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「蜘蛛ですが、なにか?」リレーインタビュー OPテーマ・安月名莉子「蜘蛛子を思い浮かべながら”強くなる”という決意で歌った」

「蜘蛛ですが、なにか?」のOPテーマ「keep weaving your spider way」を歌う、安月名莉子さん
「蜘蛛ですが、なにか?」のOPテーマ「keep weaving your spider way」を歌う、安月名莉子さん(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」を盛り上げるリレー連載第6回は、1月27日にリリースされたOPテーマ「keep weaving your spider way」を歌うアーティスト・安月名莉子さんが登場。絶対にくじけない「私」(蜘蛛子)を象徴するかのような力強い楽曲はどのようにして生まれたのか。たっぷり語っていただきました。

――OPテーマ「keep weaving your spider way」はかなり激しいサウンドのロックですね。

安月名 これまでの自分になかったロックな楽曲です。私の新しい一面を引き出せるのではないかなと思い、最初に聴かせていただいてすぐ「絶対に歌いたい」って思いました。自宅では母に「私、これ歌いたい!」ってずっと言っていたくらいです(笑)。

――どこかダークな雰囲気も感じられます。

安月名 素直にかっこいいなと思いました。特に好きなのが、Dメロで雰囲気ががらりと変わるところ。奈落に落ちたような、深いダンジョンに入り込んだような雰囲気に度肝を抜かれました。「本当に同じ曲なの!?」と思うくらいの変化で最初は驚いたんですが、アレンジとメロディのおかげもあって、レコーディングではミステリアスな雰囲気を出せたんじゃないかなと思います。

――歌詞も力強いですよね。

安月名 サビの「死ぬ気で死ぬ気で考えろ」が好きです。ストレートな言葉が刺さりました。自分自身に言い聞かせるように歌ったフレーズではありますが、きっと聴いてくださる皆さんにも刺さるんじゃないかなと思います。

――レコーディングにあたってどんなことを意識しましたか。

安月名 自分の中の「強さ」をどれだけ楽曲にぶつけられるかを強く意識しました。原作を読みこんでからレコーディングに臨み、蜘蛛子ちゃんに寄り添うというよりは、「蜘蛛子 vs. 安月名」の楽曲だと思って「負けられない!」という気持ちが強かったです。

――「強さ」が一つのテーマだったんですね。

安月名 この楽曲のテーマが「強くなる」なので、「強くなりたい」という感情が強かった今までの歌い方だと、この曲が持つ本当の「強さ」を表現できないんじゃないかと思ったんです。その点では、レコーディングは少し苦労しました。まだ自分の中には弱い自分がいる、まだ「強くなりたい」という気持ちになっている……そんな葛藤があったんです。メンタル的な部分もそうですが、ちょっとした息づかい一つで自分の弱さが混じってしまう感じもして、蜘蛛子ちゃんを思い浮かべながら「強くなる」という決意とともに歌いました。

――では、かなり試行錯誤されたんですか。

安月名 「強さ」を出すのに必死ではあったんですけど、その分、集中できてスムーズにレコーディングできました。しっかり準備できたのも大きかったです。今までは感情のままに歌ったり、その場で表現を変えたりすることが多かったんですが、今回はレコーディング前に細かい部分の表現を詰めて詰めて本番に臨みました。

――入念な準備で「強くなる」の表現を掴んだわけですね。

安月名 はい。カップリング曲「tear the score」のおかげでもありました。実は、オープニング曲には候補が2曲あって、プリプロ(プリプロダクション/仮録音)で歌ってみてそこから決めていただいたんです。それが「keep weaving your spider way」と「tear the score」でした。「tear the score」は「keep weaving your spider way」とは真逆とも言える、私の弱さを丸裸にしたような曲で、この曲を乗り越え、弱い自分とサヨナラしないと「keep weaving your spider way」は歌えないと思ったんです。

――「tear the score」はどういう方向性で制作されたんですか。

安月名 楽曲の打ち合わせをしたときに、「tear the score」は完全に”安月名莉子の曲”にしようと提案いただきまして。それで、「安月名は、どんなアーティストになりたいんだ」と聞かれたんです。でも、そのときは答えられなくて……。

――すごく本質的な問いですね。

安月名 まず自分がなぜ歌うかを考えて、改めて気づいたことがあったんです。私は誰かが「今こういう気持ちだからこういう曲を聴きたい」と思ったときに、それが私の曲だったら嬉しいなとか、誰かの背中を押したいとか、誰かのために歌いたいんだって。でも、「どうなりたいか」を聞かれているのに、浮かんでくるのは「誰かのために」ばかりで。自分とちゃんと向き合ってこなかったことに気づいて、そのミーティングであまり喋れなくなったんです。

もう、ずっとモヤモヤしていました。「tear the score」の歌詞は、私が誰かを笑わせるのが好きだとよく話していたので、その想いを汲み取ってくださって、最初はピエロが題材になっていたんです。でも、笑ってくれればそれでいいわけではない。ちょっと違うなと思ったと同時に、自分はなんて空っぽなんだと思ってしまって。

――そこで自分と向き合われて、答えは出たのでしょうか。

安月名 考えた末に、自分は手動式のオルゴールボックスみたいだなと思ったんです。オルゴールってプレゼントや旅先のお土産として買うことが多くて、誰かの想いが詰まっているものですよね? しかも、聴きたいときに回して聴くもの。それが、私の「聴きたいと思ったときに聴いてもらえたら嬉しい」という想いや空っぽだなと感じるところに似ていると思って、そこでやっと自分の弱さを認めることができたんです。後日、それをディレクターさんにお伝えしたら、タナカ零さんが力強いメロディに乗せて歌詞を書いてくださって、私が一歩踏み出せる楽曲になりました。同時に、自分はなんのために歌っているかもようやくわかったんです。

