新作&おすすめアニメのすべてがわかる!
「月刊ニュータイプ」公式サイト
異世界に転生したと思ったら、なんと最弱の“蜘蛛”になってしまった「私」。凶悪な魔物が潜むダンジョンで、「私」はいかに生き抜くのか――!?
2021年1月より放送がスタートするTVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」。放送直前スペシャルとして、メインキャスト陣にインタビューを実施しました。第1回は、本作の主人公である「私(蜘蛛子)」役の悠木碧さんに、本作の魅力や役作りの裏話などをたっぷり語っていただきます!
――まさかの“蜘蛛”に転生してしまいましたね。
悠木 そうなんです! でも以前、演じさせていただいた「スパイダーマン:スパイダーバース」のグウェンも白とピンクの蜘蛛だったので、意外と蜘蛛にご縁があるのかもしれません。決して虫が得意なわけではないのですが、蜘蛛子やグウェンのようなデザインだとかわいく見えるんだなと、だんだん蜘蛛が好きになってきました。
――本作の第一印象は覚えていますか。
悠木 とにかくワード数が多いな、と(笑)。最初はオーディションの原稿だったのですが、一つの文章がとても長くて驚いた記憶があります。あと面白かったのは、いわゆる「異世界転生作品」の中でも設定が特に過酷なところ。最初からハイランクの力を持っていたり、すぐに特殊な力を手に入れたりする作品が多い中、最底辺の魔物に転生し、能力値もなかなか伸びず、環境も最悪なところからスタートするのが新鮮でした。
――蜘蛛子はギリギリの戦いを続けていきますからね。
悠木 そのぶん、蜘蛛としていかに生きていくかに特化した内容が面白いです。「異世界転生作品」って元の世界の知識が機転になる展開が多い印象ですが、「蜘蛛ですが、なにか?」は蜘蛛として学び、蜘蛛として成長していくことのほうが多いので。
――蜘蛛子のキャラクターは掴みやすかったですか。
悠木 はい、とにかくポジティブな子で立ち直りが早いことはすぐにわかりましたし、アフレコがスタートするときに監督からも「その2つを押さえておけば大丈夫です」とのお話をいただいたので、どういう性格かは掴みやすかったです。
――前向きであることに尽きる、と。
悠木 そこに繋がる話でもあるのですが、とにかく食べるのが好きでおいしいものを食べることが一つの希望になっていきます。まわりが敵だらけで自分が今どこにいるのかもわからない状況だったら、普通はすぐに諦めてしまうと思うんです。でも、絶対に諦めずに戦うどころか、生きる希望を見いだしていける。それが素敵だなと思います。
――原作を拝見すると、ゲテモノを食べるシーンもけっこうありますよね。
悠木 おかげさまで、吐き方の種類が増えました(笑)。こんなに吐くアドリブを入れる作品もなかなかないなと思いながら、いろいろなバリエーションに挑戦しています。でも、お話が進んでいくとおいしい魔物も出てくるんです。気づいたら私も魔物なのにおいしそうと普通に感じるようになっていて、蜘蛛子と一緒にメンタルが強くなってきています。
――本作は小さな蜘蛛である蜘蛛子が、自分より大きい魔物、複数の魔物にどう立ち向かっていくかも見どころの一つです。
悠木 本当に頭のいい子なんでしょうね。どこか達観したところがあって、それが蜘蛛としての機転を生み、戦闘中の粘り強さに繋がっている。スピード感たっぷりに動きながら、高速で思考する姿がかっこいいなと思います。
――そのぶん、モノローグも多そうなイメージですが……。
悠木 ワード数が多くて大変です!
――最初に感じた懸念がそのままアフレコでも?
