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2022年3月5日、2021年度に最も活躍した声優を讃える第十六回声優アワードの受賞者が発表されました。本稿では、新人男優賞を受賞した佐藤元さんのオフィシャルインタビューをお届けします。
――第16回声優アワード「新人男優賞」受賞おめでとうございます。受賞を知ったときの気持ちをお聞かせください。
佐藤 自分が声優になる前から知っていた賞なので驚きましたし、うれしかったです。ひとつ目の目標を達成できた気持ちでしたし、頑張った結果が出てよかったです。
――受賞対象期間の2020年10月から2021年9月までは、どんな1年でしたか?
佐藤 少しずつですが、お仕事をいただけるようになってきたのですが、現場では自分の足りないところを痛感し、反省することも多かったです。ただ、通用する部分もあったので、酸いも甘いも味わうことができた濃密な期間でもあったと思います。これからの声優人生において大事な基礎になるような仕事がたくさんあったので、そういう意味では楽しかったです。
――やはり悩んだりすることも多かったんですね。
佐藤 できないことを痛感しては悩んでの繰り返しでしたし、それはこれからも変わらないのかなと思います。ただ、そこで逃げずに立ち向かっていけた自分に対しては褒めてあげたいです。そして、間違えた方向に行ったときには厳しく、本当にツラいときには優しく支えてくださった方々には感謝したいです。
――コロナ禍で分散収録が主流だったことで、先輩のお芝居を直接見られなかったり、食事にいっしょに行けなかったりしたことは大きかったのではないですか?
佐藤 そうですね。特に座長をさせていただいたときは、現場でどうコミュニケーションを取ればいいのか分からなくて……。今の状況下で自分にできる最善策を先輩方と相談していました。それと自分と向き合う時間が増えたので、人生についてや、役としての生き方について考えることもできました。そこで、本当に自分はお芝居や仕事が大好きなんだなと気づけたことは大きかったです。
――受賞の決め手となった作品が「弱キャラ友崎くん」の友崎文也役、そして「美少年探偵団」の指輪創作役となりますが、作品で印象的だったことや思い出を教えてください。
佐藤 「弱キャラ友崎くん」は日本でやったアニメの中では初の主役なので、まず役に選んでいただけたこと自体が光栄でした。友崎くんはセリフ量がすごく多かったので、とても大変だったんです(笑)。でも、音響監督の本山哲さんが丁寧にディレクションしてくださったし、人と話すのが苦手な陰キャの友崎くんが、クラスメイトにどう向かっていくのかを細かく打ち合わせしながら、お芝居をしていった気がします。
僕は友崎くんの“人生を努力で変えようというスタンス”が好きで、それは僕の歩んできた人生とも通じるんです。そういう意味ですごく親近感が湧くキャラクターでしたし、原作の屋久ユウキ先生が伝えたかった思いを、視聴者の方々に余すことなく届けるにはどうしたらいいのかを、悩みながら演じさせていただきました。
「美少年探偵団」の指輪創作は、ほとんどセリフがないんです。原作でもあまりしゃべらないので、何を考えているのか分からなかったです(笑)。なので役をいただいたときは「どうしよう……」と思いました。でも彼は、“しゃべれない”のではなく“しゃべらない”ので、しゃべらない理由、逆にしゃべる理由を考えて、たったひと言への思いや願いを模索しながら挑んでいましたね。
――事件解決のきっかけになるような大事なひと言を言うんですよね。
佐藤 そうなんですよ(笑)。きっかけになるセリフだからこそのプレッシャーがあって、いつもドキドキしていました。ただ、先輩が多い現場だったので、支えていただきながら演じることができたと思います。
――‘21年に出演されたほかの作品や、佐藤さん個人の活動で印象に残っていることというと?
佐藤 YouTubeでの活動です。僕は下野紘さんを尊敬しているのですが、下野さんって、いろいろなスタイルで声優の魅力を世に広めている方だと思うんです。それを見てきて、僕もYouTubeを通して、少しでも多くの人に声優というものを知っていただけたらいいなと思っています。
あとは、ゲーム「ジャックジャンヌ」の世長創司郎役ですね。劇団の話なので、お芝居の中でお芝居をするという難しい役柄だったのですが、自分の中でお芝居が覚醒したと感じることができたんです。この作品がなければ、僕のお芝居のスタンスは見つからなかっただろうし、世長くんに出会えたからこそ、お芝居をしたい! 頑張りたい! 自分の尊敬する先輩方のように、人間としても成長していきたいという気持ちになれたので、巡り合わせてくださったすべてに感謝です。
――今後、こんな役を演じたい!というものはありますか?
佐藤 こういう役を演じたいというのはあまりなく、むしろどんなキャラクターでも演じられるようになりたいです。幅広く、どんな役でも佐藤元なら任せられると言ってもらえるよう、頑張ります。
――声優として今後の目標がありましたら、お聞かせください。
佐藤 今回新人賞をいただき、ひとつの目標が達成できたので、次の目標となると、賞にこだわるわけではないのですが、主演賞・助演賞をいただけるような役者になりたいです。とある事務所の先輩声優の方が言ってくださった「佐藤くんは声質的に真ん中にも立てる人だと思う。でも忘れないでほしいのは、真ん中が輝けるのは周りの支えがあるからだし、周りになれるのは真ん中が輝いていてくれるからなんだよ」という言葉が心に残っています。僕がまた主役をやらせていただけることがあるならば、僕自身が輝いて、周りを輝かせたいですし、脇を固める役柄のときは、真ん中の人が真っすぐに輝けるようにサポートできる役者になりたいと思います。
――では最後に、ファンへメッセージをお願いします。
佐藤 人生を歩んでいく上で、人間として考え方は少しずつ変わったりしていくと思いますけど、役者であり続けることは不変であると誓っているので、これまで通り、作品に対して誠心誠意取り組みますし、役に対して全力で挑んでいきたいです。ファンの皆さんがいてくれるからこそ、僕は仕事ができている。これからも応援していただけたらうれしいですし、僕自身も皆様に恩を返せるように頑張ります!
【撮影:田上富実子/取材・文:塚越淳一】