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ガドルとの"最終決戦"に臨もうとするナツメと、無謀な戦いからナツメを遠ざけたいカブラギ。すれ違う二人の心、そして決戦の行方は――。
前半のクライマックスを迎えようとする「デカダンス」。作品の魅力を掘り下げるリレー連載企画、第7回はOPテーマ「Theater of Life」を歌唱する鈴木このみさんが登場。楽曲に込めた想いを語っていただきました。
――「デカダンス」という作品の第一印象はいかがでしたか?
鈴木 キービジュアルのインパクトがすごくて、最初は芸術作品かと思いました。そのあと設定資料を見せていただいて、専門用語の多さに「もしかして難しい作品なのかな」と少し構えたんですが、絵コンテを読んでこの作品の軸はカブラギとナツメの人間ドラマだとわかったんです。そのドラマが面白いと思いましたし、戦闘シーンがどうなるのかすごく楽しみになりました。
――実際の映像もすごい戦闘シーンが繰り広げられました。
鈴木 第1話は興奮しすぎて、見終わってから朝の5時ぐらいまで眠れませんでした! しかもデカダンスが戦闘形態になる、すごくいい場面でOPテーマをかけていただいて。思わず心をがっちり掴まれました。
――鈴木さんが歌唱する「Theater of Life」を最初に聴いたときの感想はいかがでしたか。
鈴木 爽快感があって疾走感もあって、まさにオープニングにふさわしい楽曲だなと思いつつ、どこか人間くささを感じました。ただかっこいいだけではない、人間のカッコ悪い部分や不器用な部分も見え隠れするような、スパイスの効いた楽曲です。
――「Theater of Life」というタイトルもそうですが、「生きる」ということに真摯に向き合った楽曲ですよね。
鈴木 まさに人生そのものを表しているような楽曲ですね。けっして重いわけではない、暗い気持ちになったりしない楽曲ですが、「生きるとは何か」を切実に問いかけてくるところがこの楽曲のキーになっていると感じました。息を吸っているだけでも勝手に歳は重なっていくし、それを生きているといってもいい。でも自分にとっての「生きる」はそうではない……そんな想いが描かれています。スタイリッシュで疾走感のある曲調の中に、本質的なことを突いてくるメッセージがあると思いました。
――レコーディングはいかがでしたか。
鈴木 テンポの速い楽曲は得意分野ではあるんですが、スタイリッシュなところもある楽曲の中で、どうやって人間くささ、泥くささを表現するかが難しかったです。
――どのようにバランスを取ったのでしょうか。
鈴木 感情論みたいになってしまうんですが、自分の中にある「こんちくしょう魂」をにじませました(笑)。「こんなところでぼーっとしていられるか!」という気持ちですね。私は、カブラギのように達観したタイプではなく、ナツメみたいに「やってやるぞ!」というタイプに近いので、その気持ちを意識してからはすんなりと歌えました。
そういう意味では、完全にナツメ目線で歌っています。ナツメは何も考えずに流されていくのではなく、自分らしく生きたい、自分の生き方は自分で決めたい、自分で明日を掴み取りたいという思いに駆られて走り出しました。その想いを歌で表現しています。
――ナツメを表した楽曲であり、鈴木さんとも繋がる部分がある楽曲なんですね。
鈴木 私自身も、ありがたいことにデビュー8周年を迎え、ここまで足を止めることなく、ずっと“その先”を考えて生きてくることができました。もちろん失敗したことはたくさんあります。でも、自分の選択してきたものがしっかり未来に繋がっていたと確信していますし、この楽曲に描かれていることは私自身にもナツメにも繋がっていると感じました。
――作詞と作編曲のANCHORさんとは「東のシンドバッド」以来のタッグですよね。改めてANCHORさんの楽曲の魅力はどんなところだと思いますか?
鈴木 「Theater of Life」も「東のシンドバッド」も、まず爽快感があって太陽の光とか青空のような景色がぱっと浮かんでくるんです。でも、その中心にいる主人公はなんでも簡単にやってのけるタイプではなくて、どこか不器用なところがある。そのコントラストが素敵だなと感じます。
――ところで、OP映像はご覧になりましたか。
鈴木 ゲームちっくなのがかわいいなと思っていたら、サビで急にカッコよさに振り切れてびっくりしました! しかも、第1話で戦士にはなれないと言われたナツメが戦うシーンもあるんです。めちゃくちゃエモい気持ちになりましたね。普段は明るくてかわいらしいナツメが勇ましくて凛々しくて、別人に見えるぐらいカッコよかったです!
