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井口裕香、2ndミニアルバム発売記念インタビュー 「今だからこそ歌えるオトナなナンバーと、ハッピーさを両方ぎゅっと詰め込んだ一枚」

歌手活動10周年を迎えた声優アーティスト・井口裕香さんが、7月12日に2ndミニアルバム「キミがキミでキミなんだよ」をリリースしました。自身の誕生日翌日のリリースとなった本作は、過去を振り返るようなオトナな歌声も聴かせつつ、ライブ映えしそうなパーティーチューンも収録した、全6曲ながらも非常に多彩かつ濃密な一枚となっています。そんな本作について、井口さんにお話をうかがってきました!


井口裕香


――まずは本作のタイトルについて、どんな意図を込められたのかなどお教えいただけますでしょうか。
井口 そもそもその「キミ」という言葉は、いつも応援してくださるファンの方や支えてくださるスタッフさんたちなど、大事な人のことを指したもので、今まで私が作詞してきた曲全部で、タイトルや歌詞に使ってきたものなんです。ただ、今回は作詞した曲がないので、タイトルで「キミ」シリーズを持ってきたいなぁ……と思っていたんです。そんななかで、1stミニアルバム『Love』で作詞させていただいた「キミとボク」という曲のなかの「キミが キミで キミなんだよ!」というフレーズが、すごくしっくり来るように感じて。“井口裕香らしさ”も出せるし、歌手活動10周年というタイミングだから、過去の歌詞を引用するのもアリなのでは?と思い、アルバムタイトルに付けることにしました。やっぱり私自身もこの10年を通じて、ファンのみんなに対して「やっぱりキミじゃなきゃ」と思っていますし、欲を言えばみんなにもそう思ってもらえるような存在になれているといいな……という願いも込めています。

――そんな本作収録の楽曲を決定するにあたっては、どんなことを大事にされたのでしょうか?
井口 出発点になったのは、1曲目の「アノヒノコイ」でした。実はこの曲、昨年秋のシングル「Prologue」の制作段階でデモがあって、「カップリングにはもったいない」ということで温めていたんですよ。なので、この曲を軸にして、スタッフさんたちといろいろ話し合いながら収録曲を決めていきました。

――その出発点から、世界を広げていけそうな曲を集めていったというか。
井口 そうですね。あと、リリース時期に合わせて夏もテーマにしているんですけど、それもフレッシュでポップな夏というよりも、今年で35歳になる私のちょっとオトナな夏……みたいなものも出せたらというところで。「アノヒノコイ」も爽やかではありますけどちょっとせつなさもにじんだ曲なので、ただ明るさや元気さだけを詰め込むわけではない1枚にできたらいいな、とも思っていました。でも、そうやって今まで歩んできた道を振り返ったりと10周年ならではの意味は持たせつつ、最後は「これからも元気に!」という想いも込めていまして。しっとり終わるのではなく、ラストにかけてポップになっていって締めくくるものにもなっています。

――さて、ここからは楽曲について収録順でお訊きしていきます。まずはその「アノヒノコイ」について、レコーディングに臨まれた際にイメージされたものをお教えください。
井口 楽曲自体はすごくせつなくて、でもメロディがすごく耳に残る疾走感のある曲で。誰もが経験したことがあるような、もしくは経験したことがなくても思い出のひとつにありそうなドラマや映画のような歌詞が、すごく印象的なんですよ。そういうストーリーみたいなものを大事に、みんなの胸がきゅっとなるような感じで歌えたらいいなと思いながらレコーディングしました。

――アウトロ最後のピアノの音が残響のようになっている点も含めて、“思い出の中の夏”を表す曲であり、それにマッチする歌声でもありますよね。
井口 ありがとうございます。たぶんこの曲は、アーティストデビューして10年経った今の私だから歌えるもののように思うんです。歌詞に込められた気持ちもすごくわかりますし、最後の「もしも過去に戻れても私は 同じ言葉選ぶだろう」というフレーズも、ぐっとくるんですよ。決して後悔しているわけでもなく、でも今でも好きなわけでもなく……「前を向きながらも、ちょっと過去のことを思い返す」みたいなところが、すごく好きです。

――続く2曲目「ツナガルミチ」については、最初に聴かれたときのイメージはいかがでしたか?
井口 昨年レーベル移籍もあったりと、やっぱりこの10年ずっと同じ道を歩き続けてきたわけではなくて。それを歌詞ですごく肯定して、背中を押してもらえたように感じました。なので、一緒に歩んできてくれたみんなにとっても肩がふっと軽くなるような曲になるんじゃないかなって。迷ったときに私の声を聴いて「また頑張ろう」という気持ちになってもらえるような存在であったらいいなとも思えたし、そういう暖かい場所でありたいという気持ちや「聴いてくれるキミに届くといいなぁ」という想いも、この歌にもすごく込めています。

