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2022年3月5日、2021年度に最も活躍した声優を讃える第十六回声優アワードの受賞者が発表されました。本稿では、助演女優賞を受賞した高橋李依さんのオフィシャルインタビューをお届けします。
——第十六回声優アワード助演女優賞おめでとうございます。この受賞を知ったときのお気持ちをお聞かせください。
高橋 とてもうれしかったです。今回選んでいただいた対象作品は長くかかわらせていただいているシリーズ作品や劇場編集版で。今年1年というよりも、ここまで継続してきたお仕事を改めて評価していただけたのかなと感じています。
——コロナ禍での活動だったと思いますが、2021年はどんな1年でしたか。
高橋 コロナ禍になって、自分ひとりで何かをしようとしても何もできないなと実感していまして。そういう無力さを感じたときに最初に支えになったのがSNSでした。応援してくださる皆さんとつながれる場所でもあったし、業界のみなさんとフォローし合う場所でもあって、みんながどんなふうにコロナ禍の日常を過ごしているのかを知ることができたんです。皆さんからのリプライはもちろん読んでいますし、心での会話もできたと思っています。そうやって気持ちを整理していくなかで、いっしょに何かを届けるための仲間が欲しいなと思い立ち、アーティスト活動に挑ませていただきました。声優という仕事は、脚本や設定、イラストなど、既に50までできているものを、70くらいまで引き上げていくお仕事なのかなと思うのですが、アーティスト活動をすることでゼロから1を生み出す瞬間に携われることが新鮮でした。そういった活動も、声優という仕事に還元できればいいなと思っています。
——アーティスト活動を通じて、声優活動にプラスになっているなと感じることはありますか。
高橋 やはりコロナ禍で自分と向き合う時間が増えたのですが、もやもやとした気持ちをかたちにできるのはすごくありがたいなと思いました。自分が好きじゃなかった感情も作品になると、ちゃんと愛することができて、受け止めることができる。そういったことは役者としてもすごく刺激になっています。
——今回の受賞は「Re:ゼロから始める異世界生活2nd season(以下リゼロ)」のエミリア役、「かくしごと」の後藤姫役での演技が評価されてのこととなっています。それぞれの役柄にどんな印象を抱かれていますか。
高橋 「リゼロ」は、2016年に1st season が放送されてから約6年が経っていて、長く続けられることの喜びを常に噛みしめています。エミリアは銀色の髪のハーフエルフや美少女などと、設定上の呼称で説明されることが多いんですが、ストーリーでは彼女の感情を丁寧に、すごく人間らしく描いてくださっているんです。だから私はエミリアに、キャラクターではなく、ひとりの人間として向き合っていきたいなと思っています。
——2nd seasonでは、エミリアは試練に挑み、乗り越えていく一面が描かれていましたね。
高橋 エミリアを演じるときは、不思議なことにそのときの自分の置かれている状況と近いことが多いんです。とくに「リゼロ」2nd seasonの収録のときは、コロナ禍で人と関わることが少なくなるなかで、どんどんダメな自分と向かい合ってしまって。2nd seasonのエミリアのように、出来ない自分を責めてほしい、怒られて許されたいという気持ちが痛いほどわかったんです。「リゼロ」はまだまだゲームなどでも収録が続いているので、これからもエミリアのよき理解者でありたいなと思っています。
——劇場総集編として公開された「かくしごと」はいかがでしたか。
高橋 「リゼロ」が続く喜びを感じているとしたら、「かくしごと」は完結する喜びを味わえる作品でした。「かくしごと」はアニメ本編が最終回を迎えたあとすぐに、原作者の久米田(康治)先生が原作を完結させて。その原作でしか描かれなかった終わり方を、さらに劇場総集編で新規に追加するという、とても贅沢な作品だったんです。19歳の姫ちゃんを演じられたことも、最後の最後まで描ききることができたのも、すごく幸せなことだなと思いました。
——現場の雰囲気はいかがでしたか。
高橋 「かくしごと」本編の収録はコロナ禍に入る前にしていたので、みんなで収録することができました。掛け合いもとても楽しくて、姫ちゃんとして過ごした時間が、とても温かく感じられて思い出深いです。久米田先生の作品のおもしろさってなかなかことばにしづらいんですけど、久米田作品ならではの魅力にあふれた作品でしたね。
——高橋さんは2016年に新人女優賞、そして今回、助演女優賞を受賞されました。今後の抱負をお聞かせください。
高橋 いつか主演女優賞も目指したいですね。それと最近は「この人と仕事をしたい」と思うようになってきまして。例えば、まだごいっしょしたことのない役者さんや、いつも居心地の良い音響制作さん。デビューしてすぐの私にたくさんのアドバイスをくださった音響監督さんと改めてもう一度、とか、あのシーンを描いている作画の方と仕事をしてみたいと思ったり。この業界に携わる方が大好きなので、これからももっと多くの方々といい作品づくりをしていきたいですね。
【撮影:田上富実子/取材・文:志田英邦】