――楽曲ともマッチした素晴らしいOP映像でした。
鈴木 オリジナルアニメのOPテーマなので、実はプレッシャーもすごくて。原作がある場合はお客さんもある程度、作品のカラーが分かっていると思うんですが、オリジナルアニメは予備知識がないまま見ることになるので、OPテーマを歌う人間としては歌で作品の魅力を100%伝えられるか不安になってしまうんです。
実際、OPはずっとドキドキしながら見ていました。でも、サイボーグの世界と人間の世界がどちらもわかるように描かれていて、カブラギやナツメの想いも伝わってくるような映像で、我ながら映像の力をお借りして100%に近い形で「デカダンス」の魅力を伝えられたんじゃないかなと思いました。
――先ほど、鈴木さんはナツメと近い部分があるとおっしゃっていましたが、彼女以外で気に入っているキャラクターや注目しているキャラクターは誰ですか。
鈴木 あまりおじさんキャラクターって興味がなかったのに、カブラギを見てから若干おじさん好きに目覚めつつあります。あと変な話をすると、リンメイのお尻がいいなと思いました! 第1話でお尻を揺らしながら歩くシーンの動きを見て、画に気合いが入っているなと(笑)。ちょっとマニアックな注目点ですが、リンメイのお尻が好きです。
――そして鈴木さんは「Theater of Life」をはじめ、3ヶ月連続でアニメタイアップのシングルをリリースされるそうですね。
鈴木 聞いたときは飛び跳ねました! 当然、初めてのことですし、今後もなかなかない貴重な機会なので、本当にありがたいです。ただ、短期間でシングル3枚分、カップリング曲と合わせて全6曲をレコーディングしないといけないのが大変で……。ミニアルバムぐらいの作業量ですし、それぞれアニメのタイアップなのでファンの方の期待を裏切れないというプレッシャーもあって。でも、ライブやイベントを除いてこんなに音楽制作にどっぷりつかれたのは初めてだったので、どんどん新しい自分を更新していく感覚が楽しかったです。
――充実した制作期間だったんですね。
鈴木 こんな声が出せるようになったんだってそこで初めて気づくこともありました。とてつもなく充実した期間を過ごさせてもらったなと思います。
――「Theater of Life」の歌詞になぞらえた質問ですが、鈴木さんが「生(せい)を実感するとき」ってどんなときですか。
鈴木 やっぱりライブをしているときは生きているなって実感します。あとは……お風呂! 入浴剤を入れて幸せな気分になっているときは、「あ~生きてるな~」って感じます。生きているとはちょっと違いますが、忘れ物が続いたりするときもそうですね。結構、忘れ物が多いタイプで、何度も忘れ物をすると人間らしいなって感じます……(笑)。
――最近は何か忘れ物をしましたか。
鈴木 最近の大きな忘れ物はパソコンですね。OPENREC.tvで毎週生配信番組(「鈴木このみのOPEN HEART!」)をしているんですが、その中で公開レコーディングのコーナーがあって、それは自分のパソコンを使ってレコーディングするんです。でも、うっかりパソコンを忘れて、コーナーができなくなってしまって……(笑)。本当に申し訳なかったです!
――最初におっしゃっていましたが、ライブは生を実感する場所なんですね。
鈴木 普段は隅っこが好きな感じのタイプなのに、ライブになると解放的になって自分の想いや考えが自然と出てしまうんです。自分の気持ちに正直になれる場所なので、ステージに立っていると生きているなって実感します。もちろん、出したくないものまで出てしまうことがありますし、でもそれがエモさに繋がって涙腺が緩むこともあって……。本当に一瞬、一瞬がきらめいている場所です。
――先日の無観客ライブでは、10月9日(金)にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でライブが開催されることが発表されました。
鈴木 本当に嬉しかったです! 6月に開催するはずだった6thライブツアーが延期になってしまい、応援してくださる皆さんは「鈴木さんが悪いわけじゃないよ」と声をかけてくださったんですが、ツアーという1年でいちばん力を入れている活動の延期を発表するのはやっぱり心苦しくて……。申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
でも、こうしてライブの発表ができて、今はかなり前向きな気持ちになっています! ガイドラインに従ったいつもとは少し違うライブになると思いますし、私自身も久しぶりのライブなので、どういう気持ちでステージに立つのかまだ想像できませんが、「Single Collection」というタイトル通り、表題曲は全部並べるぐらいの気持ちでやっていきたいと思うので、楽しみにしていただけたら嬉しいです!
【取材・文:岩倉大輔】