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女子高生たちが筋トレにチャレンジするコメディーマンガ「ダンベル何キロ持てる?」がアニメ化! これを記念して、WebNewtypeでは主人公・紗倉ひびきを演じるファイルーズあいさんが、キャストやスタッフにインタビューする連続インタビューを実施。最終回となる今回は、最終話の作業を終えたばかりの山﨑みつえ監督にインタビュー。後編ではファイルーズさん抜擢の経緯や気になる続編について、“同じ男に惚れた”2人にフランクに語ってもらいました。
ファイルーズ 私みたいな何のキャリアもないド新人を起用するなんて、プレッシャーはなかったですか?
山﨑 実力で選ばせてもらったから、プレッシャーはなかったかな。ファイちゃんが筋トレしていることは知っていたけど、それは考慮せず元気でパワーのある声がよかったんだよ。全部で180人くらいオーディションしたけど、ファイちゃんは最後だったでしょ。「結構疲れたねー」となっていたところに、いつもの「(声を張って)ファイルーズあいです!」って挨拶を聞いて。棒声の。
ファイルーズ 棒じゃないですよ! 元気のいい棒です。上手い棒です。
山﨑 なんだそれ(笑)。それを聞いて「すごくキャラが立ってるな」とは思っていたけど、ジーナの「блядь(ブリャーチ)」の声でこっちのブースに一陣の風が吹いたというか。それで「ひびきの声もできますか? 少しセリフを読む時間を取りますか?」と聞いたらすぐに「できます!」と言ってくれて。あの反応のよさ、肝の座り方もよかった。
ファイルーズ 養成所で「声優業界は元気よく『はい!』と挨拶するもの」と習っていて、どこでも誰よりも元気でいようとはしています。あと「ジーナよりひびきのほうが合うんじゃないか」と自分では思っていたので、朱美や彩也香、ジーナも練習していたんですけど、ひびきも重点的に練習していたので。それが活きてよかったです。
山﨑 周囲のプロデューサーからも「ファイちゃんいいよね」という声があがっていたし。オーディションで街雄役が石川界人さんに決まったから、たまたまプロフィット所属の声優さんが多くなったけど、何も大人の事情もなく(笑)実力で勝ち取った主役だよ。
ファイルーズ でもやっぱり「ダンベル」が始まる前って「ファイルーズあいって誰だよ」という声ばかりで、監督も大博打だったと思うんですよ。
山﨑 私も音響監督は初だったから一緒に頑張りたいという気持ちの方が強かったかな。むしろファイちゃんでよかったよ。そうじゃないと、ガチなトレーニング実写動画があんなに作られてなかっただろうし。
ファイルーズ その点は自負しています! 憧れのトレーニーであるなかやまきんに君と一緒にトレーニングできて、すごく嬉しかったです(笑)。
山﨑 筋トレでわからないことがあっても、石川くんとファイちゃんがある程度決めてくれたしね。
ファイルーズ アクセントとかですよね。フィジーク↑なのかフィジーク↓なのか。
山﨑 トレーニー↑、トレーニー↓とか。あとファイちゃんが原作に一番詳しかったのも助かった。毎回、収録前に集まって台本の修正点とかをチェックするけど、その最後に必ず「じゃあファイちゃん今日は?」とお伺いして。
ファイルーズ 原作の考察などを話しさせてもらいましたけど、いや~、新人で現場をよく知らないから言えていたんですよ。本当に最初の現場が「ダンベル」でよかった。でも収録を通じて少しは成長したでしょうか?
山﨑 成長か~、ファイちゃんは最初から仕上がっていたからね。1話のときは「さすがに何回かやり直すかな」と覚悟してスタジオに向かったけど、結局やり直さなかった。
ファイルーズ 1話だけテスト→ラステス(本番直前のラストのテスト)→本番でしたけど、2話以降はテスト→本番でしたよね。
山﨑 最初のテストからよかったから。自分では成長を感じる?
ファイルーズ 冬から春にかけて三角筋は少し……でも業界用語みたいなものやブースでの作法は少しわかるようになりました。
山﨑 それも私が教えたわけでもなく、コミュ力の高いファイちゃんがブース内で石上(静香)さんとか雨宮(天)さんに聞いて完結してくれてたからね。
ファイルーズ そんなことないですよ。日記とか見返すと教わったことは多いです。
山﨑 あとファイちゃんは賢いよね。ディレクションしてもこちらの意図を汲み取れない人って結構いるんだよ。単語の意味がわからない子とか、悩みこんじゃう子とかもいるし。ファイちゃんは最初から「これですね」と違う引出しで返してくるのがすごかった。たぶんそれまで触れてきたコンテンツとか、読んできた本とかが引き出しの多さにつながってるんだろうけど。
ファイルーズ 無駄に年食ってきたわけじゃないんですかね。自分ではこれまで触れてきたものやしてきたことが芝居に活きているとは思ったことなかったけど、無駄じゃなかったならよかったです。
山﨑 しかもめげない。それがありがたかった。
ファイルーズ それも監督の優しいディレクションのおかげですよ。なんかフィーリングが合いますし。
山﨑 本当? 嬉しい!