悠木 限られた尺の中に大量のワードを詰め込むという物理的な大変さがあります。一つの文章の中にいろいろな表情を込めながら早口で喋るのはけっこう得意なほうだと思っていたのですが、その自信が揺らぎそうになることが多くて……。でも、そのぶんうまくハマったときが楽しいです。私はよくアフレコを“音ゲー”(リズムゲーム)にたとえるのですが、難易度の高いアフレコがうまくいくと「パーフェクト! パーフェクト! パーフェクト!」ってコンボが繋がるような感覚になるんです。途中に「グレイト」や「グッド」が入ると、「もう1回!」って悔しくなるところも一緒(笑)。特に「蜘蛛ですが、なにか?」はフルコンボできたときの達成感が大きいです。
――かなり過酷なアフレコなんですね。
悠木 どうしても意気込んでしまうからか、酸欠気味になって「すみません、少し休ませてください」みたいな瞬間があります。アフレコ中にそこまで息が上がるなんてめったにないのですが、「蜘蛛ですが、なにか?」に関しては1話に1回はその瞬間がきます。過酷ですが、やりがいのある現場です。
――役作りについてはいかがですか?
悠木 彼女が何を考えて、どんな気持ちでいるのかはセリフにすべて乗っているので、私が一生懸命、理解を深めようとしたり、変に味付けをしたりしなくても「どういうキャラクターなのか」「何を考えているのか」がしっかり伝わるようになっているんです。これは原作や脚本の力でもあると思います。蜘蛛子は自分のことを説明するのがすごく上手ですし、理解を深めるのに台本があればいいという親切な内容なので、その意味では役作りも難しく考える必要はないなと感じています。
――監督や音響監督からは何かディレクションはありましたか?
悠木 バトルシーンはかっこよくしたいとおっしゃっていたのが印象的でした。「どっひゃー!」のようなコミカルなリアクションもありつつ、クールでシリアスなところもしっかり入れてほしいと。特に作戦を練っているところや決死の攻防を繰り広げているところは、私もこんなにかっこいいんだと思いました。……とはいえ、8割方はギャグです!
――アフレコは順調に進んでいるそうですね。
悠木 はい。監督が求められているリアクションやそのタイミングもわかってきて、すごく波長が合ってきたなと感じています。コメディ作品なので、どういう波を作っていき、どこにどうオチをつけるかが重要になりますし、人によって感じ方が違うので、そのすり合わせが必要になるのですが、今は「監督はこういうのを求めているのかな」とこちらからもご提案できるようになって、次は何をやってやろうかと考えるのが楽しいです。
――ところで、本作は勇者サイドのストーリーも同時に進行していきますが、そちらについてはどうご覧になっていますか?
悠木 実は、勇者サイドについては今のところノータッチなんです。もちろん台本で読んでいるので内容は把握しています。ただ、ストーリー上は別々に進行していきますし、こういうご時世なこともあって、アフレコは完全に別収録なんです。今は誰がどんなお芝居をしているかも全然わからない状態なので、これからどんな形で接点を持つようになるのか、私自身も楽しみにしています。
――そして、EDテーマ「蜘蛛子さんのテーマ」は蜘蛛子として悠木さんが歌われています。こちらはどんな曲なのでしょうか?
悠木 最速BPMが400という、とてつもないテンポの曲です! BPM400に合わせた歌詞をちゃんと歌いきりましたので、その頑張りを聴いていただけたら嬉しいです。人間の限界ってまだまだ引き延ばせるんだなと、自分自身びっくりしています。歌詞は本編を象徴した内容なので、こちらを聴いていただければ蜘蛛子のいろいろな表情が想像できると思います。
――そんなにトリッキーな曲なんですね。
悠木 今まで見たことも聴いたこともないようなテンションです。でも、「こんなに難しい曲が歌えるようになったんだ」と、自信に繋がりました。もちろん、いろいろな方の力をお借りしつつですが。そういう意味では、アニメ本編もEDテーマも見たことないものを見ている感覚です。
――では最後に、放送を楽しみにしているファンの方へ一言お願いします。
悠木 魔物がたくさん出てくるダークな世界観の中、蜘蛛子が必死に生き抜こうとする過酷な作品ではあるのですが、その一方で楽しくギャグをやっている蜘蛛子の姿も見られるという、ほかにはあまりない作品です。本人はいたって真面目なのに、どこかコミカルに見えるとても楽しい作品なので、ぜひ肩の力を抜いてご覧になってください。蜘蛛子サイドと勇者サイドでまたテイストが違いますし、きっと考察を楽しみたい方にも満足いただけると思います。そして、ちょっとでもいいので、蜘蛛子のお芝居には膨大な酸素が使われていることを思い出していただけたら嬉しいです(笑)。
【取材・文:岩倉大輔】