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TVアニメ「文豪ストレイドッグス」中島敦役・上村祐翔×ラックライフ・PON対談(前編) 「自分の人生を振り返るきっかけをもらっている」

国内外の文豪の名を冠した者たちが異能力でしのぎを削る「文豪ストレイドッグス」がアニメ化されてまもなく7年。現在、第4シーズンがオンエアされています。その第4シーズンの放送を記念して、中島敦役を演じる上村祐翔さんと、EDテーマを歌うラックライフのPONさんが対談。お互いの7年の歩みを振り返りました。前編では第3シーズンまでを振り返ります。

TVアニメ「文豪ストレイドッグス」中島敦役・上村祐翔×ラックライフ・PON対談(前編) 「自分の人生を振り返るきっかけをもらっている」
TVアニメ「文豪ストレイドッグス」中島敦役・上村祐翔×ラックライフ・PON対談(前編) 「自分の人生を振り返るきっかけをもらっている」(C)朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA/文豪ストレイドッグス製作委員会

――TVアニメ「文豪ストレイドッグス」において、上村さんは中島敦役として、ラックライフのPONさんはED曲の提供で、第1シーズンから現在に至るまでずっとかかわってこられています。お2人が正式に対談されるのは今回が初めてだそうですね。
上村 イベントなどでお会いしたときにお話をすることはありましたけど……。
PON それもかなり前ですよね。今回はお久しぶりです。確か、上村さんは「文豪ストレイドッグス」が初主演作なんですよね?
上村 そうです。
PON 僕らはメジャーデビューが「文豪ストレイドッグス」だったんです。
上村 そうでしたよね!
PON お話をする機会は少ないですけど、僕らは同じタイミングで世の中に出た、同志のような気持ちでいましたね。

TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第1シーズンEDより
TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第1シーズンEDより(C)2016 朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA/文豪ストレイドッグス製作委員会

――「文豪ストレイドッグス」第1シーズンのEDは「名前を呼ぶよ」でした。この曲は「文豪ストレイドッグス わん!」のEDで、上村さんが中島敦名義でカバーしていましたね。
PON 自分がつくった歌を人に歌ってもらうことは、あまり経験がなかったので、カバーしてくださってうれしかったです。原曲とは違うアレンジになっていて、上村くんが歌うとすごく優しいテイストの曲になるなと思いましたね。
上村 「文豪ストレイドッグス わん!」は、本編と違ったスピンオフだったので、緩やかな雰囲気のアレンジにしていただきました。レコーディングするにあたり、「名前を呼ぶよ」のMVを改めて見直したんですけど、PONさんの歌がめちゃくちゃ上手すぎて。僕は中島敦としての歌唱だったので、敦らしさを残しつつ、ただしあまり敦すぎると単なるキャラクターソングになって、アニメのEDとはちょっと違ってしまう。以前から、TVアニメ「文豪ストレイドッグス」の監督の五十嵐(卓哉)さんから「敦を演じるときは、上村祐翔と中島敦をすり合わせて演じてほしい」と言われていたので、僕らしさと敦らしさが混ざればいいなって気持ちで歌いました。
PON キャラクターソングをキャラクターとして歌うときと、自分自身が歌うときは違うんですか。
上村 そうですね、キャラソンを歌うときは、そのキャラクターの自己紹介のような気持ちで歌っているところがあります。
PON 僕は演じることがいっさいないので、自分のなかにあるものしか歌えないんです。だから、上村さんがおっしゃっている「キャラクターになる」っていう感じが、すごいなっていつも思っています。
上村 「文豪ストレイドッグス」のイベントに出演された時に、PONさんがいつものままで歌われていて、会場がライブハウスのようになるんです。僕はその瞬間を見るのが、すごく好きです。
PON ありがとうございます。ライブで歌うときは、いつでも自分のなかにある感情をブーストさせていく感じで歌っているんです。だから、イベントであろうと、ライブハウスだろうと僕の歌は変わらないところがあって。いつも歌うのは楽しいですね。

――TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第2シーズンではラックライフさんの「風が吹く街」がEDテーマとなりました。この曲はどのようにできあがった曲なのでしょうか。
PON 第2シーズンの脚本を読ませていただいて、織田作(織田作之助)と自分の人生を重ね合わせて、歌詞を書いていきました。織田作が最後(第16話)にくれた「人を救う側になれ」ということばを、太宰(治)さんは今も胸に秘めている。そのシーンを自分なりに考えました。自分にも、ずっと心に残っていることばがあるんです。たとえば、現在は音楽をやめてしまった人や大好きだった人に言われた「君の歌はいいよ」「楽しそうに歌っていてステキだね」ということば。それは今も自分自身のなかに残っていて。そのことばが、自分はきっと大丈夫だと信じられる理由になっている。その気持ちを歌にしようと思っていました。
上村 今でもこの曲を聴くと、第2シーズンの収録を思い出します。あのころは第1シーズンを経て、敦を演じることにようやく慣れてきたころで、自分のやりたいことをやろうとするけれど、頑張りすぎて空回りしているような感じがあって。本編のなかの敦と自分が重なっているような感じがあったんです。あのときの空気は、いまだに忘れられないですね。

TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第2シーズンEDより
TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第2シーズンEDより(C)2016 朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA/文豪ストレイドッグス製作委員会