ファイルーズ ダビング帰りに「茶でもしばかね?」と誘っていただいて、「ダンベル」関係なくいろんなお話をさせてもらったり……。
山﨑 大体「アカギ」の話。
ファイルーズ 同じ男に惚れた女同士で(笑)。ではそろそろ締めに入りますが、Blu-rayやDVDの3巻、4巻に付く映像特典「シルバーマンジム鬼トレ講座」は仕上がってきてますか?
山﨑 うん。観ながら実際に筋トレするための映像なんだけど、まず(原作編集の)小林翔さんに実演してもらって。そのタイミングに合わせて石川さんがカウントして、それに合わせてアニメを作ってる。ただ実際にやってみるとマジできついよね。
ファイルーズ 私、プッシュアップジャンプができないですよ。
山﨑 小林さん、よくできるよね。でもファンの皆さんにはぜひ一緒にトレーニングしてほしいです。
ファイルーズ では最後の質問です。原作ストック的にはすぐにでも続編が作れそうですが、もし続編があるならやりたいことはありますか?
山﨑 ひびきのお兄ちゃんと坂口めいちゃんを出したいですね。特にめいちゃんは絶対にかわいくなると思う。アニメになると面白くなりそうな話もあるから、もっとやりたいです。
ファイルーズ 今回のアニメだと、ひびきの街雄さんへの恋みたいな話はしませんでしたよね。
山﨑 筋トレを通じて成長するところを軸にしたからね。あと「みんなでやると筋トレって楽しいよね」という話で収めたかったから、恋愛要素は入りきらなかった。
ファイルーズ 最終回で「筋トレでできた友情」みたいなところにフォーカスして終わって素晴らしかったです。
山﨑 でも続編があったら恋愛関係に進まざるをえないのかな。また筋トレだけにするかもしれないけど。
ファイルーズ またひびきを演じられるのを楽しみにしてます!
――ありがとうございました。今回で連載が最終回ですが、ファイルーズさんは振り返ってみていかがですか?
ファイルーズ 私、収録時は自分のことで手一杯で、空気を読んだりほかの人に気が回らなくて「ご迷惑をおかけしちゃってるな」と思っていたんです。でも連載を通じてみなさんとゆっくりお話して「こんなにも私のことを認めてくれたんだ」と知れて安心したし、私もみなさんに好きな気持ちや尊敬している気持ちを伝えられて……まさに筋トレで絆が深まって嬉しかったです。
山崎 ファイちゃん、よくこれだけ喋れるよね。本当にしっかりしてる。
ファイルーズ 社会人やっててよかった!
――ちなみに最初の対談が雨宮さんとのものですが、そこで「アニメの放送が始まる頃には鍛えたお腹を見せ合いっ子しよう」と仰っていました。今の仕上がりはいかがでしょう?
ファイルーズ ゴホッゴホッ(誤魔化すような咳払い)。
山﨑 そんなこと言ってたの?
ファイルーズ なかったことにできないですかね?
――では11月30日に開催されるイベントくらいまでには……?
ファイルーズ さすがにそれまでには絞ります!
山﨑 雨宮さんもパーソナルトレーニング始めたんだよね。ファイちゃん、今はお腹見せられない?
ファイルーズ もうブヨブヨ。このままでは駄目ですね。筋肉関係のお仕事がなくなっちゃう。
山﨑 筋肉声優としての自覚があるんだ。
ファイルーズ 「『ダンベル』のアニメのために筋トレしてたんじゃないか」とか「『ダンベル』が終わった途端にこれかよ」みたいなこと言われるのやだー(笑)。「お願いマッスル」を歌った声優としては本当に駄目ですけど、1週間くらいジムに行けてないんですよ。
山﨑 忙しかったの?
ファイルーズ いや、時間はあったんですよ。でも仕事が終わって家に帰るとアイスを食べたくなるじゃないですか。特に夏の夕方なんて。それでテレビ観ながら食べたら「アイスを3個も食べたらジム行っても意味ないよな」「今日はどうやってもデブな日だ」とか思っちゃって。
山﨑 よく食べるね~。
ファイルーズ 基本的にアイスは3個です。でもちゃんとやってるときはやってるんですよ、食事もブロッコリーと胸肉みたいな。
山﨑 ファイちゃんが幸せならそれが一番だよ。
ファイルーズ いやいや、これからはそんな誘惑に負けず、筋トレも頑張りたいと思いマッスル!
【取材・文:はるのおと】