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映画「海辺のエトランゼ」大橋明代監督インタビュー「日常をていねいに描きたい」

2020年09月11日 12:00配信

映画「海辺のエトランゼ」本日公開
映画「海辺のエトランゼ」本日公開
(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

離島でのゆっくりした時間の流れのなかで紡がれる繊細な恋愛を描いた人気漫画「海辺のエトランゼ」が劇場版アニメに。監督・脚本・コンテを担当するのは、原作者・紀伊カンナ先生と親交がある大橋明代さん。原作ファンにとっては安心&期待のアニメ化と言えるはず。大橋監督に作品への思い、制作へのこだわりなどをうかがいました。

――原作に初めて触れた際の感想をお聞かせください。

大橋 コミックスが発売されたときにいただいて、「知っている人が描いたコミックスをもらったー!」というよろこびがありました。大好きな紀伊(カンナ)さんの絵がいっぱいあって……漫画なので当然なんですけど(笑)、うれしかったです。アニメ化するにあたっては、そういう視点ではないところで見なければと、「春風のエトランゼ」(「海辺のエトランゼ」の続編)と続けて読み返し、何げない日々のなかで物語が進んでいくのが魅力だと改めて感じました。

――アニメ化するにあたり、原作のどのようなところを大切にしようと考えましたか?

大橋 2段階あって、シナリオの段階ではキャラクターの感情の流れを改めて追い直す、という作業をしました。「海辺のエトランゼ」の1話は読み切り作品だったこともあって、完結している感覚があったんです。なので、続編の「春風のエトランゼ」で出て来る回想のエピソードも含めつつ、(橋本)駿と(知花)実央の感情の流れがスムーズに見えるように、足したり引いたりという作業をしました。原作を読んでいる方が通して見たときに印象が乖離しないように、同じ印象で着地できるようになればいいな、と組み立て直させていただきました。絵コンテを描いている段階では、できる限り日常を表現する、というところに気をつけました。空を飛んだり戦ったりという大きなことがあるわけではなく、何げない日常のなかでキャラクターが救われたり救ったり、ということが描かれているので、日常をていねいに描くことが大切だと思ったんです。

橋本駿
橋本駿
(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

――原作の紀伊さんがキャラクターデザイン、監修として参加なさっていますが、紀伊さんとはどのような打ち合わせをなさいましたか?

大橋 作業の最初に、線の出方についての話をしました。今のアニメは線が細く繊細な絵が多いのですが、昔のセルアニメのような、線が痩せない方向でやりたいね、と。今時の、撮影処理でピカピカした画面というよりは、セルアニメの素朴な感じでやりたいという意見でまとまりました。シナリオや絵コンテも随時チェックしていただきましたし、実作業に入ってからは迷ったらすぐに連絡して、という感じで、常に相談しながらやらせていただきました。

――監督ご自身がこだわったところは?

大橋 こだわったというよりも、後から気づいたことなのですが、絵コンテを描いていたとき、アニメーションならではのかっこいいカット割りというよりも、実写に近い構図でまとまったように感じたんです。仕上がった絵コンテを見て、自分は実写映画のような雰囲気で描きたかったんだな、と思いました。音響監督の藤田(亜紀子)さんが絵コンテを見て「実写みたいですね」と言ってくださって、「よかった、伝わってるんだ」と思いました。アニメーションで日常を描くのは果てがないので、作画チームには苦労をかけたと思うんですけど、見てくれた方に違和感なく伝わり、それが積み重なっていけば、「海辺エトランゼ」の世界観が伝わるのかな、と思いました。

――監督ご自身は、駿と実央をどのように捉えていますか? また共感できるところは?

大橋 実央が落ちているときは駿が他意なく救っていて、駿が落ちているときは実央がサラッと救ってる、というお互いに押し付けがましくなく、日常のなかで助け合っているのが魅力だと思います。わざとやっていない分、本心なんだと思うし、どちらかがどちらかに多く寄りかかっていることもない、いい関係だな、と。自分が恋愛脳ではないので、共感というと難しいんですけど(笑)、ひとりの人間として、自分がいっぱいいっぱいになってしまうと、回りが心配してくれてるのも見えなくなってしまうという部分はわかるなぁと思いますね。実央は天使のような子なので、「理想」という感じです。駿のダメなところも含めて、駿はそのままでいいじゃんって言ってくれるところが救われる感じがします。 

知花実央
知花実央
(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

――舞台が離島ということで、自然あふれる画(え)になるかと思うのですが、自然物に対してはどのように表現しようと考えましたか?

