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「タイトル未定」プロデューサー・ついま(松井広大)インタビュー 「北海道のアイドルならではの魅力を、世界へ」

北海道・札幌を拠点に活動する4人組アイドルグループ「タイトル未定」。4月18日に2枚同時リリースした全国流通シングル「花」「栞」が、オリコンデイリーチャートでそれぞれ3位と4位にランクインするなど、今勢いに乗るグループをプロデュースしているのが、「ついま」こと松井広大さんです。月刊ニュータイプ6月号に掲載したインタビューの別バージョンを特別にお届けします。


「タイトル未定」の4人。左から谷乃愛、阿部葉菜、冨樫優花、川本空


——ついまさんは「自称最年少アイドルプロデューサー」として、東京でグループアイドル「26時のマスカレイド」のプロデュースをされていました。改めて、どんな経緯でアイドルプロデュースにかかわるようになったのでしょうか?
ついま 僕は高校2年生のころから、株式会社レキシントンという会社で働いていたんです。そこは雑誌の読者モデルやYouTuber、インフルエンサーみたいな人たちをマネジメントしていたんですね。それで高校卒業のタイミングでその会社に就職したんですが、そのときの上司がモデルとアーティストを組み合わせて音楽をリリースするというプロジェクトをやっていて。読者モデルの子がソニー・ミュージックのアーティストとコラボをしていたり、メンズボーイズグループとして活動をしていたりしたんです。それで僕も音楽系の仕事をしてみたいと、上司に相談したことで、アイドルにかかわるようになりました。

――現在は北海道で、グループアイドル「タイトル未定」をプロデュースされています。北海道に場所を移したのはなぜですか?
ついま 北海道が好きだからです。冬は雪が多いですけど、春、夏、秋と過ごしやすいですし、ここでローカルアイドルを生み出したいなと思っていました。僕が北海道に引っ越したのは23歳ぐらいだったんですが、5年以上かかわってきたエンタメ業界から離れることは想像ができなくて。地元の友達のように就職するということも考えなかったし、アイドルをプロデュースするということに自信もあったので、新しい土地でチャレンジしてみたいという気持ちはありましたね。

――実際に、北海道でグループアイドルを立ち上げてみて、手ごたえはいかがでしたか?
ついま 最初に、雑誌を絡めたオーディションを行なって、北海道のインフルエンサーに審査員をやってもらったんですけど、自分の理想とするメンバーが決まらなかったんです。東京の感覚では、アイドルをめざしている子はたくさんいて、グループとしての枠組みさえしっかりとつくっていれば、そこにふさわしいメンバーも集まってくれると思っていたんです。でも、東京と北海道では、エンタメに対する熱量がやっぱり違って……なかなか理想とするメンバーがそろわなかったんです。今思うと、これまででいちばんの挫折かもしれないですね。

――どんなアイドル像をめざしていたんでしょうか?
ついま 初めてアイドルグループをプロデュースしたときに、アイドルとお客さんの距離感が思った以上に近いものなんだと思ったんですよね。ライブハウスの熱量だとか、お客さんとの一体感を感じられるアイドル、そういうアイドルパワーを感じられるグループにしたいなと思っていました。

――ようやくメンバーがそろった2020年、コロナ禍のなか「タイトル未定」はデビューすることになりました。当時はどんなお気持ちでしたか?
ついま そのときは北海道に引っ越ししてから、約2年が経っていたんです。もっと早くデビューをさせたいと考えていたんですが、思ったよりも時間がかなりかかってしまいました。苦労もたくさんしたのですが、少しでも早く自分がつくったアイドルグループを世に出したいという気持ちのほうが強かったんです。そのころ北海道は緊急事態宣言が出ているタイミングだったんですが、YouTubeを使ってネットデビューライブを行ないました。コロナ禍ではありましたが、むしろこの状況を逆手にとって、多くの人に届けたいと思っていました。

――現在、「タイトル未定」は冨樫優花さん、阿部葉菜さん、谷乃愛さん、川本空さんの4人で活動されています。それぞれのメンバーの魅力をお聞かせください。まずはオリジナルメンバーの冨樫優花さん。
ついま 冨樫は勝負強い子だなと思います。自分に対してストイックな部分があるので、自分がうまくできないとイライラしたり、落ち込んじゃったりするんで、大丈夫かなと心配になる部分もあるんです。でも、大きなライブや、新曲を発表するタイミングにしっかりと照準を合わせて100%以上のものを仕上げてくる。あまり褒めすぎるとよくないと思うんですけど、ここいちばんに強い子だなって思いますね。



