイライトは円形のようなデザインで描いてある。そうした処理もなかなかやれないことですよね。

上江洲 アーネリアのデザインなんて「室内犬」「ポメラニアンの雑種」と伝えたら、あのデザインが上がってきたんですよ。どう見てもスポンジだろ! って。

橋本 あんなに骨格のしっかりした絵をお描きになるのに、どういう骨で成り立っているのかわからない犬を描いてくる。そこがいいんですよね。

上江洲 鈴木次郎という人、好きですね。本当に素晴らしいと思います。僕らのことが嫌いでも、次郎さんの絵を見に来てください!

◆いつの間にか転生の軸足が反対になっている世の中に本作をぶつける意義

――話題を変えさせていただくと、逆転生ものですよね。いや、僕の世代から、異世界から現代に来るのは「逆」じゃなくて普通な感覚もするんですが(笑)。

上江洲 すごいよな~。僕としては「オバケのQ太郎」タイプの話と思って作ってたのに、今はそう言わないといけないのかと。長生きしてしまいました

橋本 たしかに。

上江洲 ブームが1.5周ぐらいしちゃった。

――異世界転生もののブームに対するカウンター的な意識はなかったですか?

上江洲 なかったです。オーソドックスな設定のつもりで作っていました。

橋本 ただ、基本的に異世界転生をして、すごい能力の持ち主になったとしても、向こうで戦ったり、何かをしなければいけないですよね。でも逆に異世界からこちらの世界にきたら、戦わなくてもいいし、そんなにがんばらなくても最低限生きてはいける。本当はこの世界もいい世界なんだろう、みたいなことは意識していました。

上江洲 現実世界のよさをコメディとして扱おうと考えたのはありますよね。底意地が悪いからブラックユーモアにも見えてしまうのかもしれないけど、この世界は好ましい、楽しい、いいものだなと思っている、その感覚をアニメにしたかった。

橋本 なんだかんだ言って日本は平和だなという感じですよね。

上江洲 そう言うと怒る人もいるのかもしれないけど、すぐそこに戦場があるような国に比べると日本は平和で、その平和さはよくよく考えると不思議だな、と。僕は海外を旅するのも好きだから、なおのことそれは、感覚として思うわけです。その「変な国に生きてるよね」という感じを、作品で描きたかったんです。

――ドタバタコメディと見せかけて、戦争があった国から転生してきた少女たちの感覚は生々しいところもありますよね。

上江洲 取材でその話をしてくれたのはキミだけだ。この作品のテーマはソレです!!

――う、うーん、ホントですか?(笑)。

上江洲 いや、でも本当にそれよ。試写で見たときに、自分でもちょっと感動したんです。日本で平和を甘受している自分たちのことをあらためて考えさせられる。Yahoo 映画レビューにそう書こうと思いました!

橋本 自作自演ですかっ!(笑)

――監督としてはそのあたりは意識されて?

橋本 もともと「ちゃんと作る。でも、しっかりと何もかもを決めこまない」という狙いがこの作品を手がける上ではあったので、そうしたことも意識しつつ、ガチガチに気張りすぎないようにしました。それとつながりますけど、僕としては「がんばるだけが楽しくやることじゃない」みたいなことが、ひとつ、この作品のテーマですかね。

上江洲 なるほど。……がんばらないことを肯定するアニメです!

橋本 さっきと言ってることが変わってる!(笑)

上江洲 でもそれも真面目にね。また外国の話になってしまうけど、外国の人たちって、仕事ぶりがゆるいんです。ちょっと料理が出てくるのが遅いから何だ、会計を食事しながらやるけど何だ、みたいな感じ。神経質で気弱な性格だった僕が、そういう生き方に触れて、随分と救われた思いがある、やっと肩の力を抜いて生きていけるようになった。ハラミや舞の性格には、そんな経験が反映されています。でも舞は実際の映像になって、僕が思っていたよりも跳ねましたね。アニメ映えしました。主役みたい! とアフレコのときに思った。

橋本 舞は可愛いですよ。主役っぽいのは、シナリオの段階からですけどね。今回は舞の話だな、と。

上江洲 舞だけが今回、解決しなきゃならない心の問題があるからね。いちおう、アーネリアにもある……というか、ストーリーの本線はアーネリアのはずなんだけど、見た目がマスコットだから、サブプロットの舞の方が目立つ。

橋本 でも舞ばかりに出番が集中することなく、巧みにハラミに視点が戻してあって、その結果、らんの出番も増えて主役感がちゃんと出ている。丁寧な職人技を見せてもらいました

上江洲 おじいちゃんの匠の技ですよ。なかなか評価されないけどね。もっとわかりよくド派手な、サプライズまみれの話を書いて褒められたいですね(笑)。

橋本 いやそれ、昔、言われてたじゃない!

上江洲 それもそうか(笑)つまり、悪目立ちしていた不良が、15年、シナリオを書き続けて、いぶし銀のおじいちゃんになった。その成果が「レイドバッカーズ」ということかな。

橋本 ある意味、アニメを見慣れた「プロ」仕様のアニメという結論ですかね(笑)。

取材・構成:前田久(前Q)

「LAIDBACKERS -レイドバッカーズ-」

4月18日(木)まで2週間限定公開中

スタッフ:監督…橋本裕之/脚本…上江洲誠/キャラクター原案…鈴木次郎/チーフディレクター…佐藤清光/キャラクターデザイン・総作画監督…土屋圭/音楽…kz(livetune)/音響監督…山口貴之/アニメ―ション制作…Studio五組/配給…クロックワークス/製作…LAIDBACKERS製作委員会

キャスト:三乃ハラミ…日高里菜/舞坂舞…茜屋日海夏/草薙・K…大地葉/アーネリア…内山夕実/らん…長縄まりあ/本天沼久美…花守ゆみり/鷺ノ宮優子…藤田咲/ロン…福山潤/レナード…小西克幸

リンク:「LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-」公式サイト

    公式Twitter・@obakeya_LB

※上江洲誠が原作を担った漫画「神サー!」がコミックNewtypeにて4月10日より連載開始。こちらもよろしく!

リンク:コミックNewtype「神サー!」