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動物たちが世知辛い世間のサラリーマンとして大奮闘…と思いきや、暴言と奇行で日本人的社会を突破する!? 10月からスタートし話題沸騰のTVアニメ『アフリカのサラリーマン』の見どころを連載でお届け。第3弾は、オオハシ役の下野紘さんにインタビューしました。
――原作漫画でも様々な反響を呼んだ『アフサラ』が、ほぼそのままの内容で映像に。初めて仕上がりを見られたときの印象はどうでしたか?
下野:いや、やばいなと思いました(笑)。社会問題なんかも出てきますから、収録のときには「あ、いいんだ」とも思ったし、「どうするんだろうな」とも思っていたんです。でも「ソープランド」を「泡風呂」に変えるべきかどうか…と制作側が詰めていたときに、コンプライアンスを考えすぎじゃない?という想いがすごくあって。
――アニメ側が、ですか?
下野:そうですね。たとえば、社会問題をアニメで描いたときに出てくる反対意見って、あくまで少数派だと思うんです。ですが社会的に「それはやめましょう」となることが多い気がしていて。どうしてダメなのかを想像したり理解しようとすることも大事だと思うので、アニメでこういうことをやっちゃいけないよと教えてあげればいいし、こういうやつが周りにいたら怒っていいよって。アニメーションなんだから!って思います。
――『アフサラ』を通してそんなことを考えていらっしゃったとは。
下野:そんなことを話したくなる世の中なのかなと。何が悪くて悪くないのか、みんな見誤っているような気がしていて。いろんな想像をできるのがアニメーションの良さでもあるから、そこで自由を奪われたら面白くなくなると思っていて。そういう意味では“必要悪”ではないですけど、『アフサラ』みたいな作品があってもいいんじゃないかと思います。
――オオハシは問題発言の多いキャラクターですが、それでもやはり人気者だと思います。
下野:過激なことを言う奴だなとは思っていましたけど…。僕が心配なのは、女性がらみの話。何股してるとか、明らかに女性を軽視した発言をしているので。女性から怒られないかなあと気になってます…。
――下野さんが演じるオオハシは大胆な発言もサラリと聴こえるところがあるような気がしますが。人間ではなく鳥だから許せる部分もあるのかなあと。
下野:鳥だから生々しさが軽減されているのは、たしかにありますね。
――オオハシに悪気はないんでしょうか。
下野:悪気はないはずです! 基本的にオオハシは瞬間で感じたことをそのまま生きている気がするので。でなかったら、こんなことにならないと思うんですよ。とはいえ、全力で楽しませてもらってます。やっぱり、演じる以上はどんな役も楽しみたいと思います。
――大塚明夫さんや津田健次郎さんとお芝居されていかがでしたか? 大塚さんの演じるライオン先輩は穏やかな印象が強いですが。
下野:お2人ともこの業界で長くやっていらっしゃる方ですから、自分たちで完成させたキャラクターを信じて演じていらっしゃいましたね。大塚さんには、もともと穏やかなイメージがあるんです。もちろん、初めてお会いしたときは大先輩ですから緊張することもありましたけど、いろいろお話させていただいていると、基本的にはいつもニコニコされている方なので。
――ライオン先輩の穏やかさそのものですね。トカゲは3人の中ではクールという立ち位置で。
下野:1つ言えるのは、全然クールではないです(笑)。クールそうに見えてクールではない。突然とぼけたことを言い出したりするし、オオハシのことを否定するようで時々同調するんですよ。そう考えると、クールというより柔軟性がある人。最終的には痛い目にあうことがほとんどですけど。
――いろんな場面で血を流していますね。
下野:アフレコで絵コンテを見ていたらエグいものもあって、放送ではどうなるんだろうと思いますけど。もしかしたら、オオハシよりも痛い目にあっているんじゃないかなあ。オオハシは精神的に痛い目にあうけど、トカゲは肉体的に痛い目にあっているというか。
――トカゲはいつもオオハシに振り回されて大変な想いをしているかと思いきや…。
下野:そうでもないです。第1話でオオハシにバックブリーカーをキメてますからね(笑)。そういう意味では、それぞれのキャラクターが、なんだかんだいいながらこの会社を楽しんでいる雰囲気はあるかもしれませんね。
――2Dと3Dを同時に採用した映像など、いろんな意味でチャレンジしている作品だと感じます。
下野:そうですね。過激な表現はあるけど、楽しめる要素はたくさんあると思います。むしろこれでクレームが出たらそれはそれで、作品として過激なことをしたんだという指針になりますし。僕はもう怒られてもいいんじゃねえかって気持ちでやらせてもらってます。もちろんやりすぎて反省することはあると思いますけど、オオハシはアニメの中で痛い目にあってますから。それがなければモヤっとするし、オオハシは本当に嫌われてるかもしれない。
――しっぺ返しを受けるところまでがオオハシの役割だと。今後の展開で注目されていることは?
下野:いろいろ話しましたけど、普通に観て、純粋に楽しんでもらえたらと思います。動物がスーツを着て会社でてんやわんやしているのが楽しいアニメですから。「これ、あの作品のあのシーンじゃね?」っていうパロディも散りばめられているらしいので、楽しんでもらえたらと思います。
――この作品に限らず、観て楽しむのがアニメの立ち位置なのかなと考えさせられました。
下野:そうだと思います。それが笑いなのか感動なのか怒りなのか、楽しみ方はそれぞれだと思いますが、アニメーションってやっぱり娯楽ですからね。
――オープニング曲『Soul Flag』については「サビを早く一緒に踊りたい」という声も挙がっていますが、振付けのコツを教えてもらえませんか?
下野:そんなに難しいことはやっていませんから、フレーフレーのところで一緒に手をふれたらいいなあと。最初は旗を振るくらいで踊る予定はなかったんですけど、「下野さん、やりましょう」といわれまして。単純に、楽しい曲が仕上がって歌詞のなかに僕自身が感じている想いを込められたらそれがいいんじゃないかと思って、旗を振るなら手を振るのも変わらないかなと。みんなで歌いながら振ったら楽しいと思います。
――ロックな曲ですし、ライブではノリノリになりそうですね。
下野:そうですね。この曲はみんなで歌いたいなという気持ちがあります。1コーラス目と2コーラス目のサビと、ラストサビで、大きくは変わりませんが人数が違うように聴こえると思うんですよ。ここは、僕がハモっているところのハモリの音量を変えてもらいました。
――下野さんご自身のこだわりなんですね。『アフサラ』は動物がたくさん出てくる作品ですが、普段ふれあう機会はありますか?
下野:いろんな動物にふれあってますね〜。それこそ5月にあったアーティスト活動のパンフレット撮影では、鷹を乗せました。重かったです。ちなみに同じカフェに大鷲もいて、それは鷹の倍くらいの大きさなんですよ。さすがにトレーニングをしている人じゃないと乗せられないみたいでした…。
――オオハシ役としては“鳥”つながりですね。
下野:爬虫類カフェにも行ったことがあって、トカゲって可愛いなって思いました。それまで爬虫類とか両生類がそんなに得意ではなくて、カエルも小さいのはいいけどヒキガエルはちょっと…と思っていて。でもトカゲは、意外と大きくても可愛いぞと。肩とか腕に乗せて頭をなでると、眠そうな顔をするんですよ(笑)。気温の調節がむずかしいから、飼育には二の足を踏んでますけど。まあ、『アフサラ』のトカゲは間違いなくかっこいいです。津田さんと同じくイケメンですからね!
【取材・文:吉田有希】