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劇場アニメーション「HELLO WORLD」舞台挨拶 TOHOシネマズ上野編 レポート①

2019年10月10日 14:41配信
劇場アニメーション「HELLO WORLD」舞台挨拶 TOHOシネマズ上野編 レポート①

劇場アニメーション「HELLO WORLD」舞台挨拶 TOHOシネマズ上野より

10月8日(火)、TOHOシネマズ上野で、全国東宝系にて大好評ロードショー中のオリジナル劇場アニメーション『HELLO WORLD』の舞台挨拶が行われました。同作は5日から今週末13日にかけて、様々な劇場で舞台挨拶を開催中。8日は、デザインワークスとして参加した小松田大全さんがゲストとして登壇し、伊藤智彦監督と『HELLO WORLD』制作の裏側について楽しいトークが繰り広げられました。そのトークの様子をレポートします。

 伊藤監督と小松田さんは、ともにカラスのぬいぐるみを抱えての登壇。進行役の武井克弘プロデューサーが、小松田さんに「デザインワークスという肩書で参加いただきましたが、今回はどういうものを……」と質問するところからトークは始まりました。

 今回、小松田さんがデザインをしたのは京都市内の上空を飛んでいるドローン、自動修復システムが擬人化した“狐面”、その狐面が合体した第二形態“巨大な手”と第三形態で人形になった“九尾の狐”。伊藤監督が「始めはドローンだけお願いしていたんですが、(漫画家の)藤田和日郎先生が描いた狐面を(アニメーション用に)まとめ直す必要がでてきて、それで小松田さんにまとめてお願いしました」と依頼の経緯を紹介すると、小松田さんは「伊藤監督とは、学生時代にアニメ制作サークルで一緒だったころからの友達なんですが、知り合って23年ぐらいたって初めて一緒に仕事をしました(笑)」とふたりの意外な関係を明かしました。

 『ブブキ・ブランキ』で監督、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で副監督を務めている小松田さん。『HELLO WORLD』の感想を聞かれると「最初にビデオコンテをもらったんですが、世界の見せ方がめっちゃうまいと思って。音楽にのせて、京都という町にふんわりと着地していくような感じが『すごいな』と思いました」と作品の第一印象を語り、「伊藤監督は音響まわりのディレクションも自分でやるんですよね。収録を見学をさせてもらったんですが、役者さんを緊張させない話しかけ方とかうまいなぁと思いました」と伊藤監督の仕事ぶりで参考になったポイントを挙げました。

 伊藤監督によると、今回はキャストのスケジュールがまちまちで、岩浪美和音響監督が立ち会えない時には、自らディレクションして収録をしたとのこと。「(役者さんへのディレクションは)細田(守)監督の真似ですね(笑)。『いまのもよかったけど……もうワンテイクいこうか』という感じで粘るんです」と収録時の工夫のひとつを紹介した。

 伊藤監督は細田監督の『時をかける少女』と『サマーウォーズ』で助監督を務めているので、いわば弟子筋。伊藤監督は「それがわかると(上賀茂神社をモデルにした特殊な空間シーンで)なぜ輪郭線を赤にしているか、元ネタがわかっちゃいますね(笑)。『時をかける少女』のタイムリープのシーン、『サマーウォーズ』のOZ空間などが輪郭線を赤にしているんです」と、ビジュアルのヒントが細田作品にあることを明かしました。その上でと「こういうのはひとつの技法なので、みんなやればいいと思います(笑)。まあ(参加していた)自分にはやるだけの資格はあると思いますが」と若干のぶっちゃけトークで観客の笑いを誘いました。

 ここから話題は、アニメーションのデザインをめぐって改めて深まっていきました。

「小松田さんはデザインを提案する時に、モチーフに込めた狙いや思惑をいろいろ語ってくれるんです。だから(打ち合わせしていると)こちらがあまり考えていなかったことが露呈してしまうんです(笑)」と小松田さんのアイデアの量が、作品の厚みにつながったことを冗談交じりに話す伊藤監督。

 一方、小松田さんはその厚みについて、これまでの経験からくるものだと説明しました。「オリジナル作品に参加することが多いのですが、例えば今石洋之監督の作品に参加すると、ひとつのデザインに二重三重四重ぐらいの意味性をもたせているんです。それぐらいのせないと、デザインとして成り立たないというのを体験しているんです」

 たとえば狐面は第二形態、第三携帯と変化していきます。小松田さんはそこでどのようなことを考えたかというと……。

「狐面が合体して手の形になるなら、5本の指があるということはどういうことかを考えるんです。そうしたら人間が大の字になると、やはり5つに枝分かれしているわけで、そうやってモチーフを重ね合わせていきます。さらにそこから九尾の狐になるのだがら、(5から9へと)『増えていく』というイメージが鍵になるな、とか。こういう考えを文字で書き連ねます。それは自分のための覚書きだけの時もあれば、監督などに見せる時もあります。今回はとにかく伊藤監督に、(こういうアイデアの)ボールを投げ続けることが大事だと思ってやっていました」