――映画「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」ではEDテーマ「僕ら」が披露されました。劇場という場でこの曲が流れたことはどんな思いがありましたか。
PON 初めて映画の主題歌を書かせてもらうことになったので、高揚感がすごくあってドキドキしながら「僕ら」の歌詞を書いたんです。でも、最初は全然書けなくて。半分ぐらいまでしか書けていない段階で「主題歌をラックライフが担当する」ということが発表になってしまったんですよね。発表された直後は2時間くらい、密室にこもってエゴサーチをしていました(笑)。そうしたら、予想以上に期待をしてくれる人がたくさんいることがわかって。それに励まされて、「僕ら」の歌詞を一晩で書き終わったんです。みんながつくってくれた曲です。
上村 劇場版は「文豪ストレイドッグス」という作品の大本に迫る話だったと思うんです。五十嵐監督からも「ここで初めて中島敦は自立した主人公になる」と言われていて。しかも、強大な敵にみんなで力を合わせて戦うという話でもあったので、この曲がぴったりだなと思いましたね。
PON 僕は、曲をつくるのが上手じゃなくて、いつも苦しみながら書いているんです。やっぱり普通に生きていたら、なかなか歌にしたくなるようなことってめぐり合わないじゃないですか。だから、楽曲のテーマや雰囲気は、いつも作品からヒントをいただいているんですよね。そうすることで自分の人生を振り返るきっかけをもらっている、というか。いただいたテーマを通して自分の人生を見ると、いままで通り過ぎていた大事なことを思い出させてくれるんです。すごくありがたいことだなと思っています。
上村 普通だったら通り過ぎてしまうことを、ふくらませたり、掘り下げていくということは、僕も役(キャラクター)に向かいあうときにやっています。僕もPONさんと同じように、役から学ぶことや気づかされることがたくさんあります。特に中島敦の生きざまはかなり複雑なので、いつも苦労しながら僕もやっています。彼は悲観しても絶望しても、あきらめないんですよね。そこに勇気をもらいますし、自分に置き換えたときに「敦だったらあきらめないよな」と思いますし、敦は僕自身を引っ張ってくれる存在だなと思います。

TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第3シーズンEDより
TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第3シーズンEDより(C)朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA/2019文豪ストレイドッグス製作委員会

――第3シーズンでは「Lily」がEDに流れます。さわやかなメロディが第3シーズンのドラマを鮮やかに色づかせていましたが、改めてこの曲の思い出をお聞かせください。
PON 「Lily」も大変でしたね(笑)。この曲でヒントをもらった部分は中原中也の過去の話です。昔の仲間と決別して、すごくまっさらな気持ちで歩き出そうとしていく。そのまっさらな気持ちを、「無垢」という花言葉をもつ百合をモチーフにして、自分たちも立ち向かっていくという思いを込めて歌にしたんです。ラックライフの歌には「泣いてもいいよ」とか「無理をすんなよ」といった内容が多いんですけど、この「Lily」は「やらなあかんときは頑張ろうぜ」という気持ちを歌っています。
上村 特に印象的だったのは第31話其の二「父の肖像」です。育ての親の院長先生との別れを迎えて、敦はショックを受けるんです。院長先生の愛情はいびつで、憎しみではなくて愛情の裏返しだったのかもしれない。それに気づいた敦は、喜びなのか悲しみなのかわからない顔で十数秒泣くんですよね。そのときに、この曲が流れてくる。この曲に敦は救われたんじゃないかと。
PON よかった~。

【取材・文:志田英邦】

■TVアニメ「文豪ストレイドッグス」
放送:TOKYO MX…毎週水曜 23:00~
   テレビ愛知…毎週水曜 25:30~
   KBS京都…毎週水曜 25:00~
   サンテレビ…毎週水曜 25:00~
   BS11…毎週木曜 23:00~
   WOWOW…毎週水曜 24:30~
配信:dアニメストア…毎週水曜 23:00
   ※その他の各配信サイトでも順次配信
   ☆毎週最新話の見逃し配信実施中!

スタッフ:原作…朝霧カフカ/漫画…春河35(「ヤングエース」連載)/監督…五十嵐卓哉/シリーズ構成・脚本…榎戸洋司/キャラクターデザイン・総作画監督…新井伸浩/プロップデザイン…片貝文洋/美術監督…近藤由美子/色彩設計…後藤ゆかり/撮影監督…神林剛/3DCG監督…安東容太、小栗裕樹/編集…西山茂/音楽…岩崎琢/音楽制作…ランティス/音響監督…若林和弘/音響効果…倉橋静男(サウンドボックス)、西佐知子(サウンドボックス)/音響制作…グロービジョン/アニメーション制作…ボンズ/製作…文豪ストレイドッグス製作委員会

キャスト:中島敦…上村祐翔/太宰治…宮野真守/国木田独歩…細谷佳正/江戸川乱歩…神谷浩史/谷崎潤一郎…豊永利行/宮沢賢治…花倉桔道/与謝野晶子…嶋村侑/泉鏡花…諸星すみれ/福沢諭吉…小山力也/フョードル・D…石田彰/ニコライ・G…子安武人/シグマ…千葉翔也/小栗虫太郎…草尾毅/条野採菊…梶裕貴/末広鉄腸…阿座上洋平/大倉燁子…小市眞琴/福地桜痴…大塚明夫

リンク:TVアニメ「文豪ストレイドッグス」公式サイト
    公式Twitter・@bungosd_anime

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