――詳しく教えていただけますか。

安月名 今までは、歌うのは夢を叶えたいからといろいろなところで話してきました。それも本当のことなんですが、20歳を過ぎた頃に、自分よりすごい人がまわりにはたくさんいると気づいて、私も誰かに見つけてほしいと思ったんです。そのときに選んだ手段が歌でした。一番大好きなもので、一番自分を表現できて、一番自分を伝えられるもの。その歌で誰かに自分の存在を見つけてもらいたかった。それが歌う理由なんだって、死ぬ気で死ぬ気で考えてやっと辿り着けたんです。

――その弱さや歌う理由に気づけたことが、「keep weaving your spider way」にも繋がっていったわけですね。

安月名 はい。「tear the score」なしでは、「keep weaving your spider way」は歌えませんでした。このシングル1枚に私の物語が詰まっているという意味では、新しく生まれ変われた1枚になったのではないかなと思います。

――「keep weaving your spider way」のミュージックビデオも公開されていますが、改めて見どころを教えていただけますか。

安月名 不気味な美しさとかっこよさが表現されているところです! アーティスティックに撮っていただいたこともそうですし、ダンサーさんとのパフォーマンスも見ていただきたいです。あとは……私の決意表明ですかね(笑)。ファンの皆さんの間では“泣くキャラ”が定着しているようなんですけど、「安月名が泣く時代は終わりました」とTwitterで宣言して、「強くなる」と表明したので、その決意が映像でも表現されていると思います。

――ちなみに「蜘蛛ですが、なにか?」のアニメオープニング映像についてはいかがですか。

安月名 原作を読ませていただいて、物語を先のほうまで知っているので、「このキャラクター知ってる!」「この子も出てくるのか!」と、盛りだくさんの情報に興奮しました。サビの戦闘シーンもよかったです。歌詞をたくさん拾ってくださった内容で、ありがたいなと思いました。

「蜘蛛ですが、なにか?」OPより
「蜘蛛ですが、なにか?」OPより(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


「蜘蛛ですが、なにか?」OPより
「蜘蛛ですが、なにか?」OPより(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――「蜘蛛ですが、なにか?」の第一印象はいかがでしたか?

安月名 最初にいただいたコミックスの表紙が女子高生だったので、タイトルは「蜘蛛」だけど主人公は女子高生なのかなと思ったら、主人公が本当に蜘蛛だったのでびっくりしました(笑)。……蜘蛛が大の苦手なんです!

「蜘蛛ですが、なにか?」OPより
「蜘蛛ですが、なにか?」OPより(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――そうだったんですね。

安月名 1巻を読み終わったときは驚きのほうが大きかったです。その後に原作小説も読ませていただいて、面白いと思ったのが絶体絶命のシーンが多いところですね。これはもうダメだという状況でも、どんどん突破していくところにワクワクしました。しかも、ピンチに陥ったときに、いきなりユーモアのある喩えをするときがありますよね? 例えば糸が使えないときに、そんな自分は「納豆菌のない納豆」で、納豆でも何でもない「ただの腐った豆」と言っていて。その余裕がかっこいいなと思いましたし、今度はどういう戦略で戦い抜くのか気になって、あっという間に読み進めてしまいました。

――主人公が蜘蛛であることには慣れていきましたか。

安月名 すぐに慣れました。「keep weaving your spider way」のレコーディングをするときに家に蜘蛛が出たんですが、全然怖くなくて。朝の蜘蛛だったので、退治もせず、頑張って生きているんだなと微笑ましく見ていました。

――お気に入りのキャラクターがいたら教えてください。

安月名 カティアです! 男の子なのに転生したら女の子になってしまって、この先、心情がどうなっていくのか楽しみにしています。

「蜘蛛ですが、なにか?」OPより
「蜘蛛ですが、なにか?」OPより(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――では最後に、ファンの方へ一言お願いします。

安月名 この楽曲のストレートな言葉は、私自身はもちろんですが、当たり前だったことが当たり前にできなくなった世の中を生きる皆さんの背中を力強く押してくれると思います。そっと押してくれるのではなく、ボンっと力いっぱい押してくれる楽曲を通して、皆さんにカツを入れられたら嬉しいです。そして、アニメにも出てくるキーワードがたくさん盛り込まれている楽曲なので、アニメとともに楽しんでください。

【取材・文:岩倉大輔】

■TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」
放送 AT-X 毎週金曜 21:30~ ※リピート放送有り
TOKYO MX 毎週金曜 22:30~
テレビ愛知 毎週金曜 27:05~
KBS京都 毎週金曜 24:00~
サンテレビ 毎週金曜 24:00~
BS11 毎週金曜 23:00~

配信 ひかりTV 毎週金曜22:00~
   dTVチャンネル 毎週火曜22:30~
   ABEMA 毎週水曜22:00
   そのほかのサイトでも1月15日より毎週金曜22:00以降順次配信

リンク: TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」公式サイト
    公式Twitter・@kumoko_anime

■TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」オープニングテーマ
「keep weaving your spider way」安月名莉子
発売:2021年1月27日(水)
価格:税別1200円

リンク:「安月名莉子」公式サイト
    公式Twitter・@azuna_riko

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