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庵野総監督、キャストらが登壇「シン・エヴァンゲリオン劇場版」フィナーレ舞台挨拶

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」フィナーレ舞台挨拶より
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」フィナーレ舞台挨拶より(C)カラー

「自分が作るアニメーションで、今やれることは全部やれたかなとほとんどできたかなと思います」――たどり着いた26年目の到達点。

TVシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」の放送から約26年。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」2021年3月8日の公開日から125日。7月11日にシリーズの最期を飾る「フィナーレ舞台挨拶」が東京新宿のバルト9で行われました。この舞台挨拶の模様は全国333館の劇場へ生中継され、日本全国のファンがこの日をともにすることができました。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」フィナーレ舞台挨拶より
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」フィナーレ舞台挨拶より(C)カラー


登壇したスタッフ・キャストは緒方恵美(碇シンジ役)、三石琴乃(葛城ミサト役)、山口由里子(赤木リツコ役)、立木文彦(碇ゲンドウ役)、庵野秀明(総監督)。今回、出席したキャストの顔ぶれは、緒方恵美さん曰く「TVシリーズ第1話の冒頭で、碇シンジが出会う人たち」。26年前のアフレコの日々を思い出す、懐かしいトークから舞台挨拶は始まりました。

「第壱話の収録のときは、画が100%入っていたんですよ」「綺麗なカラーでした」と緒方さんと三石さん。緒方さんは「皆さんがご覧になった第壱話と同じ映像をスタジオで我々も観ていたので。これは大変なものが始まったと衝動を受けたのを覚えています」と当時の映像のインパクトを語ってくれました。「第八話で1カットだけ原撮(原画を撮影した未彩色の仮映像)になった」と庵野総監督。「エヴァ」の序盤の製作状況はとても順調だったとのことです。

庵野秀明さん
庵野秀明さん(C)カラー


「でも(収録の話数が進むと収録用の映像が)だんだんホワイティ(未彩色の仮映像)になっていって」と三石さん。庵野総監督が「最後は絵もなかったからね」というと「最終回(の収録用の映像)は白味と黒味の交互に映し出される映像だったのを覚えています」と緒方さんが最終話(第弐拾六話)の過酷な収録を振り返りました。

当時、山口さんはアニメの収録に参加したことが初めての作品だったため「画に演技を合わせる必要がなくて、むしろやりやすかった」、立木さんは「はゲンドウはあまりしゃべらないですから、そういう意味ではやりやすかったです」と発言。庵野総監督は「声に合わせて、絵を作るから。大丈夫ですよ」と受け止め、「とくにゲンドウは背中で語るから」と言います。「僕は本当に大事なシーンのときは、オフゼリフ(キャラクターが画面にいない状態でしゃべること)にしたり、画を出さなかったり、キャラクターを背中にしたりして。役者さんの芝居のほうを伝えるようにしているんです」と庵野総監督の演出術を明かしました。

「でも『シン・エヴァ』はまたちょっと違ったではないですか。」と緒方さんが尋ねると、「アニメーターがそろっていると、冒険ができるんです。その場その場で一番良い方法を採っているんです」と回答。「シン・エヴァ」はTVシリーズのときと演出手法を変え、アニメーターたちの力を信じて、あえて表情を描く手法を採っていたと言います。

緒方恵美さん
緒方恵美さん(C)カラー


壇上の話題はやがて「シン・エヴァ」のアフレコへ。
「我々としては、TVシリーズのときになかなか(アニメ業界では)ないような収録をしまして、今回の劇場版でもまた違う、なかなかない収録をしましたね」と緒方さんが言うと、「そうですよね。収録するのに2年半くらいかけて」と山口さん。「『エヴァ』はアフレコの回数は多いっていうけど、『エヴァ』のスタッフのみなさんに比べれば、ずっと楽ですよね。皆さんはずっと『エヴァ』に根を詰めていたでしょうから」と三石さんはスタッフを思いやりながら、「シン・エヴァ」の収録を語りました。

