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15年ぶりの漫画で、見たことのない「エヴァ」を描く/「シン・エヴァンゲリオン劇場版」特典冊子を描く監督・前田真宏インタビュー

スタジオカラーデジタル部の松井(祐亮)さんに 「ヱヴァンゲリヲン劇場版:Q」のときに使った3Dモデルを出してもらい、それを基に描く。完成画像には、より細かいディテールが足されている
スタジオカラーデジタル部の松井(祐亮)さんに 「ヱヴァンゲリヲン劇場版:Q」のときに使った3Dモデルを出してもらい、それを基に描く。完成画像には、より細かいディテールが足されている(C)カラー

現在絶賛公開中の映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。そのラストランとして6月12日より、公式謹製36P冊子「EVA-EXTRA-EXTRA」が全国劇場で配布されています。そこには“EVANGELION:3.0(-120min.)”という漫画を収録。これまで語られることがなかった「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の前日譚が描かれています。この漫画を手掛けた前田真宏監督に、この貴重な漫画ができるまでを伺いました。

――この漫画を描くことになったきっかけは何だったんですか?

前田:冊子をつくることに決めたのは4月11日の舞台挨拶の日です。あのとき控室で庵野(秀明)さん(総監督)から発案があって、じゃあ、やりますか!と制作が決まりました。興行収入というものは、単純に商売の成否だけではなく、監督のこれからの活動にも影響するものなので、みんなで盛り上げようという気持ちがありました。同時に、このコロナ禍の逆風の中でたくさんの方が映画館に足を運んでくださった。その感謝の思いもすごく大きくありました。ハンパじゃないお土産をつくって、応援してくれた方々に喜んでもらいたい。その気持ちが本当に強かったですね。

――じゃあ製作期間は実質1か月くらい?

前田:そうですね。ギリギリまで作業をしていました。

――漫画はどんな手順でつくられたのでしょうか?

前田:最初にマッキー(鶴巻和哉監督の愛称)がシナリオを書くと言ってくれたんです。じゃあ、マッキーが漫画を描けばいいじゃんと思ったんだけど「ネームがわからない」「漫画を描いたことがない」というので、本当かなあと思いつつ、ネームを引き受けることにしました。マッキーからシナリオをもらって、それでネームを切っています。いわゆるコマ割りとレイアウトですね。キャラの作画は松原(秀典)くん、背景は僕が担当しています。ネームの段階で、庵野さんから注釈をもらって、スタジオカラーにいる元JAXAのスタッフか考証をして、微調整しながら作っていきました。

――鶴巻さんの脚本を読んで、どんな感想がありましたか。

前田:マッキーの中では、キャラクター(真希波・マリ・イラストリアス、式波・アスカ・ラングレー)のイメージはこうなのか、とあらためて感じるところがありましたね。僕が描いたネームを見せたところで、コマの運びについて微調整があって、マッキーのテンポ感があるんだなという感じもありました。

――背景ということは、ロケット発射台(シーローンチデキャップル複胴式可潜艦)を前田さんがお描きになっているんですね。

前田:当初、庵野さんはロケット発射台を潜水艦にしたかったんです。ネルフに見つかってはいけない隠密行動ですから。発射位置まで潜水して、浮上したらロケットを発射して、また潜る。そういう機構を提案されたんですが、いかんせんエヴァが先端についているロケット(大質量軌道投入用大型複合式ロケット)ですから、めちゃめちゃサイズが大きいんですよ。海中にいても大陸棚だと、潜ってもロケットの先端が海上に出てしまう。可倒式だと設定を固める時間がない。そこで潜水は諦めて「可潜艦の上に発射台を乗せる」というプランになりました。原子力潜水艦を並べてイカダにして、その上に発射台を設置している設定にしました。とはいえ、あのロケットを正確に描くのは難しいですから、デジタル部の松井(祐亮)くんに「:Q」のときに使った3Dモデルを出力してもらい、それをもとに描きました。

――それであんなに緻密に……。

前田:最初に描いた絵は庵野さんからリテイクが出まして。ギリギリになって松井くんの3Dモデルを下敷きにして加筆するというやり方に変更したんです。松井くんのモデルがなければ締め切りに間に合わなかったと思います。本当にありがたかったです。

――冊子では、前田さんもイラストを寄稿していますね。

前田:最初は6Pくらいの漫画を描こうと思ったんです。ですが誌面にそこまで余裕がなく、しかも、ギリギリまで“EVANGELION:3.0(-120min.)”の作業があったので、漫画に描こうと思っていたことを1ページにまとめて描きました。個人的には満足するイラストが描けたので嬉しかったですね。

――前田さんはかつて漫画も描かれていたことがありましたが、今回の執筆はどれくらいぶりですか?

前田:何年ぶりだろう……「巌窟王」(2005年)以来かな(笑)。久々の漫画でしたが、みんなで描くことができて、とても楽しかったです。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」特典冊子を描く監督・前田真宏インタビュー
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」特典冊子を描く監督・前田真宏インタビュー(C)カラー

現在発売中の月刊ニュータイプでは、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q EVANGELION:3.333」前田さんのインタビューと、カラーグレーダー・齋藤精二さんへ氷川竜介さんがお話を伺った「エヴァの映像の進化」を掲載。加えて「シン・エヴァンゲリオン劇場版」葛城ミサト役三石琴乃さんのインタビューを掲載。こちらもチェック!

【取材・文:志田英邦】

公式謹製36P冊子「EVA-EXTRA-EXTRA」

表紙描き下ろし:錦織敦史

漫画 “EVANGELION:3.0(-120min.)”
企画・原作・監修 庵野秀明
脚本・監督 鶴巻和哉
漫画 松原秀典 前田真宏

描き下ろし寄稿:浅野直之、井関修一、金世俊、田中将賀、新井浩一、錦織敦史、前田真宏、鶴巻和哉、松井祐亮(カラーデジタル部)、岩里昌則(カラーデジタル部)

特別寄稿:庵野 秀明

リンク:「エヴァンゲリオン」公式サイト
    公式Twitter・@evangelion_co

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