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映画「夏へのトンネル、さよならの出口」鈴鹿央士&飯豊まりえインタビュー(後編)「その人ごとの物語になる、ひとりひとりに寄り沿ってくれるものがある作品」

9月9日(金)公開の劇場アニメーション「夏へのトンネル、さよならの出口」。欲しいものが手に入るという“ウラシマトンネル”を見つけた少年と少女が、ひと夏の共同戦線を組み、心の内に秘めた思いを抱えてそれぞれの道へと進んでいく、優しさとせつなさに満ちた青春物語の主人公・塔野カオルを演じた鈴鹿央士さんと、ヒロイン・花城あんずを好演した飯豊まりえさんの対談。後編では、お互いのキャラクターの印象やアフレコ現場の思い出、作品の見どころを語っていただきました。

映画「夏へのトンネル、さよならの出口」鈴鹿央士&飯豊まりえインタビュー(後編)
映画「夏へのトンネル、さよならの出口」鈴鹿央士&飯豊まりえインタビュー(後編)(C)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

――前編ではご自身が演じたキャラクターの印象を話していただきましたが、逆に相手が演じたキャラクターの印象をお聞きします。飯豊さんから見た、カオルの印象は?
飯豊 カオルは包容力がありますよね。あんずに合わせたり気をつかってくれたりするし、あんずの本心や足りないものを見つけて「あなたはこうだよね」と言ってくれて、迷っているときには同じ気持ちになって質してくれる。そんなところが、共同戦線の相手として魅力だなと思いました。

映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より
映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より(C)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

――演じている鈴鹿さんのなかに、カオルとの共通点を感じましたか?
飯豊 鈴鹿さんはほぼ地声で演じていたと思うんですが、それがカオルの声のままなんです。だから鈴鹿さん本人とカオルが似ている気がします。どこかつかみどころのないミステリアスさとか、「自信がない」と言っているけれどすごく魅力的で、才能にあふれているところとか、本当に鈴鹿さんがもっているものだなと感じました。

――鈴鹿さんは、あんずのどんなところに魅力を感じましたか?
鈴鹿 花城さんはやりたいことが明確で、自分の道を決めて、覚悟をもって進んでいるところが、芯が通っていてすごくかっこいいんです。カオルを尻に敷いているところも、2人のバランスとしてちょうどいいというか。
飯豊 萌えポイントなのかな?
鈴鹿 そうですね。花城さんくらい引っ張ってくれる意志の強い人というのは、魅力的だなと思いました。

映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より
映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より(C)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

――そんなあんずと飯豊さんの共通点は?
鈴鹿 飯豊さんは、前にスッと立って道を示してくれる“お姉さん”という感じがします。花城さんはやや強引なところがあるんですが、飯豊さんは「こっちなんだよ」と道標をつくってくださったなと。初めてのアフレコだったので、すごく頼りにしていました。
飯豊 私も頼りにしていました。声がすてきで、合わせていくのが楽しかったです。

――鈴鹿さんはアフレコは初めてということで、役者として演じる場合と、声優として声だけで表現する場合のお芝居の違いはありましたか?
鈴鹿 最初は声の距離感がつかめなくて苦労しました。うまくできないと、隣で見ていた飯豊さんが「この辺に向かってしゃべってみて」と的確なアドバイスをしてくれて、その通りにやったらOKをもらうことができたんです。
飯豊 そうだったね(笑)。「どうしよう〜」という感じでウルウルしているので、助けてあげたくなって。
鈴鹿 ありがとうございました(笑)。あと、息の演技が難しかったです。走っているときや何かに気づいたときなど、いろんなシチュエーションがあったので。
飯豊 でもすごく上手でした。
鈴鹿 そう言ってもらえてうれしいです。走っているときの息も、プロの声優さんとは少し出し方が違うらしくて。自分ではどう違うのかわからないんですが、「違うところがいい」とおっしゃっていただいたので、よかったです。実は自分の声には少し違和感があるんですが、それでもスッと役に入り、作品の世界のなかで生きることができたのは、この作品の世界観がすばらしかったからだと思います。
――飯豊さんは声優としても出演作が多いですが、今回のアフレコはいかがでしたか?
飯豊 共同戦線を結んで、2人で調べ物をしているときの掛け合いのシーンは、テンポ感もすごく楽しかったです。それと、2人が出会う香崎駅のシーンでは、ちょっと空気感がピリついて、お互いに探り合っている間合いがおもしろくて、演じていて楽しかった。ラフ画の状態で声入れするのは難しかったのですが、2人で話し合いながら、役者ならではのナチュラルなお芝居の間や空気感を大事にして収録しました。完成した映像を見ると、音楽にもすごく助けられているなと感じましたね。カオルとあんずって、ローテンションで淡々としゃべっているシーンが多いんですが、盛り上がるところではアップテンポな曲やエモーショナルな曲がかかっていて。そこは映像美と音楽の力が大きいなと思いました。

