新作&おすすめアニメのすべてがわかる!
「月刊ニュータイプ」公式サイト
蜘蛛子の世界とシュンたちの世界が、徐々に結びついていく――。謎の一端が垣間見え、ますます目が離せないTVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」。リレー連載、第13回は、再びユーゴー役の石川界人さんが登場。シュンとの戦いに敗れ、ソフィアと結託しようとするユーゴーは、一体何を思うのか。たっぷり語っていただきました。
――前回は第3話までの感想を伺いました。その後のユーゴーはシュンへの敵意がすさまじかったですね。
石川 とにかく自分より目立つ人間が気に入らなかった……これに尽きると思います。高校時代は自分のほうがクラスカーストで上にいたのに、ただ生まれ変わっただけで俺より強くなるなんて許せない。称賛を浴びるのは俺のはずだ。そういう心境だと捉えたので、見たまま素直に演じました。
――ユーゴーのステータスやスキルを見ると、彼もまた努力家だったことが窺えました。
石川 ストーリー上、ユーゴーが実は努力家だったと感じていただく必要はないのかなと思っていて。というのも、ユーゴーの役目は別に同情を誘うことではないんです。それに、ユーゴーが仮に努力家だったとしても、きっと彼の性格からして努力している姿は隠すと思います。
――努力をひけらかすキャラクターではないと。
石川 ええ。努力したことを自慢するのではなく、「どうだ、俺はこんなに強いんだぞ」と、強さそのものを自慢するはずです。だから、あまりそこにフォーカスを当てなくてもいいのかなと思いましたし、彼が努力しているかどうかは僕だけが知っていればいいことなのかなと思います。
――ここまで演じられて、ユーゴーの人物像をどう捉えましたか。
石川 意外とどこにでもいるタイプの人間だと思います。誰しもが持っている心の汚い部分を表したキャラクター。もちろん、嫌な奴でも嫌な面だけではないし、どこか絶対にいいところはあると思いますが……。人の“悪意”のようなものがわかりやすく描かれている印象を受けました。
その意味では、シュンよりもよっぽどリアルなキャラクターだと思います。彼は、「人にこうあってほしい」「自分はこうありたい」という理想の塊のようなキャラクターだと思うので。
――第7話では、シュンとの戦闘がありました。こちらの感想はいかがでしたか。
石川 このときのユーゴーは、「俺」という単語を非常に強く出しているんです。とにかく自尊心が強いので、もう「俺、俺、俺」と。こいつ(シュン)をどうにかして、俺という自我を保つしかない。そういう状態です。完全に視野狭窄に陥っている……そんな方向性を目指して演じていました。
――シュン役の堀江瞬さんとの掛け合いはいかがでしたか。
石川 一緒にできて楽しかったです。世の中がこういう状況になってアフレコの人数が制限されるようになってから、バトルで相手役とちゃんと掛け合うのが久しぶりだったので、とてもテンションが上がったのを覚えています。すげえ、楽しかったです。……と、子どもの感想になってしまうくらい盛り上がりました(笑)。
――第12回のインタビューで堀江さんも「楽しかった」とおっしゃっていました。
石川 堀江君が演じる役と戦うことって今まであまりなかったんです。しかも、事務所の先輩後輩とはいえ同い年(石川さんが先輩)。力比べ感が出てしまうというか(笑)、自然と意識してしまうんです。堀江君は謙虚で「僕なんかが石川さんには……」なんて言うんですが、僕からすれば脅威ですから。だって、芝居がすごくいいんです。食われるのは嫌だと思うくらい本当にいい芝居なので、堀江君と並んでマイク前に立つとちょっとした焦りを感じます。そういう意味では、ユーゴーとシンクロしているのかもしれないです。
――そして、第7話の後半ではフィリメスにスキルを封印され、ソフィアの申し出を受け彼女の力を頼ろうとします。
石川 フィリメスは、やり方がエグい!
――ははは(笑)。
石川 ユーゴーについていろいろ言っていますが、なんだかんだ嫌いではないんです。演じているときはかなりユーゴーの心境に寄っていますし、やっぱり邪魔する奴を排除したくなる気持ちはわかります。
――ソフィアについていこうとするシーンは、完全に復讐者としての覚悟を決めているのでしょうか。
石川 “覚悟”とか“決意”のような大仰なものはないと思います。ユーゴーは、目の前のタスク一つに固執してしまうタイプ。それで視野が狭くなってしまって冷静ではなくなっているのだと思います。実際、「~してやる!」というセリフが多くて、一貫して「自分が一番になる」ということに固執していて、それ以外のことに目を向けられていないんです。冷静だったら、もっと他の方法を考えたりできますよね? 「一番になる」という目の前のタスクをクリア出来ないことで冷静さを失ってどつぼにハマってしまっている。そんな状況でチャンスが巡ってきたから、それを掴んだだけだと思います。
――なるほど。
石川 何かしらの決意があったように聞こえているのだとしたら、役者としてそれは非常に光栄なことです。ユーゴー本人は何か大きな決意をしたと思い込んでいるわけですから。ただ、ちゃんと俯瞰してみると、それは蜘蛛の糸を掴んだだけですよ、と。
――これまでのエピソードを振り返って、改めてユーゴーとシュンの関係性で感じたことなどを教えていただけますか。
石川 難しい関係だと思います。第8話で高校時代のユーゴー(夏目健吾)たちが描かれましたが、決してユーゴーとシュン(山田俊輔)は友達というわけではないんです。ただのクラスメイトなだけで、実は関係性という関係性がないと感じました。
シュンたちとサッカーをするシーンも、別にシュンと仲がいいから誘ったのではなく、自分が遊びたいがために人数合わせで付き合わせただけのように見えますし、シュンたちを自分の駒ぐらいにしか見ていないな、と。あのシーンは一見いいシーンに見えますが、僕はユーゴーの自分本位な性格を表現したものだと解釈しました。
――ある意味、この世界で今の関係性になってしまうのも当然だったと。
石川 そうです。だから環境や環境が変わったことで、普通に仲の悪いクラスメイトになってしまった。ユーゴーの場合は、この世界では人の命を簡単に奪えるから、自分にとって“邪魔な奴”は殺してしまおうとなったのでしょう。ユーゴーにとってはその程度の関係性だったのかなと思います。
――シュン以外で気になるキャラクターはいますか。
石川 先ほどもお話ししたとおり、僕は冷静なふりをしてかなり役に引っ張られるタイプなので、人間サイドの登場人物……学園の制服を着ているキャラクターはみんな敵に見えます(笑)。台本を文字で追ったときに、「このキャラクターはユーゴーにとっての邪魔者」という印象を持ってしまうので。
強いて挙げるならば、フェイが気になります。転生前は美少女だった彼女が、魔物になってこの姿を受けて入れていきますが、彼女がもし人間として転生していたらどんな姿になるのかやっぱり見てみたいです。
――では、第11話以降の見どころや石川さんご自身が期待しているポイントを教えていただけますか。
石川 個人的な願望でいうと、もう一度シュンと戦いたいです。自尊心を肥大化させていったユーゴーが、どんな形でシュンと向き合い、どんな結末を迎えるのか。皆さんと一緒に楽しみにしたいです。
それから、やはり蜘蛛子サイドの話と勇者サイドの話がどう関わってくるのかが気になるところだと思います。この先、いろいろと謎も解き明かされていくので、ぜひ楽しみにしていていください。
【取材・文:岩倉大輔】