ここでSNSで募集したファンからの質問に回答するコーナーに。
いくつかの質問の中で、印象的だったものは「碇ゲンドウが『あの人』の名前を連呼するシーンを、どのような思いで演じたか」という立木さんへの質問。
「あの人の名前を呼ぶのは、ひとつのシーンだけでした。これまでも『エヴァ』の歴史の中で「(綾波)レイ」を呼ぶことは何度かあったんです。つぶやいたり、叫んだり、死に物狂いでがんばったりして。その中に自分の『あの人』への気持ちを込めていたんです。今回はその思いがストレートに出てくるので、その気持ちに正直に。心から湧いてくる感じにしゃべったような感覚が記憶にあります。叫びすぎてもいけないし、ボソボソとでもいけない。あのシーンはけっこうな回数をやりましたね。声を枯らしてしまって、そのあとの収録に支障が出てしまって申し訳なかったと思います。「あの人」の名前を呼ぶのが一番大好きなので頑張らせてもらいました」と立木さんが告白。すると「あのシーンは、そんなに回数録ってないよ」と庵野総監督。「ほかの人とは違います。ほかの人は30テイク、40テイクしているので(笑)」と「シン・エヴァ」の収録の中でも、ゲンドウのシーンが特別だったことを明かしてくれました。

立木文彦さん
立木文彦さん(C)カラー


そして、今回の登壇者一同に「あなたにとっての『エヴァ』とは」という質問がおくられました。
立木さんは「『エヴァ』に関わってきて、いまだにクリアできない部分があってそれが楽しみのひとつでもあるんです。26年間やってきたリアル人生ゲームのようなところもあました。自分の中では声優をやりはじめて最初のころの作品だったので、作品というよりも、自分でもわからないくらいの存在になっています」と正直な気持ちを回答してくれました。

山口さんは「「エヴァ」のオーディションから声優の世界に入ったので、とても感謝をしている作品です。思ってもいなかった声優という職業の始まりで、何故なんだろうとずっと考えながら26本やっていました。自分の運命を変えてくれた作品です。あるときから、庵野監督のもとでエヴァのいちクルーとして最後まで作品の中で生きるということが、今生の使命のように思っていて。だから、今生の使命がひとつ終わるという感じがありますね」と万感の思いとともに回答。

山口由里子さん
山口由里子さん(C)カラー


三石さんは「『エヴァ』は山というか、『ザ・マウンテン』って感じですね。(『エヴァ』の収録が始まると)よし登ろうと思って、仲間といっしょに頂上が見えて、良い景色をみえたねと喜びあって。そこから降りると、次の山はないのか? と探してしまうような。あったら、すぐ登りたいという気持ちにさせてくれる『ザ・マウンテン』です」と彼女らしいトークを繰り広げます。
そして、緒方さんは「自分自身のもうひとつの14際の記憶だと思っています」とひとこと。

三石琴乃さん
三石琴乃さん(C)カラー


庵野総監督は「スカしていえば『僕自身の最新作』(笑)。でも、そういうものじゃないなとも思っていて、企画自体は1992年からやっているので30年近く関わっている作品なんです。自分の人生の半分なんですよね。自分の人生の半分を費やした作品なので、終わったことは感無量です。感無量の作品です」と、全てを総括してくれました。

最後に庵野総監督が席から立ち上がり、客席をまっすぐと見つめて、感謝の言葉をつむぎます。
「今日は最後にみなさんにお礼を申したくて、ここに来ました。……ありがとうございました」。
本当はいろいろ言おうと思ったんですけど、それしか出てこなかったと、あふれる思いに言葉を詰まらせながら、26年間応援してきたファンへ、「シン・エヴァ」を観たファンへの素直な思いを告げました。日本全国から贈られる万感の拍手。その拍手を浴びながら、山口さん、三石さん、緒方さん、立木さん、庵野総監督が退場していきます。庵野総監督は三度頭を下げ、この最後のこのステージをあとにしました。

なお、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、公開から昨日(7/12)までの127日間累計で、ついに興行収入100億円を突破。21日に一部の劇場をのぞいて終映が決定しています。映画館で「シン・エヴァ」を見られるこの機会をどうぞ逃さずに。また、発売中のニュータイプ8月号では、葛城ミサト役三石琴乃さんのインタビューを掲載。こちらも併せてご覧ください。

【取材・文/志田英邦、写真/大川晋児】

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」
全国劇場にて上映中

リンク:「エヴァンゲリオン」公式サイト
    公式Twitter・@evangelion_co

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