映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より
映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より(C)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

――ご自身が演じたキャラクター以外で、「いいな」と思ったキャラクターは誰ですか?
鈴鹿 僕は、クラスメイトの加賀さんの「深い深い、マリアナ海溝ぐらい深い」というセリフがおもしろかったです。すごくいい味が出ていて、すてきでした。
飯豊 確かに! 私は小春ちゃんが好きです。あんずに意地悪をしますが、そういう人って最後に寄り沿ってくれるパターンが多くて。彼女のそんなところがかわいかったです。

――もしウラシマトンネルを見つけたら、入りたいと思いますか?
飯豊 私は入りたくない派です。だって、夢をかなえたり、欲しいものを手に入れたりする過程が尊いというか、楽しいと思うんです。一瞬で手に入れることができたら、その後空っぽになってしまう気がして。手に入れたときの重みが違う気がするというか、私は重層的になっているものに魅力を感じますね。
鈴鹿 深い……。マリアナ海溝かな(笑)。でも僕は、ちょっと興味本位で入っちゃうかもしれないです。
飯豊 迷って出てこられなくなりそう。そんな危うさがありますね(笑)。

映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より
映画「夏へのトンネル、さよならの出口」より(C)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

――本作をどんな人に見てほしいですか?
鈴鹿 この作品は、見ている人の世代や環境によって違う視点で楽しめますので、僕の親世代の方から同世代、そして中高生の皆さんまで、いろんな年代の人に見てほしいです。きっとその人ごとの物語になってくれますし、それくらいひとりひとりに寄り沿ってくれるものがある作品です。ぜひ劇場で楽しんでいただけたらうれしいです。
飯豊 そうですね。カオルやあんずのような10代の方のなかには、これから夢を見つける人もいれば、本当に孤独で何も手がつかない人もいるかもしれません。でもこの作品が、ありのままの自分を見つけるきっかけなり、少しでも「自分はいったい何者なんだろう」と考えてもらえるのではないかと思います。大人の皆さんは、きっと「あの過去の思い出があったから、今がある」と思える肯定感みたいなものを感じていただけるのではと思います。それを感じて、少しでも孤独が癒やされたらいいなと思っています。

【取材・文:ナカムラミナコ】

■「夏へのトンネル、さよならの出口」
9月9日(金)より全国劇場で公開

スタッフ:原作…八目迷「夏へのトンネル、さよならの出口」(小学館「ガガガ文庫」刊)/原作イラスト・キャラクター原案…くっか/監督・脚本・絵コンテ・演出…田口智久/キャラクターデザイン・総作画監督…矢吹智美/作画監督…立川聖治、矢吹智美、長谷川亨雄、加藤やすひさ/プロップデザイン…稲留和美/演出…三宅寛治/色彩設計…合田沙織/美術設定…綱頭瑛子(草薙)/美術ボード…栗林大貴(草薙)/美術監督…畠山佑貴(草薙)/撮影監督…星名工/CG監督…さいとうつかさ(チップチューン)/編集…三嶋章紀/音楽…富貴晴美/音響監督…飯田里樹/音響制作…スタジオマウス/音響制作担当…鵜澤加奈/設定制作…西川真剛/制作…金澤明之介、田口慶次郎、豆田真起子/制作プロデューサー…松尾亮一郎/アニメーション制作…CLAP/主題歌・挿入歌…「フィナーレ。」「プレロマンス」eill/配給…ポニーキャニオン/製作…映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

キャスト:塔野カオル…鈴鹿央士/花城あんず…飯豊まりえ/加賀翔平…畠中祐/川崎小春…小宮有紗/浜本先生…照井春佳/カオルの父…小山力也/塔野カレン…小林星蘭

リンク:「夏へのトンネル、さよならの出口」公式サイト
    公式Twitter・@natsuton_anime
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