――3曲目「ナツサガシ」は、約2分半という短さの中に様々な要素がぎゅっと詰まっている曲です。
井口 この曲の歌詞には、「自分自身も迷いながらも」みたいな葛藤を描いた、ちょっとドキッとさせられるような部分がちょこちょことあるんですよね。しかもアレンジも音が少なめだったり、1サビ後にいったんサウンドがロックっぽく変化したりと、こちらもドキッとさせられる演出が多いんです。ただ、基本的にはシンプルなサウンドなぶん、なんだか気持ちも歌い方も“ごまかせない”ような気もしたんですよ。なので「どう歌おうかな?」ってドキドキしながらのレコーディングでもありました。

――そして4曲目のバラード「空が落としてゆく言の葉」には、井口さん御自身の今に至るまでの葛藤のようなものも織り込まれているように感じました。
井口 サビで繰り返し出てくる「You'll be OK」というフレーズが、聴いてくれるみんなの背中を押して包み込んであげられたらとも思いますし、自分自身もそれを繰り返し口にしていくことで自分を肯定できるような気持ちになったので、すごく温かい曲のように感じました。だからこそ、バラードですけどこの曲でも歌い上げるような感じにはせずに。歌いかけるようであり、でも自分自身に言っているようでもあるように歌っていって……常に隣にいるように、心の距離も実際の距離も近い感じで歌うのが、基本的に好きなんですよね。

――そして5曲目「Sheer Shimmer Summer」は、歌詞とサウンドの両方に今っぽさのあるポップな曲になっています。
井口 これは「セリフや言葉みたいなもので1曲つくれたらおもしろいね」というところから始まった、とてもポップでかわいくて、ライブ映えしそうな曲で。サンプリングも使ったりしながら、セリフやラップっぽい部分もつくって言葉遊びもしているんですよ。なので、曲の中の「シェアしたい はずむ気持ち」というフレーズみたいに楽しい気持ちをみんなと共有できるよう、聴いている人たちが耳で楽しくなってくれたらいいな……と思いながら、「聴いてくれるみんなが笑顔になれる」というところを一番大事にしてレコーディングしていきました。

――そしてラストを飾るパーティーチューン「GYOZA」は、井口さんの好物である餃子をテーマに制作された曲ということで。
井口 この曲に関しては、まず「佐伯youthKさんに曲を作ってもらいたい」というのと「今の井口の好きなものを歌詞に落とし込むのはどうだ」というのが出発点になったんですよね。それでまず餃子というテーマが決まって、1回佐伯さんとオンラインで「なぜ餃子が好きなのか」「どんな餃子が好きなのか」みたいなインタビューをしていただいて(笑)。それを踏まえて「餃子への愛」を「聴いてくれる『キミ』や大事な人」にもリンクさせた、“大好きなもの”への想いを込めた曲にしてくださったんです。いい意味でゆるっとした、くだけたラフなところもすごく好みですし、思わず口ずさみたくなっちゃうような遊び心満載の曲になっています。

――しかもこの曲については、MVも制作されました。
井口 そうなんです! はじめは「アノヒノコイ」で撮る方向だったんですけど、私のわがままを受け入れていただいて。「餃子とビール……最高!」という気持ちを映像にした(笑)、ポップなMVになっています。しかも今回は、メイキングもかなりずーっと回していただいたんですよ。ジャケットなどではオトナな井口さんにはなっていますけど、喋ればやっぱり変わらぬご陽気さがあるといいますか……(笑)。そのメリハリも含めて、いろんな姿を楽しんでもらえたら嬉しいです。あと、今回はサビ部分に振付も考えてもらったんですよ。もし歌う機会ができたときにはみんなも一緒に踊ってほしいので、ぜひそこも注目していただきたいです!



――その“歌う機会”として、しばらく開催が叶っていないワンマンライブを待ち望むファンの方も多いと思います。
井口 そうですよね。今年はそういうこともできたらいいなと計画中なんですけど、もし今開催できるなら……大会場よりも、近い距離でできる会場がいいですね。コロナ禍を経てやっとみんなと会える機会がちょっとずつ増えてきているので、一緒に遊んだり喋ってたりしているような感覚でできる会場で……「ライブ」という形にこだわりすぎず、いろんなところに「会いに行く」みたいなことができたらいいなと思っています。

プロフィール

●いぐち・ゆか/2013年に音楽活動を開始してから、アニメ主題歌をはじめ多数の楽曲をリリース。ファンと心の距離の近い、楽しくて温かな空気感をもった声優アーティストを志向し活動を続けている


井口裕香「キミがキミでキミなんだよ」ジャケット写真


【取材・文:須永兼次】

■井口裕香「キミがキミでキミなんだよ」
発売中
価格:2750円(税込)
発売元:KADOAKWA

リンク:井口裕香 Official Website
    井口裕香公式Twitter・@yukachiofficial
    井口裕香「GYOZA」Music Video
    井口裕香「GYOZA」メイキング&コメント映像

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