大橋 波に関してはエフェクトの作画監督に橋本(敬史)さんが入ってくださったので、大分心強く、ありがたい気持ちでした。凝ったことはしていないのですが、モデルになった沖縄にプロデューサーや美術監督の空閑(由美子)さんとも行かせていただきました。沖縄についてネットで検索すると、夏の写真が多いんですよ。物語は秋冬がメインで出てくるので、その海の色を見に行きたいと思って。自然物に関しては美術の方が担ってくれるので、素晴らしく表現してくれたと思っています。

――監督からここを見てほしい、PRしたいところなどはいかがですか?

大橋 恥ずかしいので、自分からこことは言いづらいのですが、見ていただいた方がそれぞれの思いを感じてくださればいいな、と思います。つい先日、窪田ミナさんの劇伴の収録にお邪魔したのですが、音楽が素晴らしいので、それはPRしたいです。主題歌を担当してくださったMONO NO AWAREさんの楽曲もすごくいいので、音楽にも注目していただければと思います。

――音楽の発注はどのようになさったのですか?

大橋 私が過去に見たある映画の音楽がとてもよかったので、打ち合わせのときに皆さんにも聴いていただきました。そこで全員が「いいね」という感じになり、窪田ミナさんにお願いすることになりました。幸運にも引き受けていただけて夢のようでした。また音響監督の藤田さんが私の拙い思いをすくいあげてくだりながら、すばらしいディレクションをしてくださいました。すばらしい方々に囲まれてお仕事させていただきました。

――最高のチームで制作できたのですね。最後に公開を楽しみにしているファンの方々にメッセージをお願いします。

大橋 公開を楽しみに待っていてくださって、ありがとうございます。ご時世柄、心配なこともあると思いますが、できることなら劇場の音響と大きな画面で「エトランゼ」の世界に浸っていただきたいです。今は(舞台になった)離島の皆さんも気苦労をなさっていると思うんですけど、そのなかで「海辺のエトランゼ」が公開されることがいいニュースだと言ってくださったので、とてもありがたいと思っています。自由に外出ができるようになったら、ぜひ離島に足を運んでいただき、実在する宿を体感していただけたらうれしいです。また、プロデューサーがファン代表という感じで、多いなる愛で作品を包んでくれていて、ファンの皆さんがよろこぶ仕掛けをたくさん考えてくれているので、大勢の方に見ていただけたらと思います。

大橋明代監督による自画像
大橋明代監督による自画像
(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

【取材・文:垳田はるよ】

■映画「海辺のエトランゼ」

全国公開中

スタッフ:原作…紀伊カンナ 「海辺のエトランゼ」(祥伝社on BLUE comics)/監督・脚本・コンテ…大橋明代/キャラクターデザイン・監修…紀伊カンナ/総作画監督…渡辺真由美/エフェクト作画監督…橋本敬史/美術監督…空閑由美子(STUDIOじゃっく)/色彩設計…柳澤久美子/撮影監督…美濃部朋子/編集…坂本雅紀(森田編集室)/音楽…窪田ミナ/音楽制作…松竹音楽出版/主題歌…「ゾッコン」 MONO NO AWARE (SPACE SHOWER MUSIC)/音響監督…藤田亜紀子/音響効果…森川永子/録音調整…林淑恭/音響制作…HALF H・P STUDIO/アニメーション制作…スタジオ雲雀/配給…松竹ODS事業室/製作…海辺のエトランゼ製作委員会

キャスト:橋本 駿…村田太志/知花実央…松岡禎丞/桜子…嶋村 侑/絵理…伊藤かな恵/鈴…仲谷明香/おばちゃん…佐藤はな

リンク:「海辺のエトランゼ」公式サイト

    公式Twitter・@etranger_anime