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7月10日(土)と11日(日)に、埼玉・ところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールAで朗読劇「わたしの幸せな結婚」の公演が行われました。
著・顎木あくみさん、装画・月岡月穂さんによる同名の小説を原作とする「わたしの幸せな結婚」は、継母と義母妹に虐げられて育った斎森美世が悪評で知られる若き軍人・久堂清霞の下に嫁ぎ、少しずつ心を通わせていく姿を描く和風シンデレラ・ストーリーです。
朗読劇では、斎森美世を上田麗奈さん、久堂清霞を石川界人さんが演じました。本稿では、ニコニコ生放送での生配信も行われた11日夜の千秋楽公演のレポートをお届けします。
物語は、主人公・美世にとっての日常の風景――彼女が継母の斎森香乃子や義妹の斎森香耶たちから虐げられるところから幕を開けます。美世役の上田さんをはじめ、香耶役の八木侑紀さん、斎森香乃子役のきそひろこさん、美世の父である斎森真一を演じる坂東尚樹さんら、キャスト全員が和服を着用しており、作品の世界感が視覚でも楽しめました。
上田さんは深くうつむきながらの芝居を披露し、何の楽しみも希望もなく、亡き母の下に行ける日だけを願う美世の絶望が、そのたたずまいからも感じられました。
亡き母・澄美が持っていた異能の才を受け継がなかった美世はついにお払い箱となり、数々の婚約者が3日も経たずに逃げ出したという冷酷無慈悲さで知られる久堂家の若き当主・清霞の下へ嫁ぐことになります。
そうして登場した、石川界人さんが演じる清霞はその評判に違わず、「私が出ていけといったら出ていけ、死ねといったら死ね」と美世を冷たくあしらいますが、そう言われても怒るでもなく、泣くでもなく、ただ素直に受け入れる彼女の姿に、彼は強く戸惑いを覚えるのでした。
そして美世もまた、清霞が不器用ではあっても、その心根は冷酷でも無慈悲でもないことを知り、彼に少しずつ惹かれていきます。
少しずつ美世を気遣うようになる清霞。しかし美世は自身が異能の力を持っていないこともあり自己評価が極端に低く、優しくされればされるほどに自分を追い詰めていきます。
"和風シンデレラ・ストーリー"と銘打たれているように、美世がこれまでに歩んできた人生は不遇や不幸などという言葉では語り切れないほどのもので、上田さんの繊細な声質と芝居、そしてたたずまいが、そんな彼女をこれ以上ないほどに体現しています。
物語のそうした一面が描かれる局面は重い雰囲気となりますが、石谷春貴さんが演じる清霞の部下・五道佳斗の飄々とした物言いや、佐々木優子さんが演じる、清霞が幼少の頃からずっと側仕えをしているゆり江が美世のよき理解者となる姿は物語において一服の清涼剤ともいえる存在で、見る者に安らぎを与えてくれました。
母を亡くして以降初めての平穏な日々に、美世は戸惑いながらも少しずつ変わり始めます。しかし、彼女の出自である薄刃(うすば)家は、異能を持つ家の中でも飛びぬけて異質で、危険とされている一族です。
美世本人には異能の力が発現しなかったとはいえ、そんな家の血を引く娘であるという事実が、やがて彼女をさらなる苦難の道へと引きずり込みます。そしてそのとき清霞は――。
終幕後のカーテンコールでは、清霞と美世のこれからを祝福するかのように舞台上に桜の花びらが舞い散り、挨拶をする出演者たちに万雷の拍手が送られました。舞台から最後に退場していくのは、もちろん主演の上田さんと石川さんです。
先に歩き出した石川さんは清霞のように後ろを振り返りながら美世を気遣い、上田さんは美世のように楚々としたたたずまいで、その三歩後ろに続いての退場。出演者たちの熱演は最後の最後まで続き、見る者の目と心を離しませんでした。
朗読劇「わたしの幸せな結婚」の千秋楽公演は、7月17日(土)まで配信視聴チケットが発売中で、見逃し配信は18日(日)23時59分までとなっています。
和服に身を包んだ出演者たち、声だけでなく表情やたたずまいでも紡がれる繊細な芝居の数々は本公演の大きな見どころのひとつで、これらは見逃し配信でも存分に堪能できます。
また、カドカワストアでは7月29日(木)まで、アニメイトオンラインでは7月28日(水)までの期間限定で公演収録CDの受注予約を受け付けているほか、カドカワストアでは複製台本やアクリルアートパネルなどの公演グッズの事後通販も予定されています。最新情報は、READPIAの朗読劇「わたしの幸せな結婚」詳細ページでご確認ください。
さらに朗読劇は小説第1巻の内容を元に作られていましたが、今月・7月15日には最新第5巻も発売。
朗読劇のその後を描く美世と清霞の物語。こちらも必見だ。