――同じくオリジナルメンバーの阿部葉菜さんはいかがですか?
ついま 阿部は埼玉から北海道に来てくれた、バイタリティと決断力のある子だと思います。決めたことに関して、真っすぐに取り組んでくれるし、周りのメンバーを巻き込む力もあるんです。北海道の子たちは、比較的、まったりしている道民性があったりするんですが、そのなかで阿部はみんなを引っ張ってくれる。グループにいいバランスをとってくれているなと感じています。



――谷乃愛さんは2021年2月に「タイトル未定」の新メンバーとしてステージに立ちました。
ついま 谷はもともとアイドルとして長く活動していたこともあり、歌とダンスが技術的に優れているんです。アイドルとしての姿勢やライブ中のMCにおいてもプロフェッショナルなところを見せてくれる。「タイトル未定」のクオリティを一気に引き上げてくれた存在だと思っています。やっぱり、アイドルはこうあるべきだよな、という感覚を僕に思い出させてくれた存在でもあります。



――川本空さんは2022年3月に加入しました。
ついま 新メンバーを決めるときは、やはり僕も悩みました。オーディションを行なったんですが、そのときインパクトがいちばんあったのが川本だったんです。オーディションのときに、最後に「何か質問したいことはありますか?」と僕らが尋ねたんです。そうしたら川本が「ついまさんの好きなアイドルは誰ですか?」って聞いてきて(笑)。すごいおもしろい子だなって。

――ちなみに何と答えたんですか?
ついま 「乃木坂46さんが好きですかね」って言ったと思います。

――意外と王道(笑)。
ついま それがすごく印象に残っていたこともあって、川本を起用したんです。でも、その後が大変でしたね。最初は全く踊れなかったんです。「タイトル未定」の新体制の準備を同時に進めていたんですけど、メンバーと合流してからも、川本はフォーメーションを覚えられなくて、メンバーの後についていくことしかできなかった。それで新体制デビューライブの日まで徹底的に練習をして。披露する曲を1曲ずつ覚えていったんです。ほかのメンバーもキツかっただろうし、川本自身もすごく大変だったと思います。本当に頑張ってくれました。



――「タイトル未定」は楽曲も魅力的です。楽曲をつくるうえで心がけているところはどんなところでしたか?
ついま ミドルテンポの楽曲を多くすることで、メンバーそれぞれのアーティストパワーが120%出るようにしたいなと考えていました。それぞれのソロパートを多めにして、しっかりとメンバーの歌の魅力や世界観を出せるようになればいいだろうなと。BPMを早めにしてアップテンポな曲で盛り上がるのもいいと思うんですが、ミドルテンポのほうが気持ちを込めるだろうなと。

――アイドルファンの有志が投票する「アイドル楽曲大賞2021」では、「タイトル未定」のファーストアルバム「青春群像」が1位となりました。
ついま あれはびっくりしました。「青春群像」はデビューしてから1年にリリースした楽曲を全部詰め込んだアルバムで、曲順もリリース順になっているんです。だから「タイトル未定」の歩んできた道をそのまま振り返ることができる一枚になったなと思います。それを評価していただいて、すごくうれしかったですし、ライブに来たことがない人でも「タイトル未定」の魅力が伝わる作品になったと思います。

――「タイトル未定」も4年目、これからの野望をお聞かせください。
ついま 北海道から日本全国だけでなく、アジアに広げていけたらと思っています。タイや台湾とか、いろいろなところに行ってみたいですね。東京のアイドルとは違う、北海道のアイドルならではの魅力を、世界中に広げていきたいです。




——ちなみに、松井さんが個人的に推していることはありますか?
ついま そうですね……最近は静岡を推しています。静岡には、「さわやか(炭焼きレストラン)」がありますし、サウナの「しきじ」もありますからね。今、北海道でアイドルをプロデュースしてますが、隣の芝は青く見えるといいますか(笑)。静岡いいなと思っています。完全にfishbowl(静岡のアイドルグループ)の策略に乗っている気がしますけど(笑)。

【取材・文:志田英邦】

リンク:タイトル未定 Official Site
    タイトル未定公式Twitter・@MiteiTitle
    タイトル未定公式YouTubeチャンネル

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