 さらに小松田さんは、藤田さんの原案からどのように設定をまとめたのかも解説してくれました。

「藤田先生の狐面の原案は、非常にオーソドックスな形状で描かれていて、そこに大きな目が現れるという基本的なアイデアもそこで固まっていました。なので狐面そのものは、藤田先生のテイストを崩さないように描きました。第三形態の大きな人型の原案は、横向きの姿で立ち上がっていて、それがそのまま真っ黒な夜の中に溶け込んでいるというような非常に印象的な絵でした。それを見て、狐面が“デザインの入り口”なら、こちらが“デザインの出口”なんだなと。そういう形で、、藤田先生のほうからしっかりしたコンセプトが提示されていたので、僕はそこの間を埋めていく感じでした」

 こうした小松田さんのお話を受けて、伊藤監督は「そこから実際に設定にまとめていく時には、(小松田さんから)いっぱいアイデアを投げてもらいました。ここまで考えてくれる人はなかなかいないので、助かりました」と改めてその仕事に感謝していました。

 トークの中で興味深かったのは、藤田さんの原案では狐面は最初、和装だったというエピソード。「二人羽織をしているような感じでした」(伊藤監督)。これの採用が見送られたのは、『HELLO WORLD』が3DCG作品だったからだそうです。小松田さんも「僕も3DCG作品をやったことがあるのでわかるんですが、その時も現場から和装は絶対やめてください、といわれました」といかに3DCGにとって和装が難関かを力説しました。

 3DCGのモデルに衣装を着せる場合、衣装が動いて体部分にめり込んだりしないように、体と衣装の接触を判定するポイントを仕込むんだそうです。体にある程度密着している服装の場合は、襟足とか袖口にだけポイントを仕込めばいいのですが、体をふわっと包んでいる和装になると、体中に判定するポイントを仕込まねばならず、日本の今の現場ではかなりハードルが高い――というのがその理由だそうです。

 そこで狐面は洋装になったのですが、小松田さんが最初に考えたのは、「ルールを守る側なので、番人ぽい雰囲気が出るように」(小松田)、『銀河鉄道999』の車掌さんのようなビロードの制服姿だったそうです。伊藤監督はそれに対して「もっと日常に存在していそうで、そこに違和感が生まれるようなものにしたい」と応じ、そこから作業員姿の狐面が生まれたとおことでした。

 と、そこで伊藤監督が「スーツというアイデアもありましたけれど、さすがにエージェント・スミスっぽすぎるだろうと(笑)」と発言したことで、話題は『HELLO WORLD』に仕込まれた『マトリックス』ネタのほうに向かいました。

 伊藤監督がネタを明かしたのは、直実のスクールバッグについて。「言及しているひともいましたが、直実のバッグに書かれている『THE ONE』の文字は『マトリックス』からの引用です。その脇に書かれた小さい文字も『マトリックス』由来です。そのあたりOKAMOTO'Sさんは、ちゃんと気づいていましたね」(伊藤監督)。

 なお「THE ONE」の脇にある、小さな文字は「There’s a difference between knowing the path and walking the path.」『マトリックス』の主要人物モーフィアスのセリフからの引用になっています。

 現在映画公開と併せて、スピンオフ作品『ANOTHER WORLD』がひかりTVなどで配信中。小松田さんはこの第2話の絵コンテも担当したそうです。スピンオフの制作は、『HELLO WORLD』のまさに追い込みの最中に並行して行われていたそうです。

 小松田監督は「伊藤監督の絵コンテ修正が、ここまでカット数を減らしていくのかというぐらい勢いがすごくて。男らしい勇気を見ましたね(笑)」と裏話を披露。伊藤監督からも「まだ本編もまだ終わっていない中、いかに新作BG(背景)を減らしていくかが勝負でした」と追い込みの苦労話も飛び出しました。

 恒例のプレゼント抽選会(今回のプレゼントは伊藤監督・小松田さんのサイン入りクリアファイルでした)を挟み、舞台挨拶はおふたりの挨拶で締めくくられました。

 小松田さんは「劇場で2回目に見た時、瑠璃視点で見まして、その時に多くのことに気づくことができて、脚本の野﨑(まど)さんと伊藤監督が練り込んで、分厚い物語になっていることを実感しました。みなさんも、『今度はこのキャラクターの視点で見てみよう』と思いながら何度でも劇場に足を運んでもらえたらと思います」と、作品の奥行きが本作の魅力であることをアピール。伊藤監督は「『何度でも』とはエンディングの主題歌『新世界』でも歌われているとおりですね(笑)」と笑いを誘うと「なるべく細く長くロングランしていくたいので、ご協力をお願いします」とファンに呼びかけました。

今週末は大阪、名古屋、そして舞台となった京都の劇場をめぐる舞台挨拶ツアーも開催。中部・関西のファンには楽しみな週末になりそうです。

「HELLO WORLD」舞台挨拶スケジュールチケット等詳細は、各劇場のWebサイトにて確認してください。

【取材・文:藤津亮太】

■HELLO WORLD

●全国東宝系にて公開中

リンク:「HELLO WORLD」公式サイト

    公式Twitter・@helloworld0920  

    「TOHO CINEMAS」公式サイト